困ったら頼って! コロナ禍の学生を支える団体が続々

教育問題

2021/01/31

2021年1月8日、首都圏の1都3県に、そして13日には関西、東海、九州の複数の都府県に、新型コロナウイルス感染が始まって以来2度目の緊急事態宣言が発出されました。
再び飲食店をはじめ多くの店舗・施設に営業時間の短縮が求められ、アルバイトをして稼いでいた学生たちも大きな打撃を受けています。
中には、学費が払えなくなったり、家賃や食費などの捻出に困っていたりする学生たちもいるといいます。

一方で、このような状況の中、学生たちの支援に乗り出している団体も多く見受けられるようになりました。食の支援や、オンライン授業に対応するためのIT機材の支援、居場所支援など、多くの団体がさまざまなニーズを拾い上げて活動しています。

今回は、そんな支援団体から現在の状況や活動内容を伺いました。

食べ物だけでなく、仲間づくりの場としても!「食材もってけ市」

「昨年の3月以降、さまざまな学生団体や青年団体の調査により、コロナ禍によって困難を抱える学生が多くいることが明らかにされ、それに応えるための支援が必要だと考えました」

と話すのは、2020年6月に西千葉で活動を開始した、食料品や日用品の学生向け無料マーケット「食材もってけ市」を運営するメンバーで、大学4年生の二瓶満瑠さん。

お米や麺類、レトルト食品やお菓子などの食材の他にも、トイレットペーパーや洗剤、化粧水などの日用品などを寄付で集め、月2回のペースで「食材もってけ市」を開催して学生たちに配布しています。

「平時から学費という多額の〝固定費〟を負い、生活費をアルバイト収入に依存している学生たちが、家計収入やアルバイト収入の減少によって生活に困窮し、退学を検討するケースも出てきています。そこで、食料品や日用品の配布によって生活を支え、同時に学費の工面が困難な学生が他の支援につながれるよう、行政による学生向けの支援策をまとめた資料も配付しています」

食材もってけ市 開催風景

学生の困りごとは「生活困窮」だけではない

ある程度活動が認知されてからは、基本的に毎回100名以上の学生が来場するという「食材もってけ市」。
来場する学生たちからは、

「親からの仕送りがストップしました」

「バイト先が倒産しました」

「食費しか削れるものがない」

「バイト先が見つかりません」

といった困窮の声が多く聞かれたそうです。こうしたことを相談する場もなく、一人で抱え込んでいる学生も多い中、こうした活動はただ「モノをもらえる」こと以上に、精神的な支えとなっているのではないでしょうか。

さらに、この活動中にアンケートやSNSを通じてわかってきた学生たちの困りごととして、オンラインへの切り替えなどでこれまでどおりに授業を受けられなくなったことや、新入生が新たなコミュニティに入れず孤立を余儀なくされていること、また就職活動では内定切りなどへの不安などが明らかになってきたそうです。

そこで、「食材もってけ市」では同時に、学業や就職活動について相談できる場を設け、新入生向けに「友達つくろう会」を開催するなどの工夫も取り入れるように。

「成人式がなくなり、ずっと帰省もできていないという学生や、サークル活動がなくなり友達もできず、気分転換がうまくできないという学生、オンライン授業でなかなかモチベーションが維持できないという声が多く上がってきたことで、支援の幅を広げました」

「食材もってけ市」のような学生への食料支援活動は現在全国に広がっており、同様の名称で行われている地域もあります。従来の「子ども食堂」などもフードパントリーやお弁当配布などの活動に乗り出しているケースが見られますが、20歳前後の学生たちにとっては「もってけ市」という名称のほうが気軽に頼れるイメージです。

「フードバンク事業は欧米では一般的のようですが、日本では馴染みがなく、無料で食料をもらうことには抵抗を感じる学生もいるのではないかと考え、ぜひ気軽に持っていってほしいというメッセージを込めて『食材もってけ市』という名称にしました。また、自分はそんなに困っていないから……と遠慮する人もいることを想定し、学生のお祭りイベントのような楽しさを感じる名称を、という思いもありました」

