チャレンジスクールの受験対策(作文)はいつから始める?出題例やコツも!

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不登校

2019/08/26

高校には、全日制、定時制、通信制に加え、生徒それぞれの個性や事情、興味に合わせて学べるさまざまなタイプの学校があります。そのひとつが、東京都のチャレンジスクールです。

不登校や長期の病気欠席で勉強に遅れをとっているけれど、高校に進学したい。中学では学校の授業についていけなかったけれど、もう一度しっかり勉強をやり直したい。

そんな生徒を中心に受け入れるのが、チャレンジスクールです。

不登校を経験した生徒や、高校を中途退学した子などを受け入れる三部制(午前・午後・夜間)の総合学科高校で、現在は以下の学校がチャレンジスクールにあたります。

  • 大江戸高校(江東区)
  • 世田谷泉高校(世田谷区)
  • 桐ヶ丘高校(北区)
  • 稔ヶ丘高校(中野区)
  • 六本木高校(港区)
  • 八王子拓真高校(八王子市)※チャレンジ枠アリ

いずれも大学のように単位制となっており、必修科目と選択科目から自分で授業スケジュールを組み立て、3〜4年で決められた単位を取得することで卒業資格が得られます。

これらのチャレンジスクールの入学試験の特色は、学科試験がなく、内申点も関係なく、提出した志望出願書と、面接、作文によって審査されるところ。

不登校により内申点で不利になってしまう生徒や、学力が及ばず学科試験は難しいという生徒でも、高校でしっかり学びたい意欲があれば、挑戦することができるのです。

チャレンジスクールはどのくらい人気?

現在の倍率は、どの高校も1.5〜2倍ほどです。しかし最近は不登校や勉強が苦手な生徒だけでなく、総合学科や単位制といったチャレンジスクールの制度そのものに魅力を感じて受験する生徒も増え、年々倍率があがってきているのが現状です。

この倍率をくぐり抜けて合格するためには、志望出願書をしっかり練り込むこと、面接と作文の練習をやり込むことが欠かせません。

特に、作文に対しては「苦手……」という生徒が多いのですが、ではどのように対策を進めていったらいいのでしょうか。

作文で求められていることとは?

作文の練習といっても、何を書いたらいいかわからないのでは、練習のしようがありません。まずは、どのような内容が求められているのか、押さえておきましょう。

ポイントを教えてくれたのは、不登校や勉強嫌いな生徒を対象とした学習塾で、チャレンジスクール受験の指導も行っている新宿区の「学習支援塾ビーンズ」代表の塚﨑康弘さん。

「作文は学校ごとに出題傾向があるのですが、共通して言えるのは、偉人の言葉や社会現象・出来事について書かれた文章を読んだうえで、”自分はどんな未来に向けて、どのように高校生活を送りたいのか”を書かせるものが多いです。

どの高校も、志望申告書・面接・作文を通して、この学校に通い続けられるかということを見ていますから、高校生活を具体的かつ前向きにイメージできているかがポイントです」

とのこと。

どんな問題が出るの?

たとえば、平成31年度の稔ヶ丘高校の問題はこんな内容となっています。

 学校を卒業して、社会に出ると、毎日が本当にわからないことだらけです。どんなふうに仕事をすればよいのか、将来の人生設計をどうすればよいのか。悩みは尽きません。

筋道を考えてよく計画をし、行動しようとしても、作戦どおりにいかないことが、しょっちゅうです。そもそも作戦や戦略を立てて何かをすることが成功するのは、社会の仕組みやルールがよく整備されていて、その中身を完璧に理解できているときだけです。でも社会はそれほど完璧ではない。筋道を立てようとしても、立てようがないのです。

だとすれば、よくわからない社会を毎日生きる上で、もっとも大切なことはなにか。それは「わからない」ということで、簡単にあきらめないことです。逃げ出さないことです。「わからない」から不安だとか、つまらないと思わない。むしろ「わからない」からおもしろいと思えるかどうかです。
 (玄田有史「希望のつくり方」岩波書店より)

問題 囲みの文章を読み、あなたはどのように考えますか。またそのことをふまえて、稔ヶ丘高校でどのような高校生活を送りたいと考えますか。501字以上600字以内で具体的に述べなさい。

まず求められるのは、提示された文章を読解し、自分の意見をしっかりと考えて書くことです。そして、その意見と自分の高校生活のイメージを結びつけてさらに書き進めていきます。

「チャレンジスクールの作文の問題は難しく、読解力と作文力をつけるには時間を要します。また、自分がどのような目標を持っていて、どのように頑張ろうと考えているのかをしっかり伝えられるように、考えや気持ちをしっかり整理しておく必要があります」

と塚﨑さん。では、いつ頃から対策を始めればよいのでしょうか。

対策は夏には始められているとベスト!

