【いじめでつらい君へ】 プロに聞くいじめから抜け出す方法

専門家インタビュー

いじめ問題

2019/09/03

学校でいじめを受けていて、夏休み明けの登校が怖い。でも、親や先生には言えない……。だって、親や先生に言って事が大きくなるのはイヤだし、心配をかけるもイヤ。それに、もしかしたら真剣に取り合ってくれないかもしれないし、大人に話したことで後から仕返しされるかもしれない。

だから、ひとりでガマンする……。

いじめを受けてつらい思いをしているあなた。どうかそのつらさを、ひとりで抱えないでください。

あなたは悪くないし、その状況から抜け出す手立てはきっとあります。

一般財団法人「いじめから子供を守ろう ネットワーク」では、12年間で8000件以上のいじめ相談を受け、多くの問題を解決してきました。

「いじめから子供を守ろう ネットワーク」 代表 井澤一明さん

今回は、その代表を務める代表・井澤一明さんに、もし、いじめから抜け出すためにあとひとふんばりできるようなら、何をすればいいのか聞いてみました。

いじめを打ち明けられない子は多い、でもあなたは悪くない!

── いじめ被害を人に打ち明けるのはとても勇気がいることです。でも、なぜ被害について人に言えないのでしょうか。

「いじめを受けた原因は自分にあるのではないかと考えてしまったり、いじめを受けることが恥ずかしいことだと感じていたりすることがあると思います。そして人に話すことで、いじめを受けている自分=ダメな自分と受け入れなくてはいけないという感覚から、言えないことが多いのです。

いじめられているうちに、自分はバカなんだとか、自分がおかしいんだという気持ちにさせられてしまい、自己否定的な考え方になってしまう子も多いです」

── いじめによって自信がなくなってしまって、そんな自分のダメな部分をハッキリ確かめてしまうのも怖い……。そんなふうに考えてしまう子が多いのですね。

「当然、いじめられている側が悪いわけではありません。

しかし、7割くらいの子は、親や先生に話せずに自分ひとりで抱え込んでしまっています。

ただ、誰にも話さずに自分だけで抱えていても、いじめを解決することはできません。

誰か大人が、いじめている側に〝あなたは加害者である〟ということを自覚させなければ、いじめを解決することはできないのです。

ですから、勇気を出して、まずは大人に話をしてほしいですね」

学校が何もしてくれなかったケースもあるけれど……

── でも、大人に話して本当に解決されるのか、不安ですよね。

「先生に相談をしても、それを隠そうとしたり、いじめはなかったとして何も対応してくれなかったり。そんな例は、確かにあります。

2015年には、茨城県取手市の中学3年生の女子がいじめを受けて自殺してしまいましたが、学校や教育委員会はなかなか自殺といじめの因果関係を認めてくれませんでした。

また2017年には宮城県仙台市で、いじめを受けていた中学2年生の男子が、複数の先生にいじめを何度も訴えていたのに解決されず、自殺してしまいました。

このとき学校は”加害生徒は悪いけれど、本人にも悪い点がある”と双方に話すだけだったそうです」

── こんなニュースを何度も目にすると、先生や学校側への不信感も強くなってしまいます。

「担任や学校の対応がダメな場合もまれにあります。でも、たいていの先生たちには、いじめを止める能力を持っているんです。その先生方の能力を使ってもらうように仕向けていけば、いじめは止まるんですよ。

悲しいニュースが流れる裏では、ニュースになるような事件にはならず、解決されたいじめ問題がたくさんあるのです」

いじめの相談、誰にどんなふうにすればいい?

── 確かに、解決した事例はニュースにはならないですね。では、学校にいじめへの対処をしてもらうためには、どうしたらいいのでしょうか。

「いじめでどんな被害にあったのかという内容を文書にして、親から学校に出してもらうのがいいでしょう。口で言うのではなく、文書にして示すというのは、大人の社会にとってはとても重みがあるものなのです。これをもらったら、学校側は動かざるを得ません。

担任の先生から校長先生に話が上がっていくときにも、文書ならそのまま正確に伝わっていきます。いじめという大きなことが起こっているという事実を学校が認識すれば、動いてくれるはずです」

── 文書で、というのがポイントなんですね。それでももしもうまくいかなかったら……。

「そんなときにも、まだ手はあります。

校長先生まで伝わってもダメなら、自治体の教育委員会に相談してください。教育委員会でもダメなら、地域の議員さんや警察に相談してください。

議員さんに話が上がれば、議会でそれを問題にして取り上げてくれます。議会での発言はすべて文書として記録されますから、そんなふうに記録が残ることを学校は何とか避けたいと考えます。警察も、ここ数年はいじめに対する世の中の意識が変わってきたこともあり、小さな事件でも加害者に話を聞きに行くことが増えてきています」

── 外部も巻き込んでいく動きが必要ですね。しかし、自分の親が解決のために動いてくれるか不安だという子はどうしたらよいでしょうか?

「私たちのような団体を頼ってくれてもいいですし、今は、自治体の教育委員会などがLINEでいじめ相談の窓口を開設していたりもします。親でなくても話しやすい大人を見つけて、まず相談することが大切です。

また、相談するときには、”学校に連絡してください”とお願いしましょう。学校は、外部からそういう指摘を受ければ動かざるを得ませんから」

学校から逃げるのも一つの手。可能なら、勉強だけは少しでもしておこう

── 解決の糸口は見えてきましたが、それでもなかなか話す勇気が出せないという子や、今は気持ちの整理がつかないという子はどうしたらいいでしょう?

「つらい子は、学校に行かなくてもいいし、こんな学校イヤだと思っていてもかまいません。でもいじめられた側が悪いということはない、ということは絶対に忘れないでほしいですね。」

── 自分を責めずに、心を休めることを優先することも大切ですね。

「あとは、できるだけ学力を下げないように、勉強はしておきましょう。

学力は、将来いじめのない世界を自分から選んでいく力につながっていきます。

大学生になれば、いじめというのはほとんど起こりません。社会に出たときには、働き方や職場を自分で選び、いじめのない場所に行くことができます。

今通っている学校は、自分自身で選んだ場所ではなかったり、非常に狭い選択肢の中で選んだ場所だったりするはずです。でも、その先には、自分でさまざまな場所を選び取っていける世界が待っています。そして、選択肢を広げるためには学力が力になってくれるはずですから」

(取材・文/大西桃子)

取材協力

一般社団法人いじめから子供を守ろうネットワーク

いじめを受けた子たちの保護者らが中心となり、2007年2月に発足。これまで12年間で8000件を超える相談を受け、その大半を解決してきた。各地でシンポジウムを開催し、さらに教員の研修会や児童生徒へのいじめ防止授業への講師派遣を通して、いじめ予防、いじめ防止に努める。「いじめ防止対策推進法」の制定においても大きく貢献。

公式サイト

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。