学校見学の中止・説明会のオンライン化でも大丈夫! 志望校を選ぶための考え方

専門家に聞く

2020/10/13

数多くある学校の中から、限られた情報だけを頼りに自分の進路を決めるということは、通常でも大変な作業です。
しかも2020年は新型コロナウイルスの影響により、学校説明会もオンライン化されるなど、今までとは異なる状況が至るところに生じています。また、このコロナ禍での学校の対応も学校を選ぶ基準に加わって、より複雑になっています。

そんな今、学校を選ぶには何を基準にすればいいのでしょうか。

お話をお聞きしたのは、探究型教育プログラム「クエストエデュケーション」の企画開発・提供などを行う「教育と探求社」の、チーフエバンジェリストとして全国を回り、探究学習についての知見やノウハウを伝える松本優也さん。

そんな松本さんがまず話されたのは、「子どもの幸せの基準が変わってきている」ということです。

「いい大学に入っていい企業に入るということが、本当に子どもたちの幸せにつながるのかということが、ますますわからなくなってきている時代です。大企業の倒産は現実に起きているし、学歴もいつまで通用するかわからなくなっている。世界に目を向けると、日本の大学は海外から見てもそこまで魅力的にはなっていません。今後、今の子どもたちが社会に出て活躍する未来を考えると、たとえば今の10代が社会の中核を担うだろう2060年に、日本の中だけで仕事を完結することはあまりなさそうです。そう思うと、日本の中の学歴はどこまで重要なのかと。

親が子どもに願う究極の目的は、子どもが幸せになることですが、『幸せになるための力』というものがもしあるなら、それを学校教育の中で体系立って学べる環境があるかどうかがとても重要になります。そこに関しては、通信制でも総合学科でも普通科でも、制度の差はそんなにないのではないかと思うんです」

単純に「有名な学校だから」「偏差値が高いから」といった理由で進学先を選ぶことができなくなっているのが今の日本です。これを踏まえて、では具体的にどう学校を選んでいけばいいのか詳しく聞いてみましょう。

先生たちが学びの本質をどう考えているか、聞いてみよう

松本さんは、コロナに関係ない状況であれば、学校説明会などで「幸せになるための力」が身につく環境を実現している「いい学校」を見分けるよい方法がひとつあると言います。それは「職員室を見る」ことなのだとか。

「たとえば、新指導要領で推進されている『探究学習』について、多くの学校では”こういうプロジェクトをやりました” “こんなことを考えました” というアウトプットが目的になってしまいがちです。しかし本当に大事なのは、もしプロジェクトが出来上がらなかったとしても、その過程で何を学んだか、ということなんですね。プロジェクトやアウトプットは学びのための手段であって、目的ではありません。

職員室を見ると、そういうことを重視しているかどうかは、けっこうわかるものなんです。というのも、全国いろんな学校を回ると、子どもの学び方には先生のあり方がとても大きく関わっていることがわかってきました。同じ学校・学年でもクラスによって全然雰囲気が違います。活発で盛り上げ上手な先生のクラスは活発に議論しますし、静かな先生のクラスは一見大人しいですが、頭の中で内省的な学びをする生徒が多かったりしています。先生がその場にどうあるかということが、何を教えるかよりも実は重要なんですね。

「先生がどうあるか?」これが一番実感できるのが、職員室です。『こんにちは~』と入っていったときに誰も対応してくれないとか、逆にみんなが反応してくれるとか、あるいは先生同士の雑談があるかなどで、人が作り出す “雰囲気” がよくわかります。一般企業でも、職場が対話的な企業は生産性が高いとも言われますよね。学校も同じで、職員室が対話的だと先生同士の関係もいいので、明らかに雰囲気も違いますし、子どもたちの学びにも大きな影響が出るんです。」

オンラインでも学校の本質を知ることはできる

今年はコロナウイルスの影響で、学校説明会もオンライン化されているところが多く、職員室を覗くことも難しくなっています。その場合はどうすればいいのでしょう?

