#不登校は不幸じゃない 参加者の価値観が変わる現場レポート

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2019/08/22

夏休みも後半。子どもの自殺が増えるといわれている新学期直前のこの時期、2019年8月18日(日)にイベント「#不登校は不幸じゃない」が全国100ヶ所以上で同時開催されました。

このイベントは、ネガティブなものとして捉えられてしまいがちな不登校を、肯定する社会の空気を作っていこうという目的から始まったムーブメントです。

今回は、『学校は行かなくてもいい』(エッセンシャル出版社)などの著書で知られる、当イベント発起人の小幡和輝さんが東京の新宿・渋谷の2会場にサプライズゲストとして登場しました。

小幡和輝さん
NagomiShareFund&地方創生会議Founder/内閣府地域活性化伝道師。「#不登校は不幸じゃない」発起人。1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験した後、定時制高校に入学。地域のために活動する同世代、社会人に影響を受け、高校3年で起業。2017年、47都道府県すべてから参加者を集め、世界遺産の高野山で開催した「地方創生会議」がTwitterのトレンド1位を獲得。その後、クラウドファンディングと連携した1億円規模の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立し、地方創生の新しい仕組みを構築中。

「#不登校は不幸じゃない」とは?

引用元:小幡和輝オフィシャルブログ

「#不登校は不幸じゃない」は、かつて不登校を経験した人と、現在学校に居場所がなくて悩んでいる子ども、またその保護者をつなげる全国的なイベントです。

2018年に小幡和輝さんが発起人となり、TwitterやFacebook、YouTubeなどインターネット上から呼びかけを行い、各界の著名人が賛同のメッセージを発信したことで、メディアでも大きく取り上げられました。

ムーブメントに共感し、名乗りを上げた各地の主催者たちが同日にそれぞれの方法でイベント開催することが特徴で、2019年は会場数が全国100カ所以上と大規模なものになっています。

ゲームで遊ぶ子どもたちも 和気あいあいとした新宿会場

編集部が最初に訪れた新宿の会場は「整体ケアルラ」さん。店主で主催者のみやたけたつんどさんご自身も不登校の経験を持ち、このムーブメントに共感を示してイベントを主催することを決心したそう。

ゲーム好きが高じて構えたお店には、新旧ゲームや関連グッズがいっぱいで、会場はどこか秘密基地めいた雰囲気でした。

会場にもゲームの準備がされていて、親子での参加者が続々と訪れました。

小幡さんはYouTubeで全国の会場へメッセージをライブ配信した後、集まってきた子どもたちと一緒に、早速人気ゲームの「スマブラ」をプレイ。

小学校低学年から中学生までのメンバーはイベント1カ月前の座談会でゲームを通じて仲良くなっていて、SNSでもつながっているとのこと。つい最近知り合ったようには思えない盛り上がりようです。

「僕もそうでしたが、趣味を通じた学校外での友達や仲間とのつながりは、不登校ライフの上でとても大切です。こうした場が全国に広がっていけば」と小幡さん。

ゲームで盛り上がる子どもたちの横では保護者同士が交流をします。近い境遇の家族で互いの状況について相談をしたり、教育について語り合ったり。通信制高校などの進路についての情報交換も行っていました。

こちらの輪にも小幡さんが加わり、「勉強ダメ、運動もダメ。学校での評価軸では良いところがなかった。学校へ行くことを否定するわけではないけれど、学校教育の枠組み以外では良いところがいくらでも見つかるのでは」と当事者としての見解を話していました。

不登校の他にもさまざまな話が飛び出した渋谷会場

次に向かったのは、渋谷・明治通り沿いの会議室を使った会場。こちらは保護者が対象の会場となっており、主に発達グレーゾーンの子どもの不登校についてのセミナーや、保護者による体験談の発表が行われました。

企画運営はセミナーで講師も務めた、発達科学コミュニケーショントレーナーの清水畑亜希子さん。セミナー内容は「学校は行ってもヨシ!行かなくてもヨシ!」をテーマに「グレーゾーンの子の特性を知り、子どもがイキイキと過ごせる方法を発見」しようというもの。

