【アンケート調査・2024年最新】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと

通信制高校

2024/03/27

学校数、生徒数ともに年々増え続けている通信制高校。
文部科学省の「学校基本調査」よると、学校数は、令和元年度では独立校113・併設校140のところ、令和5年度には独立校131・併設校158に。生徒数は、令和元年度では19万7696人のところ、令和5年度には26万4974人と約7万人も増加しています。

通信制高校という選択肢が身近になってきたものの、通信制高校の中でも多様化が進んでいるため、どんなシステムや授業が用意されているのか、どんな生徒が多いのか、学校の雰囲気はどうかなど、さまざまな疑問や不安があるかと思います。

今回は、通信制高校を選択肢に入れる際、どんなことを不安や疑問に感じているのか、あるいはどんな期待をしているか、通信制高校ナビをご利用くださっている方609名を対象にアンケートを実施しました。

その結果、高校選びではどんなことに着目されているのか、いくつかポイントが浮かび上がってきました。

【アンケート調査・2023年】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと
【アンケート調査・2022年】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと

調査サマリー

  • 通信制高校の不安要素は、親は将来に向けて足がかりがつくれるか、本人は在学中の環境
  • 入学者本人の通信制高校への期待は、自由に時間を使いつつ高卒資格をとれること
  • 不安や疑問点では、費用面を挙げる人も多い

回答者の属性について

アンケートの回答者は、通信制高校を検討している親・保護者が70.0%、入学者本人が30.0%。

人数はそれぞれ以下の通りです。

  • 親・保護者:429名
  • 入学者本人:180名
  • 合計:609名

親はその先の将来を、入学者は在学中の環境を不安視

▼保護者・本人別 通信制高校への不安ポイント

Q1は「通信制高校について不安な点があれば教えて下さい(複数選択可)」と、全日制とは違ってイメージしづらい部分、入学前に知っておきたい部分を聞いてみました。

親・保護者の回答として多かったのは、「将来の目標ややりたいことを見つけられるか」(12.4%)や「学校に馴染めるか」(11.1%)、「全日制高校と同じ高校卒業資格が取れるか」(10.5%)、また「その先の進学に影響がないか」(9.9%)となっており、本人と比較すると、高校で実際に何を得られるのか、高校卒業以降にどうなるのかを見据えた内容が選ばれていました。

この中で、高卒資格がとれるか、その先の進学に影響がないかといった内容については、まだ通信制高校の仕組み自体が広く理解されていないことを表しているのかもしれません。

一方、入学者本人の回答では、「学校に馴染めるか」(12.2%)が最も多く、次いで「その先の進学に影響がないか」(10.6%)、「全日制高校と同じ高校卒業資格が取れるか」(10.2%)、「友達ができるか」(10.1%)が選ばれています。

加えて、どんな先生や生徒がいるのかも、親・保護者より多く選択されており、入学者本人の不安としてはどれだけ充実した高校生活が送れるか、周囲と馴染んで安心して日々通うことができるかに重きが置かれているようです。

「その他」の回答としては、学費がどれくらいなのか不安に思う声が、親・保護者で3名、本人で6名となっており、「家族の負担にならないか」と心配する入学者もいることがうかがえます。これについては、入学金やかかる費用などを、よりわかりやすく資料にまとめたり、支援金についても丁寧に案内するなどの工夫が求められていくでしょう。

また、親・保護者では「本人がやり遂げられるか」を心配する人が6名、「発達障害があっても大丈夫か」と心配する人が5名となっており、本人の状況やそれをサポートしてくれる環境かどうかを不安視する傾向も見られました。

期待する点は親子で大きなギャップが。人間関係への期待は親のほうが大

▼保護者・本人別 通信制高校への期待ポイント

Q2では「通信制高校に期待すること(複数選択)」を聞いてみました。

こちらでも、親・保護者は「高校卒業資格を確実に取得できる」(19.4%)、「目標に向けた勉強ややりたいことができる」(13.5%)と、高校生活の中で将来への足がかりをつくってほしいと期待を寄せていることがうかがえるのに対して、入学者本人で一番多かったのが「自由な時間を作る」(17.1%)。これは親・保護者では4.8%とさほど高い割合になっていないのですが、本人としては通信制高校だからこそ得られるメリットに着目しているようです。

