年末年始、親子で読みたい「心に寄り添ってくれる本」5選

教育問題

不登校

2019/12/28

誰も自分の気持ちを分かってくれない。
そんなふうに考えてしまうことはありませんか?
今回は、そんな孤独や悩み、心の疲れに寄り添ってくれる本を5冊紹介紹介したいと思います。

長い人では9連休になる2019年~2020年の年末年始。
普段とは違ったこの季節だからこそ、ゆっくりと自分の心を見つめる時間を作ってみてはいかがでしょうか?

『そういうふうにできている』(さくらももこ/新潮文庫)

大人気コミック「ちびまる子ちゃん」の作者でもあり、エッセイストとしても人気のさくらももこさんによる、自身の妊娠と出産をテーマにしたエッセイ。

妊娠・出産と言えば、世の中ではとても素晴らしいこと、愛情に満ちたことを考えられていますが、筆者はそういったいわゆる「キラキラ」した想いではなく、自分ではどうにもできない体調の変化や、精神不安定による苦しみ、出産の苦労、育児の不安などをコミカルな文章かつ、非常にリアルに綴っています。

また、個人的に注目してほしいのは、筆者が抱く自分の親と子どもに対する有る種の「他人感」についてです。

「”親子”とは人間の都合上つけられた名称。それぞれはお互いに個別の人間なのだ」
「元来自分は人見知りなのに、はじめて会った赤ん坊に愛情一発よろしく!なんてできない」
など、親子とは、親の役割とは……といったことを改めて考えるきっかけになる1冊です。

選書:編集スタッフ・きたざわ
▼『そういうふうにできている』(さくらももこ/新潮文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4101388210/

『かがみの孤城』(辻村深月/ポプラ社)

直木賞作家、辻村深月さんのミステリー小説(本屋大賞2018年受賞作)。

【中学校に入学早々イジメをうけて不登校になってしまった主人公(安西こころ)。自室にこもるようになっていたある日、突然部屋の鏡が光だし導かれるがまま進んだ先は、お城のような不思議な空間だった。そこには彼女と同じ不登校の6人の中学生が集められていた。管理人の〝オオカミさま〟が言う。「この城の中で鍵を探してもらう。見つけた一人だけ願いを叶えてあげる」その日から7人は1年間を共に過ごすことになる。】

それぞれ事情がある子どもたちの様子・心情がリアルに書かれていて、思春期の女子同士の人間関係、学校と自宅がすべてだった中学校時代の記憶が蘇ります。また、今まさに中学生で生きづらさを感じながら頑張っている子どもたちの苦しみが理解できる気がしました。

世界はここだけじゃないことを知ってほしいと心から思うとともに、今、まさに生きづらさを感じているすべての人に読んでほしい1冊です。

選書:編集スタッフ・わか
▼『かがみの孤城』(辻村深月/ポプラ社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4591153320/

『新版 母さんがどんなに僕を嫌いでも』(歌川たいじ/角川書店)

小説家・漫画家の歌川たいじさんが、子ども時代の虐待やいじめなどの経験、母親との確執を描いたコミックエッセイ。

壮絶な環境の中で歌川さんは高校をドロップアウトしますが、後に働きながら大学受験の資格をとって大学の通信教育を受け、学生ミュージカルにも挑戦します。自分を醜いと思い込み、他人とうまく付き合えなかった少年が、困難を乗り越えながら成長し、いつしか有名企業のトップ営業マンに……。でも、順風満帆ではなく、その後も壁はたびたび立ちはだかります。

そのたびに、自分の弱さを見つめ、自分にとって大切なものは何なのかを考え続け、乗り越えていった歌川さん。過去は変えられないけれど、未来は変えることができる、自分を変えることはできる。

歌川さんのような壮絶な人生じゃなくても、自分を好きになれなかったり、自信が持てなかったりする人や、学校・職場・家庭などで問題を抱えていたりする人は多いと思います。でも、誰でも人生は変えることができる。考え方を少し変えれば、見えてくるものも違ってくるはず……。
そんな希望と、自分を変えるためのヒントを与えてくれる1冊です。
※中学生のお子さんには角川つばさ文庫版がオススメ!

