子どもに悪影響? ゲムトレ代表・小幡和輝氏が教えるゲームとの正しい付き合い方

教育問題

専門家に聞く

2020/10/15

9月20日、ゲームのオンライン家庭教師サービス「ゲムトレ」の運営代表も務める小幡和輝氏が、「ゲームとの正しい付き合い方、子どもがゲームにハマる理由と親として注意すべきこと」というテーマでオンライン講演を開催しました。

この講演にはイベント発表から参加申込が殺到し、当日は約360名が参加しました。

講演では、小幡氏が小学校から約10年間の不登校期間に得たゲームからの影響や、ゲムトレを運営しながら得た知見などを踏まえ、保護者などからの質疑応答を行いました。

小幡和輝
起業家/#不登校は不幸じゃない 発起人
1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームに費やし、トータルのプレイ時間は30000時間を超える。その後、定時制高校に入学。高校3年で起業。さまざまなプロジェクトを立ち上げる。2018年より不登校の当事者に向けた居場所づくり「#不登校は不幸じゃない」を立ち上げ。47都道府県すべてで支援活動を行なっている。

ここでは、講演内容を一部抜粋して、ゲームをやる子どもと親が関わっていくために重要な考え方を紹介していきます。

なお、講演の全ての内容はアーカイブ動画でもご覧いただけます。

また、講演を終えた小幡さんにもメッセージを頂いたので、ぜひ最後まで記事をお読みいただければと思います。

ゲームは堕落へつながる悪なのか?

ゲームについて、あなたはどんなイメージを持っているでしょうか。

趣味で楽しくやるものといった比較的ポジティブなイメージもあれば、不健康や暴力的になる、依存につながるものだというイメージもあるかもしれません。

そんなゲーム・eスポーツですが、小幡氏は「世界的にも注目されているジャンルであり、正しく付き合えばコミュニケーションにも役立ち、頭も良くなり、不登校や昼夜逆転といった状況を改善することにもつながる」と言います。

実際、ゲームは国内でも化粧品などと同じ市場規模となる1.8兆円を誇り、生活必需品と言えるくらい身近な存在だと言えます。また優勝賞金が3億円となるeスポーツの世界大会もあり、この賞金金額はゴルフなどのメジャーな大会と同レベルであると、小幡氏は紹介。

それでも目の前でゲームに熱中する子どもを見ていると不安、という声が講演中にも参加者から寄せられ、小幡氏が回答していきました。

保護者が抱えるゲームへの不安… 小幡氏の回答

Q,フォートナイトで子どもの悪口がひどくなると聞いた

A,フォートナイトには、ゲーム内で「殺す」などの、暴力的な言葉は出てきません。

また銃撃戦はありますが、血が出るようなグロテスクなシーンもありません。

しかし、言葉遣いが悪くなる可能性はあります。それはなぜかというと、一緒にゲームをしているコミュニティの言葉使いが悪いから。

もしくは見ているゲーム実況主が言葉使いの汚い人だったりすると、子どもも影響されて悪くなっていきます。

暴力的になるのでは?という心配もたまに聞かれますが、暴力的なゲームをしていても、影響されて暴力的になるという科学的なデータは出ていません。

不安なのであれば、科学的なデータを調べてみてください。

Q,ゲーム内でいじめが起きると聞くが?

A,オンラインで知らない人と遊ぶ場合、匿名性があるのでSNSなどと同じように暴言を吐いてくる人もいます。

また、知っている子と遊ぶ場合にいじめが発生するのであれば、それはゲームのせいではなく、その相手の子がいじめてくる子だということだからその子から離れた方がいい。

ただ、ゲームのルール上、4人一組でしか遊べないこともあります。そこに入れなかったからいじめかというとそういうわけではない。また、大会を目指している子たちが大会前に実力不足の子と一緒にチームを組めない場合もある。

保護者がいじめなのかそうじゃないのかを判断するためにも、ゲームのルールを把握しておいた方がいいですね。

ゲームのマナー・ルールを守って、競技として楽しむことが大切です。

Q,ゲーム脳、ゲーム依存症になるのでは?