清水畑さんはグレーゾーンのお子さんが中学生のときに、学校での評価が重視される中での重圧から不登校になって悩んだ経験を持つお母さん。しかし不登校になって自宅でのんびり過ごす子どもの姿を見たとき、心と身体が健やかな状態が一番大事だと気づいたといいます。

成績や進学先などの「常識」に親がこだわって子どもを追い詰めるよりも、子どもがイキイキとできる場所を発見できるようフォローしていくことで、親子ともに笑顔になっていこうと伝えていました。

保護者と小幡さんによる不登校Q&A

また渋谷会場の後方では、保護者のみなさんと小幡さんとで座談会が行われ、なごやかな談笑の中でさまざまな質問に対し、小幡さんが答えていました。

Q.不登校の子どもの親としてやってはいけない行動は?

A.不登校をめぐって両親がケンカをすることは良くないですね。話し合いは大事だと思いますが、教育方針が違うことでケンカが起こりがち。子どもたちの気持ちを聞くと、「学校へ行けない自分のせいでお父さんとお母さんがケンカする」、これが一番つらいというのです。

自分がつらいだけなら「死にたい」までにはならないけれど、自分が原因で周囲の人が苦しむのは我慢できない。「自分が存在してはいけない」と思ってしまい、危険な状態になる子もいます。

また、学校へ行かせたいという気持ちもわかるのですが、ちゃんと子どもの気持ちを受け止めずにむりやり行かせるのも良くありません。社会人であれば、つらい環境から自分で逃げ出すことを決められますが、子どもには「学校へ行かない」という選択の決定権がないことを忘れてはいけません。

少し強い言い方になりますが、強制的に通学させることは虐待とも言えると思います。「行きたくない」という気持ちを踏みにじるようなことはしないでほしいのです。まったく理解してくれないと子どもが思ってしまうと、親子の信頼関係は崩れてしまいます。

子どもの自殺が増える、新学期前の時期に考えてほしいことです。

Q.子どもがスマホゲームに夢中になり過ぎて心配。課金要素があるゲームも多いので不安

A.上達することで勝てるゲームは良いと思います。僕も不登校の間、ゲームを頑張って大会で勝ったりしたことで、自信をつけることにつながりました。努力を習慣づける意味では効果的でもあります。

ですが、お金をかけることで無制限に強くなって、際限がないタイプのものはあまりオススメできません。そうしたゲームではお金のある大人にはどうやっても勝てないじゃないですか(笑)。

今はプロのゲーマーもいます。囲碁や将棋のプロ棋士は評価されるのですから、ゲームを極めたっていいと思います。もっと世間的に評価されるようになるといいなと思っています。

Q.得意なこと、将来できることを見つけるにはどうすれば? 娘はスライムづくりが好きなのですが

A.僕の本(『学校は行かなくてもいい』)でも登場してくれたのですが、吉藤オリィさんはもともと折り紙が特技で、お母さんから「ロボットも作れるんじゃない?」という言葉がきっかけでロボットの開発者になりました。

スライムづくりも上手に作るには試行錯誤が必要ですし、料理やお菓子づくりなど、決められたレシピだけじゃなく、自分で考えてみるような形で興味の分野を広げていくともいいかもしれませんよ。

Q.メッセージアプリでのいじめや依存が気になって、子どもにスマホを自由に使わせるのが不安。ルールをどう守らせれば?