ちなみに、「自由な時間を作る」ことに対する期待は、昨年も一昨年も、親・保護者と入学者本人との間に10%以上の差が見られており、通信制高校に対して感じる魅力について、親子で最もギャップが現れる点となっています。

他にも、親・保護者は「社会に出る前に人間関係を学べる」(9.4%)ことや「仲のよい友達ができる」こと(9.7%)など、人間関係の面でも期待があるのに対して、本人はそれぞれ4.7%、6.2%とさほど高くないのも印象的です。

全日制の学校等と比べて通信制高校に感じるメリットは、本人としては「高校卒業資格を確実に取得できる」(16.3%)のに加えて自由な時間が作れることと感じているようで、学校生活とは別にやりたいことがある生徒が多いのかもしれません。

また、過去のアンケート調査と比べて、少しずつ入学者本人の回答率が上がってきているのが、「勉強の遅れを取り戻せる」です。2022年は10.3%、2023年は10.8%と続き、2024年は11.8%となっていますが、中学などでの学習内容をしっかり復習しておきたいというニーズも高まっていることがうかがえます。

疑問点では回答者の2割が「費用」を不安視

最後は「通信制高校についての疑問点」について、回答がある場合に記入してもらいました。

この質問への回答者は55名でしたが、中でも多かったのは費用に関する疑問で、12名が記入していました。

これに関しては、授業料や入学金などトータルでかかる金額がいくらになるのかといった疑問に加えて、「高校の授業料無償化などの支援制度適用の対象になるかどうか」など、経済面での公的な支援が受けられるかどうかを気にしている声も。物価上昇が続く中で、経済面で不安を抱えている世帯が多い様子がうかがえます。

また、「他の学校からの単位を引き継げるのか」など、転入・編入に関する疑問も9名が記載しており、現在中学生の生徒だけでなく、高校生の転入・編入先としても興味を持たれていることがわかりました。こうしたことから、各通信制高校においては転入・編入のシステムについても、よりわかりやすい資料や説明があるとよさそうです。

親子でニーズの違いも。両者納得できる選択のために家族でしっかり情報共有を

今回の調査結果からは、通信制高校への進学や転入・編入を視野にいれている人の中でも、まだそのシステムが十分に理解されているとは言えないことや、親・保護者と入学者本人とでは不安に思うことや期待していることが異なる点も多いことがわかりました。

特に、Q1の「通信制高校について不安な点」で、両者ともに約10%の回答があった「全日制高校と同じ高校卒業資格が取れるか」など、通信制高校の基礎的な知識がまだ広まっていないことや、「その他」で見られた学費についての不安はしっかり解消できるよう、各通信制高校や当サイトをはじめとしたメディアでも、より積極的に情報発信していく必要がありそうです。

また、Q2の「通信制高校に期待すること」では、親・保護者側は高校生活を充実させることでその先に道が開けるようにと望む声が多い一方、入学者本人たちは学校以外の活動にもバランスよく打ち込みたいという期待がうかがえます。

どちらのニーズにも応えられるのが通信制高校のメリットではありますが、両者が納得して学校選びができるよう、ここも意識して情報発信をしていくことが不可欠でしょう。また選ぶ側も、家族でよくニーズを確認し合っていただければと思います。

通信制高校とひと言で言っても、スクーリング回数や授業の内容、学校生活のサポートのしかた、学校の雰囲気や進路など、今は多様な個性を持った学校があり、入学者にとって合っているかはじっくり比較検討することが必要です。

しかし、それぞれの個性を見て検討する前に、基礎的なシステムについての知識はまず欠かせないものです。 通信制高校への入学を検討している人は、まずは通信制高校の基礎情報を押さえてから、資料を取り寄せてみたり、説明会に参加したりして、合いそうな学校を選んでみてください。

◎参考リンク

「通信制高校ナビ利用者アンケート調査」概要

  • 調査対象:通信制高校ナビの利用者609名
         (親・保護者:429名、入学者本人:180名)
  • 調査期間:2023年12月1日〜2024年2月15日
  • 調査方法:通信制高校ナビ利用者対象アンケートフォーム

※アンケート結果、またグラフなどのデータはすべて「通信制高校ナビ」が権利を持ちます。転載をされる際は、必ず「出典:通信制高校ナビ」という表記と、当サイトへのリンクをお願いいたします。

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この記事を書いたのは

通信制高校ナビ編集部