繋がれる場所は学校だけじゃない! 高校生たちが始めたオンライン活動

生徒・先生の声

2020/07/31

緊急事態宣言が解除され、5月末からは登校も再開されました。
しかし、新入生・在校生ともに環境の変化の時期と、感染予防対策が重なり、気軽に話すことも難しいため、やりにくい状況が続いているのではないでしょうか。

また、以前よりも時間はあるけれど何をしたらいいかわからない、という人もいるかもしれません。

それでも大きな救いがあるとすれば、それはスマホなどを使ってオンラインでコミュニケーションを取る手段があることではないでしょうか。
今では、授業のオンライン化だけではなく、自分たちが主体となってオンライン活動をすることも可能ですよね。

そこで今回は、登校自粛期間にオンライン活動を始めた高校生たちについて紹介したいと思います。

英語で社会問題をディスカッションする「Lumiture」

群馬県にある「ぐんま国際アカデミー高等部」の2年生である河上明夢さんは、まさに休校期間のまっただ中である今年の4月に、高校生を中心とした英語でのディスカッションイベントを開催する団体「Lumiture(ルミチャー)」を立ち上げました。

河上明夢(かわかみ・めいむ)さん
代表の河上明夢(かわかみ・めいむ)さん

「今までは学校に通えることが当たり前と思っていましたが、コロナでこういう状況になって、学校に行けなくなりました。でも私たちの学校では早い段階からZOOMで授業をやっていて、『これを使って他校の生徒、全国の高校生ともオンラインでつながりたい』と思うようになりました」 と話す河上さん。

全国の人とつながりたいという思いから、あえて学校の友達には相談せずに立ち上げの準備を始めたそうです。現在は運営メンバーが15人いますが、全員他校の生徒で、九州から北海道まで全国に散らばっています。

「はじめは人の集め方も難しかったですし、イベントへの参加申し込みや感想を送るフォームの作成なども1人でやっていたので、いろいろ大変でした。でも今はメンバーがいて作業を分担できているし、それぞれの得意分野を生かしてやれているので、活動がすごく楽しいです」とのこと。

テーマは社会問題から、高校生に身近なテーマまで

団体立ち上げから1カ月後の5月3日、オンラインでの英語ディスカッションイベントを初開催。このときには34人もの参加者が集まりました。
できればゴールデンウィーク中に第1回をやってみたいと仲間と話していたそうですが、参加者の人数の多さに驚いたそうです。

その後も、月2回の開催を目標に活動中で、5月に3回、6月に2回とコンスタントに開催を続けています。

過去の議題では、河上さんが以前から関心を持っていたという「SDGs」(英語で「持続可能な開発目標」の略で、現代社会が抱える問題を解消するためのテーマ設定)の中から、「貧困」「飢餓」「人種問題」をピックアップ。
また、高校生たちに身近な「9月入学について」といったテーマを扱うことも。

毎回、集まった参加者は英語と日本語のグループに分かれて議論を行います。参加者は高校生だけに限っていないので、大学生や社会人、中学生の参加もあるとのこと。

「毎回、終了後のアンケートでは『考えを深めることができた』という声が多く、特に9月入学について話し合った第2回のときには、『話し合ったことで考えが変わった』という人も多かったです」と、反応も上々の様子。

オンラインでも学校外でも繋がれる!

河上さんは活動を通じて、確かなやりがいを感じていると話します。

「学校に行けていなかった期間にイベントを開催することで、時間を無駄に過ごすのではなく、気を引き締めることができました。それから、運営メンバーとはまだオンラインでしか会ったことがないんですが、特に副代表の子とは何でも話せる仲になりました。学校以外でもこんな素晴らしいつながりができる機会があるんだということを、この活動を通して学べたと思います。中高生の皆さんも、私たちのイベントにも参加してほしいし、他のイベントもいろいろあるので、一緒に考えていけるようになったらうれしいです」