A.いじめはそういうツールがあるから発生するわけではないと思いますが、「保険」を作るのがいいかもしれません。つまりつながっている友達を多くつくる。そうすれば誰かから無視されても「別にいいか」と考えられると思うんです。

電話とメールだけでしか連絡がとれないというのは、今の子だとちょっと困ってしまうかも。特に学校の外で居場所や仲間を作ったりする場合、クラスのように決まって集まる場があるとは限らないので、連絡用のツールはなくてはならないものとも思います。

ルールに関しては、子どもと親の間の約束を対等の条件で交渉するのは困難です。金銭的な面などで決定権は子どもにないわけですから。自分でルールを決めてもらう、理想を言えばお金を稼ぐことができるようになってから、自分のお金で、というのがいいのかなとも思います。

子どもを親のために学校へ通わせていたのかも(参加者の感想)

今回の取材では、会場に来ていた保護者の方に感想をお話しいただいたので、ご紹介しましょう。

●Sさん(小3女子の保護者)

小幡さんの本を読んだことをきっかけにこのイベントを知って参加しました。不登校という状況にあって、本人がのびのびできる居場所を作ってあげたいと考えられるようになりました。まだ年齢的にも1人でどこかに出かけていくというのは難しいので、子どもの興味や関心に合わせて、いろいろな場所や経験を提案してあげられるようになりたいと思いました。学校以外にもそういう場所はあると知ることができました。

●Tさん(小5男子の保護者)

いろいろな話を聞いていく中で、不登校に対する印象がすごく変わりました。学校に行ってほしいというのはあくまで私の思いで、自分の価値観や世間体などにこだわっていたせい。子どもを親のために学校へ通わせていたのかも、と気づかされました。学校に行かなくてもいろんな道や可能性が社会には広がっている、ということも知ることができました。なぜ自分は学校に通わせることばかり考えていたのかが不思議なくらいです。

発起人・ 小幡和輝さんインタビュー

最後に、今回の感想と今後のイベントについて小幡さんに聞いてみました。

——今回の手ごたえはいかがでしたか

去年から今年にかけ、全国100カ所で行うことができたのはとても嬉しいし、主催者のみなさんに感謝したいです。全国合計で約2000名もの参加者が集まってくださいました。昨年主催してくれたチームだけでなく、前回は参加者側だった方が「今度は自分が」と主催してくれた場所もあって、とてもありがたいことです。

——次回以降の目標や課題はありますか?

動画のメッセージでも伝えましたが、全市町村で開催していくのが目標です。どんなに小さな場でもいいので、地域性を大事にしたいです。むしろ人が多く集まらないほうが行きやすいという子も結構いますので。

——すごく大きな動きになってきていますね。

しかし反面、参加へのハードルは上がってしまった部分もあるのかなと、実は感じていたりもします。「ちゃんとやらなくちゃ」になっているのかな、と。

不登校に問題意識を持つ方が主催してくれたり、参加してくれたりするのはとても嬉しいですが、本当に不登校への偏見をなくすためには、よりハードルを低くして、あまり関心のない人も参加できたり、気軽に主催できたりしたほうが、開催地を増やすためにも必要だと考えています。

——当事者が来やすい環境が大事ということでしょうか。

何より一番大切なのは子どもたちの居場所を作ることで、ただ集まってお菓子を食べたり、遊んだり、そういうのでもいいのかもしれません。そういうつながりが大事だと思っています。日本中、もっとそうなってほしいと願っています。

——全国各地にそんな場所ができたら素晴らしいですね。

なのでイベントに協力してくれる仲間をまだまだ募集しています。参加者や不登校の当事者でなくとも、何かしたい気持ちがあれば歓迎していますので、実行委員会のFacebookグループにぜひ参加してください!

——当メディアは通信制高校に関する情報を発信しているのですが、通信制高校に期待することはありますか?

不登校もそうですが、通信制高校もネガティブなイメージがいまだにあると思うんですよ。「全日制に行けないから」といったような印象が。

そういうのは関係なく、「その学校でこれができるから行きたい」と思えるような個性的なカリキュラムを持った学校が増えてきているので、期待しています。たとえばネットの特性を活かしたN高は個人的に面白いなぁと思っています。

だいぶ変わってきてはいますが、不登校になった後の居場所や選択肢はまだまだ少ないのが現状です。そこに、さまざまな可能性を示してくれるのが通信制高校であってほしいと願います。

(取材・文 / 中島理   写真 / 中川晋弥)

取材協力