中卒の資格取得には意外な落とし穴! 高卒と高卒認定の違いも

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2019/12/11

「今の時代、生きていくには資格をとって手に職をつけておいたほうがいい」といった言葉をよく聞きます。実際に、英検や簿記などさまざまな資格にチャレンジする中学生や高校生や、専門の学校などに通いながら、看護や介護、保育士など、仕事に直結する資格をとるために頑張っている学生たちもいます。

でも、資格の中には、中卒でとれるものもあれば、高校を卒業していないととれないものなど、受けるための条件が決められているものが多数存在することは知っているでしょうか?

今回は、そんな資格について、高等学校卒業程度認定試験(以下高卒認定試験)や各種資格試験をサポートする無料塾を運営する・一般社団法人「慈有塾(じゆうじゅく)」代表の高木さんにお聞きしました。

高卒資格はやっぱり必要?

慈有塾の入塾条件は、「中卒・高校中退で現在学校に在籍しておらず、高卒認定試験または大学受験を目指す若者」。
生徒たちの多くが毎年高卒認定試験に挑戦するそうですが、彼らはなぜ高卒資格が必要だと感じているのでしょうか。

「生徒の中には、高校を中退してしまって、思うような仕事に就けないためにお金が稼げないという人もいます。そのため、高卒認定試験やその他資格をとって、仕事の選択肢を増やすことで生活を立て直したいという人が多いのです」

実際に高木さんが生徒さんに聞いた高卒資格がなくて困ったシーンには、以下のような場面があるとのこと。

  • アルバイトの面接でも高卒でないと受からない場合がある
  • 企業で正社員になるにも、高卒が採用条件になっていることが多い
  • 手に職をつけたいと思っても、高卒以上でないととれない資格がある
  • 資格をとっても、その資格を武器に就職しようと思ったときに、採用条件が高卒以上となっているため、正社員になれない

このように、中卒でもとれる資格はあるけれど、選択肢を広げるためには高卒の資格が必要になってくるとのこと。そこでまずは高卒認定試験に合格してから、他のさまざまな資格試験にチャレンジするという人が多いのだと言います。

手に職をつけるための資格、でも取得ルートはさまざま

では、高卒認定をとった後に、慈有塾の生徒たちはどんな資格を目指し、どんな職に就いていくのでしょうか。

「これまで、介護士や看護師などの仕事に就き、人生の再スタートを切っていく生徒たちがいました。自動車整備士や保育士になりたいという人たちも。また、市役所職員や消防官、警察官などを目指して、高卒で受けられる地方公務員初級職に挑戦する人もいます」

たとえば介護福祉士の資格には学歴の条件はなく、ルートとしては次のようなパターンがあります。

  1. 高校卒業後、養成施設を卒業
  2. 実務経験3年の後に実務者研修を受け、国家試験に合格する
  3. 福祉系の高校に入って国家試験に合格する

中卒なら2つめのルートになりますが、この場合、介護等の業務を3年間経験する必要があります。ちなみに介護施設で働いていても事務作業などでは実務経験とは見なされません。さらにその後、国家試験が待っていますから、勉強と実務を両立していく必要が出てきます。

こうしたことを考えても、①や③のように高校を経るほうが近道だと言えそうです。

また、自動車整備士には1〜3級があるのですが、それぞれ次のような受験条件が設けられています。

  1. 高校卒業後、国が指定する自動車整備の専門施設・養成学校を卒業→2級の資格を取得
  2. 2級取得後、3年間の実務経験を積む→1級の受験資格を取得
  3. 高校卒業後、4年制の専門学校や大学へ行き1級自動車整備士の課程を修了→1級の受験資格を取得(実技と学科のうち、実技は免除)
  4. 認証工場や指定工場で、1年以上の実務経験を積む→3級の受験資格を取得
  5. 4の後、3年以上の実務経験を積む→2級の受験資格を取得

こちらの場合も中卒では4つ目や5つ目のルートがとれますが、認証工場や指定工場で採用してもらうところからのスタートとなり、ハードルは高くなるでしょう。また、級数が上がるほど就職後の給与も高くなっていきます。

こうしたことを考えても、たとえ中卒でとれる資格があったとしても、高校を卒業する、あるいは高卒認定試験に合格しておくほうが、確実に目指す仕事につき、より高い給与を得るためにもよいということがわかるかと思います。

中高生が考えておきたい、資格のこと

では、現在中学生や高校生の生徒たちが、今のうちにチャレンジしておくと将来の役に立つかも……という資格はあるのでしょうか。

「日商簿記やMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、中高生でも受験することができて、就職の際に有利に働くことがあります」と高木さん。

簿記であれば、経理・会計事務員・銀行員・コンサルタントなどの仕事につくのに役立ち、MOSなら一定のパソコンスキルがあることを示せるため、役に立つ場面が多いそうです。
他には、職種によっては英検2級以上やTOEIC700点以上などの英語の資格が就職に有利に働くこともあります。

中高生くらいから試験の勉強を始めて、より高い級・点数を目指していくのもよいのではないでしょうか。

高卒・高卒認定 学歴以外に違う点も

最後に、高木さんからこんな話も聞いたのでご紹介しておきます。

「通信制高校に通いながら、高卒認定試験に挑戦する人もいます。高卒認定試験に合格すると高校の単位になるという高校もあり、卒業するために資格を使うためです。こういった場合では、その後就職するときに、履歴書に『高校卒業』と書けるようになります。
高卒認定試験はあくまでも“高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定する試験”ですから、高卒とは違うことには注意したいですね」

履歴書に、『高卒』とあるのか『高卒認定試験に合格』とあるのかで受ける印象は企業や担当者にもよりますが、高卒認定試験をこんなふうにも使えるということは覚えておきたいですね。

「慈有塾にも通信制高校の生徒が通っていたことがありましたが、担任の先生が親身になって面倒を見てくれましたし、遠足などの高校生活を楽しむこともできます。その生徒には卒業式にも呼んでもらったんですが、高校を卒業するということは単に学歴を得るためというだけでなく、自分の自信になりますし、さまざまな経験ができる大切な機会だと思いますよ」

と高木さん。

ぜひみなさんも、中学卒業後、高校卒業後のことを少しずつイメージしながら、前向きにいろいろなことにチャレンジしてみてください。

取材協力

慈有塾

さまざまな理由で学習機会を逃してしまった若者を主な対象として、無料で学習機会を提供する無料塾。貧困による教育格差を解消するために、高卒認定試験のサポートをメインに、一人でも多くの若者にセカンドチャンスをつかんでもらうことを目指して活動。現在、東京都八王子市、多摩市、杉並区の3カ所で教室を運営。

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子

ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。