選書:ライター・大西桃子
▼『新版 母さんがどんなに僕を嫌いでも』(歌川たいじ/角川書店)
https://www.amazon.co.jp/dp/4041062535/

『まちがったっていいじゃないか』(森毅/ちくま文庫)

中学生時代、「なぜみんなが簡単にできることが僕にはできないのだろう?」、「なぜ僕にとっての“普通”はみんなにとっての“普通”ではないのだろう?」、「なぜ僕はこんなにも孤独を感じるのだろう」と悩み苦しんでいた頃、この本と出会いました。

作者のプロフィールを見て「なんだ、エライ大学の数学の先生の言うことなんか。どうせお説教だろ」と半分バカにしながら読み進めていました。ひねくれ者だった僕は書いてあることの揚げ足をとるつもりでいたのですが、途中「どうもこの人は思っていたのと違うぞ」と気づいたのです。良い意味でいい加減で適当で、結構ゆるい著者。上から目線では決してないし、中学生の立場にしゃがんみせて分かったようなことを言うでもない。

ただ、「僕はこんなことがあった。君はどうだい?」と問いかける。まるで著者とお話をしているようでした。そして書いてある内容に、ときにうなずいて、ときにケンカを吹っかけてといった感じで読んでいきました。

「正しいかそうでないか」がすべてではないし、誰かと比べなくてもいい。間違ってもいい。今、とても苦しんでいることは解決を急がなくてもいいのだ。正解を出さなくてもいいのだ、考えることさえ止めなければ。
読んだ後には肩の力がスッと抜けて、少し勇気が湧いてきました。

読む人によってそれぞれ感じることは違うでしょうけれど、きっと今あなたが悩んでいることで必要以上に自分を責めることなく、ごちゃごちゃしていた考え方をまとめることができるはずです。ぜひ、著者と対話してみてください。

選書:ライター・中島理
▼『まちがったっていいじゃないか』(森毅/ちくま文庫)https://www.amazon.co.jp/dp/4480022074/

『ヒッキーヒッキーシェイク』(津原泰水/ハヤカワ文庫)

作者の津原泰水さんは、「津原やすみ」名義で少女小説家として活動した後、現在の名義に。推理、SF、ホラーなど幅広い分野で作品を発表し数々の賞を受賞している作家です。

本作はもともと別の出版社からハードカバー版が発売されましたが、文庫化寸前というタイミングで津原さんと出版社社長の間でトラブルが起き、文庫発売は中止に。そこに早川書房の編集者が名乗りを上げて、ハヤカワ文庫から無事に出版されたという騒動によって、一躍知られることとなりました。文庫発売に際し、その担当者が帯の文句で「この本が売れなかったら、私は編集社を辞めます。」と宣言したことでも話題となりました。

作品の内容はもちろんそんな騒動とは関係なく、ヒキコモリ支援センターのカウンセラーが、担当する4人の引き籠もり=ヒッキーを巻き込んで、あるプロジェクトを企てるというもの。

性別も年齢もタイプも異なる4人のヒッキーたちは最初戸惑いながらも、それぞれの能力を生かしていく中で、だんだんと自分の居場所、生きていく意味を見出していきます。

読みやすいポップな文体で語られるストーリーは徐々に加速度を増して展開していき、進むにつれて大きなうねりを生み出していくので、読み始めたら一気に引き込まれていくことでしょう。その中でヒッキーたちが徐々に世界に対して心を開き、自分の足で歩み出していく姿には、楽しさだけでなく、きっと自分にも関わる何かが感じられるはずです。

選書: ライター・高崎計三
▼『ヒッキーヒッキーシェイク』(津原泰水/ハヤカワ文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4150313792/

<文/高崎計三>

この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。