また河上さんは、自分で活動を始めることについて「すっごいオススメします!」と声を弾ませます。

「立ち上げには勇気が必要で、私も最初は躊躇していました。でもコロナで休校が続いて、『これがチャンスかも』と始めてみたら、そこで素敵な仲間に出会えました。何かをやろうと思ったら、立ち上げてみるべきだと思います。行動してたとえ失敗しても、自分の中で何かが変わっているはずだし、成長できますから

気軽に参加できる模擬国連を実現した「もぎこみゅ!」

続いて紹介するのは、もっと幅広い人々に「模擬国連」へ参加してもらおうと活動する学生団体「もぎこみゅ!」。

模擬国連とは、学生を中心に、参加者それぞれが一国の大使となって国際問題を話し合うイベントです。
全国大会や国際大会などさまざまな大会が開催されていますが、その内容から「英語がペラペラな帰国生がやるもの」「頭がいい人しか参加できないんでしょ?」という先入観を持たれがちです。

2016年に結成された「もぎこみゅ!」では、そうした先入観を取り除き、初心者や非帰国生など、英語が得意でない人たちにも模擬国連に親しんでもらうことを一番の目的として活動しています。

大会の中止がきっかけに

もともと模擬国連は本当の国連会議同様に参加者が一堂に集まり、小グループに分かれたりしてさまざまな問題を話し合う形式で行われてきました。
しかし今年は、コロナの影響で多くの大会が中止に。そこで、オンラインでの開催を模索する団体が増えてきたのです。

もぎこみゅ!では、こうした事態になる以前からオンラインでの模擬国連開催を考えていたとのこと。それもあって、4月下旬には第1回の開催にこぎ着けました。

代表を務める高校生のぱむさんは、「急な開催だったにもかかわらず、すごくたくさんの人に参加していただいて、需要があるということをすごく感じました。特に『今まで挑戦したかったけどできなかった』という初心者の子たちが多かったですね。海外の方や、いつもは東京中心なので参加できない地方の人など、地理的・物理的な制約がある子たちと一緒にやれたのはよかったと思います

もぎこみゅ!の模擬国連の様子

もちろん初のオンライン開催とあって、回線トラブルなどテクニカルな面でやりにくい部分もあったそう。でも、意外な利点も見つかりました。

「初心者へのサポートは、オンラインのほうがやりやすかったですね。全体の中で一人一人の動きを把握しやすかったので、あまり他の参加者と交渉できていない人がいたら、個人的にアプローチを入れてあげるといったこともできました」

この時期だからこそ、オンラインで気軽に参加して

終了後のアンケートでは、「気軽に参加できた」「もっとこういう機会を増やしてほしい」というプラスの意見が多かったとのこと。
休校期間中にはある程度まとまった時間が取れたために、初参加に踏み切れたという人も多かったようで、もぎこみゅ!としても「コロナでの休校がプラスになった」そうです。

また、オンラインで開催をしたことで、もぎこみゅ!の新たな役割を感じることにもなったとのこと。

「模擬国連活動が活発でない学校の生徒や、そもそも高校に通っていない人などにも、学校を通さずに模擬国連に参加できる道筋を作るのが、私たちの役目だと思っています。また、そのニーズがオンラインでさらに広がっていると感じています」

ぱむさん自身も、この状況下で今まで以上にいろんな人とコミュニケーションをとる機会が増え、多くの人に模擬国連を知ってもらえるようになったことで、やりがいを感じているそうです。

「コロナのためにできなくなったことも多いですけど、この時期だからこそオンラインでやろうという団体も多いですよね。制約がある中でも活動の幅が広がった面もあるので、コロナを理由に何かを諦めるのではなく、この時期だからこそオンラインでできることに目を向けて、今まで挑戦したことがないフィールドに挑戦してほしいと思います」と、メッセージを寄せてくれました。

新しいことにチャレンジするのには勇気がいるものですが、オンラインならそのハードルも少し低く感じられそうです。
オンラインを使えば学校だけじゃない、たくさんの人とつながることができます。そこからいろんな考え方を知ることで、周りの物事への視野も広げられるはず。

立ち上げるのは難しそうでも、まずは自分が興味を持てる活動を探してみてはいかがでしょうか。

取材協力


<取材・文/高崎計三>

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この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。