「少人数で個別に質問ができるようなオンラインの会があれば、ただ学校側から用意された言葉を聞くよりもいろんな情報を得やすいと言えます。質問については、より根本的なことを聞いてみたほうが、その答えが指標になります。先ほどの探究学習を例にすると、『そもそもなぜ探究学習をやるんですか?』とか、『探究学習の成果はなんですか?』と聞いてみてはどうでしょうか。

社会に出てからも所属する組織の上長から「自律的な人材になれ」と言われ、それは本当の意味での「自律的な人材」ではなく、「その上長の考える正解を、言われなくても察してやれ」と翻訳されてしまうケースがあります。学校の探究学習でも同じことがよくあり、子どもたちは “先生の考える正解を当てに行く”というゲームになってしまう傾向があります。ですが予測困難な社会においては、上長や先生が持っている正解通りになることなんてめったにありません。であれば、いかに正解のない問いを子どもたちに問い続けることができるかが重要になります。

先ほどの質問は、そのような前提に立って探究学習を構築しているかどうかが浮かび上がってくる問いです。しっかり考えている学校ほど、そういうことを先生同士で議論されているので、質問されたときにもすぐに回答が出てくるんです。

そういう『視点の大きな質問』は、保護者としては遠慮しがちかもしれませんが、どんどんしていいと思います。ちなみに進学実績といった要素を気にする保護者も多くいらっしゃいますが、全国各地の先生方とお話ししていると、実は『進学実績がゴールじゃない』と考えている先生方もけっこういらっしゃるんですね。そう考えている先生こそ、こういう質問をされるとうれしいのではないかと思います。他にも『これからの社会で必要な人材ってどんな人だと思いますか?』などの問いも有効だと思います」

その場で質問のできる双方向的なオンライン説明会があるところや、個別に相談ができるところでは、ぜひ積極的に質問をしてみましょう。

オンライン授業をやっているかどうかは重要?

2020年春には全国の学校が休校となり、オンライン授業を始めた学校も多くありました。今は通常授業に戻ってきていますが、この先も予断を許さない状況です。その中で、「オンラインに強い学校」を基準のひとつに入れておく必要はあるでしょうか?

松本さんは、「オンラインへの対応は、学校の違った側面を浮き彫りにしてくれる」と言います。

「『ウチは以前からオンライン授業への対応を進めている』とアピールする学校もありますよね。ただ、大事なのは『オンライン授業をやっているかどうか』よりも、オンラインのような今までとは全然仕組みの違うことを、生徒たちが学ぶ題材として活用しているかどうかが重要だと思います。

脳神経科学では、『未知』や『無知』というのは心理的危険状態に陥りがちな条件と言われているそうです。知らなかったこと、やったことのないことに対応するのは怖いし、ストレスになりやすい。でも、それを『やってみる』という機能を、前頭葉の一部が持っているということがわかってきています。これは、蓄積した情報を元に物事を判断するAIにはできない、人間ならではの機能なんですね。

加えてこの機能は10代の頃に最も発達するとも言われています。だから、その前頭葉の一部が一番鍛えられる中学・高校生のときに、『よくわからないけどやってみる』という経験をどこまで積めるかというのは、『未知』や『無知』だらけのこれからの社会において重要な力が身に着く教育になってきます。オンライン教育はまさに『未知』や『無知』の世界で『やってみる』という学び方ができる機会ですよね。

だから『ウチは以前からオンライン授業をしている』などの、オンラインに対応している・していないという軸よりも、『オンライン授業も含めた『未知』や『無知』なことを生徒の学びの題材にできているか』という軸で学校を見たほうがよいと思います」

社会情勢が大きく変わり、「学校を選ぶ基準」そのものが多様化しているという松本さん。最後に、こう話してくれました。

「どの基準を採用するのかが大切だと思います。親なら、『子どもに何を願うのか』。子どもは『自分がどうありたいか』。それをまず自分自身に問うて、『そのためには学校にこうあってほしい、こうしてほしい』ということを考えると、どの学校が適しているのか、基準が見えてくるようになるでしょう。

社会の激しい変化が、ここ数ヵ月で学校という現場にも実感を伴って出てきました。このタイミングで、『学校が何をしているか』というのはすごく大切なポイントです。それを知るためには『オンライン教育をやっていますか』ということよりも、『オンライン教育をやってみて、先生方はどうでしたか』と聞いてみるといいと思います。気持ちや感情を問うことで、学校として何を重視しているかが見えやすいですから」

実際に学校見学や説明会に行く機会は減っていても、オンラインでこうした質問をするチャンスはありそうです。ぜひ試して、どのような学びができる学校かをじっくり見つめてみてくださいね。

取材協力

松本優也さん

教育と探求社 創発部 チーフエバンジェリスト。 大学卒業後、業界大手の畜産飼料会社にて営業を担当。2014年に教育と探求社の主催する「クエストカップ全国大会」を参観し、「教育こそ社会を変える」と確信し、教育と探求社に参画。西日本を担当する学校コーディネーターを経て、2019年よりチーフエバンジェリストとして活動。教育と探求社が15年以上かけ蓄積した知見や、全国の学校と共に学び続けたノウハウを伝える役割として全国を回る。

探究型教育プログラム「クエストエデュケーション」

<取材・文/高崎計三>

この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。