すぐに食べるものに困っていなくても、家賃や学費の支払いに不安を感じている人はぜひ近くの支援団体を探してみてください。

※記事の最後にリンクを記載しています

生活の不安をなくし〝ゆきさき〟を一緒に考えてくれる「ユキサキチャット」

生きづらさを抱えた10代に向けて、オンラインでの進路相談事業を行なってきた認定NPO法人D×P(ディーピー)も、コロナ禍で困りごとを抱える10代への幅広い支援に乗り出しています。
D×Pではこれまで、オンラインとオフライン(学校現場)で10代につながりをつくってきました。

オンラインの事業はLINE相談として2018年秋からスタート。2020年6月には名称を「ユキサキチャット」にリニューアルし、これからの〝ゆきさき〟を一緒に考えるための相談窓口として、LINEを使って進学や就職などのさまざまな悩みごとを相談できるようになっています。

イメージ

2020年の4月以降、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ユキサキチャットの登録者は急増。その中ではこのような相談が続いたそうです。

「所持金が1,000円しかありません」

「一人暮らしをしながら高校に通い、アルバイトを掛け持ちしながら生活費を稼いでいましたが、アルバイトの日数が減り月5,000円程度しか手元に残りません」

「アルバイトがなくなってしまい、親も頼れないので困っています」

そこで、D×Pは食糧支援や現金給付のサポートをすることを決定し、支援を行なってきました。

まずは食料支援と現金給付を行って、安心できる環境をつくることが重要だということで、立ち上がった新たなプロジェクトが「#ひとまずごはん」です。

これは月額寄付サポーターを集め、その支援金を使って支援が必要な10代に30食分の食材をすぐに届けるというもので、1月25日現在までに67名の10代の若者たちに食料を届けることができる寄付金額が集まっています。

家賃や光熱費などを払う現金がないという場合には、毎月1万円の現金も給付(原則3カ月間)し、生きることを支えるほか、生活が不安な10代にパソコンを提供し、スキルアップの機会提供や在宅ワークの案内など「働く」ことへのサポートも。

「ごはんを入り口にして孤立している10代と出会い、その後、就職やスキルアップ、福祉制度の利用など、本人の希望や状況に合わせたサポートを行いたいと思っています」

イメージ

「ユキサキチャット」を通じて、今抱えている生活の困りごとを解決し、さらに未来へとつないでいく……。こうしたD×Pのサポートを受けて生活を立て直し、未来への希望が見えるようになってきた10代の子たちも多いと言います。

「PCを寄贈した子がプログラミング教室でアルバイトを始めたり、D×Pから在宅ワークで仕事をお願いした子が、そこから自分で在宅の仕事を探してアルバイトを始め、正社員になったりしています」

身近に頼れる人がいない、相談しやすい人がいないという10代のみなさんは、ぜひ「ユキサキチャット」に登録してみてほしいと思います。

「困っている」 理由はそれだけでいい

今不安を抱えているみなさんの中には、「もっと困っている人がいるかもしれない」「自分が相談してもいいのだろうか」などと思ってしまう人もいるかもしれません。でも、そんなふうに思う必要はありません。コロナ禍だからこそ、行政が行き届かないところで多くの団体、個人が立ち上がり、困っている子ども、若者を支えようと動いています。

それは、みなさんにできるだけ安心して今を生きてもらい、みなさんの笑顔でこの世の中を少しでも明るくしてもらいたいからです。みなさんが安心して暮らせることが、多くの大人たちの安心や幸せにもつながっていきます。

今回は2つの団体を取り上げましたが、他にも近くに、気軽に頼れる団体がきっとあるはず。ぜひ不安を自分だけで抱えるのではなく、誰かに頼ってみてください。

(大人のみなさんは、各団体へのご支援をお願いいたします!)

取材協力

●西千葉・学生コロナ支援「食材もってけ市」

Twitter:https://twitter.com/chiba_motteke

Instagram:https://www.instagram.com/chibamotteke/

●認定NPO法人D×P

ひとまずごはんプロジェクト:https://www.dreampossibility.com/19999

ユキサキチャット:https://www.dreampossibility.com/yukisakichat/

<取材・文/大西桃子 >

この記事をシェアする

この記事を書いたのは

大西桃子

ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。