A,ゲーム脳になるという科学的根拠はありません。

逆に、ゲームを1日1時間ほど定期的にやっている人は頭がいい、認知症にゲームが効くといったデータも出ています。

これも科学的なデータが出ているので、調べて自分の頭で考えて判断してください。

またゲーム依存症はWHOの定義によれば、以下のとおりです。

他の趣味や日常的な活動よりもゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の活動よりもゲームをすることが優先されます。 そして否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートします。 ゲーム症(障害)が診断されるためには、その行動様式が、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど重大でなければならず、通常少なくとも12ヶ月間にわたって明らかです。

友達とコミュニケーションしながらゲームをやっていて、日常生活に支障をきたすほどでなければそれば依存症ではありません。

一人でやっているのであれば、それはあまり良い使い方ではないので、ぜひゲームはコミュニケーションツールとして使ってほしいです。周りに一緒にやる人がいないのであれば、ゲムトレ(小幡氏が運営するゲームの家庭教師サービス)を使ってもらってもいいと思います。

Q,ゲームのせいで昼夜逆転してしまうのですが…

A,昼夜逆転はゲームのせいではありません。なぜ子どもが昼夜逆転するのかというと、それは朝には楽しいことがないからです。

それに不登校であれば、朝は他の子が登校している嫌な時間。でも夜はゲームの世界は盛り上がっているし学校もないので楽しいんですよ。

だから、朝こそ楽しいことをやることが大切だと考えています。ゲムトレでも午前中に教えていますよ。

「ゲムトレ」公式サイト

Q,ゲームで成長する力って?

A,戦略を考えたり、予測して考えたりすることが多いので、先を読む力が身につくと思います。自分も、サッカー自体は上手じゃないですがパスカットだけはすごく上手いです(笑)

そして、ゲームがすごく得意になると、そのゲームのやり方やルールなどを人に説明する機会が増えるので、人に説明することがすごく上手になると思います。

子どものゲーム 保護者が絶対にやってはいけないこと

ゲームとは関係ないところで起きる良くない事象でも、ゲームのせいと認識してしまうことがいかに多いかということが、小幡氏の説明によって少しずつ明らかになっていきました。

ただ、実際に目の前でゲームに熱中する子を目の前にしたとき、保護者が良い印象を持てない場合もあるかもしれません。

それでも、「子どもがやってるゲームを、やったこともない親が否定することだけは絶対にやらないで」と小幡さんは言います。

「ゲームに関わらず、人が楽しいと感じて熱中しているものに対して、それをやったこともない人が勝手に判断して否定するのは人間としてすごく失礼なこと。同じことをされたら大人だってイラッとしますよね? それでも大人であれば我慢してくれるかもしれないけど、子どもは爆発してしまうと思います」

小幡氏は、この講演でこれを一番伝えたかったそう。
確かに、自分が好きなものを何も知らない人に否定されるのはすごく辛いし、「そうだな」と納得することはできませんよね。

逆に言えば、保護者がゲームを一緒に楽しもう、知ろうとしてくれることは、子どもにとってはすごく嬉しいことなのだと小幡氏は言います。

最後に、今回の講演を終えてどのようなことを感じたか小幡氏にお聞きしました。

── 講演は盛況、講演中もたくさんの質問が届いたと思いますが、この反響をどのように感じていますか?

小幡さん:たくさんの方にご参加いただき、嬉しく思っています。コロナウイルスの影響もあり、家庭でのゲームの時間が増えているからこそ、子どもとゲームとの関わり方を考えたいという人が増えているのだと感じました。
とても嬉しかったのは、頭ごなしに否定するのではなく、理解し、向き合おうという姿勢の親御さんばかりで、時代が変わってきたなとも感じました。僕の子どもの頃はゲームをかなり否定されて育ったので。

── ゲームに対して不安を感じる保護者の方に、ゲームを愛する大人として伝えたいことは。

小幡さん: ゲームは人生を豊かにするツールです。ゲームについてネガティブに感じているものを分解してみると、それはゲームのせいではなく、ゲームのやり方や環境に問題があることがほとんどです。ゲームをバカにしたり、否定的に見るのではなく、ぜひ視野を広く持っていただき、ゲームとの正しい付き合い方を家庭で考えていただけたら非常に嬉しいです。

(取材・文 北澤愛子/クリスク)

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この記事を書いたのは

北澤愛子
通信制高校ナビ 編集長
中学時代のいじめ経験から、学校のシステムに疑問を持つ。株式会社クリスクにて不登校経験者や通信制高校への取材・コンテンツ発信を行う他、朝日新聞主催イベントへの登壇、AbemaTV「Wの悲喜劇」などにも出演。