読解力と作文力は、一朝一夕に身につけられるものではありませんから、対策は早ければ早いに越したことはありません。学習支援塾ビーンズでは、遅くとも中学3年生の8〜9月までには準備をスタートするように進めているそうです。

「学力テストがないからラクそうに見えても、チャレンジスクール受験の志願申告書・作文・面接のレベルは中学生にとっては難易度が高く、特に不登校や勉強に遅れをとっていて、マイナスな心理状況にある生徒にとっては特に過酷なものとなります」

高校進学に向けて前向きな気持ちをまだ持てていない、高校生活をどのように頑張るか具体的なイメージを持てていない生徒の場合は、まず練習を通してじっくりと自分の心と向き合う必要が出てきます。

テクニックで何とかなる問題ではないゆえに、対策には時間を要することになるのです。

「ただ、早く対策を始めれば、その練習を通して自分の考えを整理したり、自分の気持ちと向き合ったりすることができます。どうしたら過去や現在、未来を前向きにとらえられるだろうかと考えることで、心理的にもプラスの効果が生まれてきます

と塚﨑さんは言います。つまり、受験に向けて気持ちや考えを整えていくためにも、作文対策は早いに越したことはないということです。

練習の方法はこれだ!

では、作文はどのように練習していけばよいのでしょうか。

塚原さんは、以下の順番で行うことがお勧めだと言います。

  1. 志願申告書の作成
  2. 面接での質疑応答の台本作り
  3. 作文対策をする

「まず先に作文に書けるような内容をしっかりイメージしておく必要があるため、志願申告書と面接対策で考えを深めてから、作文にとりかかったほうが効率よく対策をすることができます」

「頑張った経験などない…」

チャレンジスクールは、前向きなイメージを表現することが大事だと先に述べましたが、「自分には頑張ったことは何もないし、将来についてもなかなか前向きなイメージが持てない……」という人は、どの対策もなかなか手につかないということもあるでしょう。

そんな人はどうしたらいいのでしょうか?

「大きな成功でなくても、前より少し頑張った、一歩前に進んだということは、誰にでもあるはずです。

家から出られなくなってしまったけれど、何かのきっかけで外に出られた、勉強をまったくしない時期があったけれど、誰かの助けを借りて少し頑張れるようになったというような、前と少し変わった部分を探して、”挫折→努力→成功”のストーリーを組み立ててみてください。それが作文のネタになります」

誰でもできるストーリーの組み立て方

さらに、練習方法としてこんなやり方も勧めてくれました。

「過去問を参照し、できるだけたくさん志願申告書や面接で問われるような質問を作成し、その質問に対する“結論”と、その結論になる“理由”、そして、“そのために自分がする(したい)行動”を、短く紙に書き出してください。これをネタ帳として作文、面接の練習にも使って行きます」

具体的な方法としては、ノートに「質問・結論・理由・行動」の4つの枠をつくり、書いていくことだそうです。たとえば、下記のようにします。

  • 質問:高校で一番頑張る行事
  • 結論:文化祭
  • 理由:絵が好きで、文化祭のポスターや看板作りをしたい
  • 行動:中学の音楽祭で看板を描いた。デッサンを週に一度習いに行っている。

「この解答をつなげてみると、自分だけの問答集ができあがります。上記のネタを使うなら、次のような文章が作れます」

私は入学後、文化祭などの学校行事を楽しみにしています。なぜなら、私は絵を描くことが大好きなので、ポスターや看板作りを通じて行事を盛り上げたいと思っているからです。中学校では美術部で音楽祭のための大きな看板を描いたのですが、とてもやりがいがありました。また、絵をきちんと学ぶため、最近デッサンのレッスンにも通っています。

確かにつながっていきますね。

このような練習を、各校の過去問を使って何回も練習していくことが必要だそうです。

チャレンジスクールを志望しているけれど、作文の練習はどうしても手をつけられないという生徒も、まずは自分の思考を整理しながら、ネタを書き出してみるところから始めてみましょう。

思考を整理する際は、子どもが口頭で話し保護者がそれを筆記するなど、協力することでよりスムーズに進むのではないでしょうか。

(取材・文/大西桃子)

取材協力

学習支援塾ビーンズ

不登校や勉強嫌いな生徒のための学習塾。心のケアから目的意識づくり、職業観育成、受験対策まで一手に引き受け、生徒の主体的な復学と進学を支援する「学び治しの授業」を指導する。

公式サイト

チャレンジスクール対策情報ページ

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この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。