「評価されないからこそ挑戦できる」 中高生のための居場所『b-lab』へ潜入

生徒・先生の声

教育問題

2019/10/23

児童館は小さい子がたくさんいて居心地がよくないし、図書館はおしゃべりしたり音楽や運動を楽しんだりはできない……。

中高生が友達と集まったり、自分の好きなことを家の外で楽しんだりできる場所は、町の中にあまりありません。カフェやファーストフード店に行くにもお金がかかってしまうし、未成年が安心して使える居場所は本当に少ないのです。

そんな中、文京区に2015年にオープンしたのが「b-lab(ビーラボ)」。文京区教育センター(複合施設)の中にある、中高生向け施設です。ここには多くの中高生が集まり、みんな思い思いに好きなことをして過ごしています。

今回はこのb-labに潜入し、文京区からの業務委託を受け、施設を運営するNPO法人カタリバに話を伺ってきました。中高生たちは今、どんな居場所を求めているのでしょうか?

中高生たちの興味に目を向けた施設づくり

b-labは、教育資料室・教科書センターや児童発達支援センターなど、教育にかかわるさまざまな事業を行う文京区教育センターの中にある一施設。

b-lab施設内には、こんなものがありました。

  • 談話スペース
  • 音楽ができるスタジオ
  • ダンスができるホール
  • 勉強ができる研修室
  • 卓球などができる軽運動室
  • 屋外で運動ができるプレイヤード

談話スペースにはおしゃべりや勉強ができるフリーデスクや、パソコンやタブレットを操作できるスペースなども。

「児童館は設備やイベントも、小学生以下の小さい子ども向けが中心。中高生の居場所をつくる難しさがありますが、b-labは中高生たちがやりたいこと、興味を持つことに目を向けた施設づくりをしています」

と、b-lab館長を務めるカタリバの白田好彦さん。

クラスの友達と来ているという高校生たちは、「ここ以外にあまり集まれるところがないし、週3回くらいは来ている」と言います。彼らは談話室でスマホゲームを楽しんだ後、勉強道具を広げていました。

また、学校の友達とではなく一人で来ている生徒もたくさんおり、「ここは楽しいから毎日来ちゃう」と話してくれた高校生も。

学校では難しい、さまざまな挑戦を後押し

ダンスなどができるホールを覗くと、取材当日は段ボールがたくさん並んでいました。段ボールの中に入っていたのは、年2回発行されるフリーペーパー「Cha!Cha!Cha!」。これは中高生の活動を応援するフリーペーパーで、カタリバのスタッフたちやb-labに集う中高生たちが編集部員として活躍しています。

中学2年生からこの編集に携わり、今年で3年目だという高校生は、

「ここのスタッフに誘われて編集部に入った。〆切が迫ってきて夏休みは超大変だったけど、できあがると嬉しいし、達成感があります。将来はまだわからないけど、ちょっとだけ編集の仕事にも興味が出てきたかも」

と楽しそうに教えてくれました。

フリーペーパーは2万5千部印刷し、文京区の中学校・高校に配るのだそうです。

この日は、学校で編集スタッフ募集のチラシを見て興味を持ったという中学生も、初めてb-labを訪れていました。

また、フリースペースでは、高校生が大学生のスタッフから哲学のレクチャーを受けていました。

「哲学に興味を持ったのは、正直軽い気持ちで『かっこいいかな』って思ったから。でも話を聞いているうちにどんどん楽しくなって。学校の友達には『哲学に興味がある』とは言えないけれど、ここなら好きなことを追求できます」

哲学に興味があるとb-labスタッフに話をしたところ、大学で哲学を学んでいる学生を紹介してもらい、来るたびに話をしてもらっているのだと言います。

このように、スタッフたちは、中高生たちの興味を引き出したり、挑戦したい気持ちを後押ししたりする役割も果たしています。

「学校では“学校にいるときの顔”があって、自分を出せない生徒もいます。でもここは、大学生や大人のスタッフたちも間に入りながら、やりたいことを主体的にやれる場所。評価される場所ではないので、親や先生に話せないことをスタッフに相談したり、挑戦したいことを素直に言えたりするんです」(白田さん)

イベントや部活を通して仲間づくりも

この日は、17時30分から月に1度の「b-lab食堂」も開催されていました。

スタッフがつくる食事を、大きなテーブルを囲んでみんなで一緒に食べるというもので、10月のメニューはかぼちゃのグラタンに白菜とベーコンのスープ、てづくりパンに抹茶のムース。

時間が近付いてくると、抹茶のムースを切り分けたり、パンやスープをお皿に分けたりとお手伝いに中高生が集まります。

「食堂の日はついついここに来ちゃう」

「このゴハンをオヤツとして、家に帰ってからまた食べます!」

とみんな嬉しそうに話してくれました。

食事が始まると、食べながら生徒たちは順番に自己紹介も開始。

学校も学年も違う中高生たちが、こうしたイベントを通じて仲良くなることも多いそうです。

白田さんによれば、こうしたイベントは年間200回ほど開催しているのだとか。

b-lab内では部活もたくさんあると言いますが、ウクレレ部にいるという高校2年生に聞いてみると、

「部活といっても、きっちりした枠組みがあって先輩後輩の関係があるわけではなく、ライトな気持ちで“ちょっとウクレレやってみようか”というふうに始まることが多いです。だからゆるやかに続けられるし」

好きで入った部活でも、上下関係に悩んだり、他の部員とのちょっとしたすれ違いで居場所がなくなったりと、苦しい思いをする中高生もいますが、b-labではまた違った人間関係をつくることもできるため、安心できる子もいるのだと言います。

過ごし方が自由だからこそ、挑戦の余地が生まれる

b-labに集まる中高生たちは、みんな好きなことに生き生きと挑戦している姿が印象的でしたが、そのことを話すと、白田さんは、

「そういう子もいますね。でももちろん、何もやることがない、ただぼーっとしていたいという子もいていいんです。何もしないという自由もあるわけですから」

と、中高生たちが自然体でいられることが大切だと話してくれました。

「ここに来たらこれをするという決まりごとがないことに、意味があると思うんです。その余白の中から、何かにチャレンジしようという気持ちが生まれてくることもあるので」

b-labの閉館時間は21時(中学生は20時)。学校が終わってから夜まで、好きなことに思い切り打ち込んだり、ぼーっとしながら心を休ませたり、スタッフたちと楽しく話をしたり、そんなふうに自由に過ごせるサードプレイスとして、b-labは中高生の大切な場所になっていました。

今、足りていない中高生の居場所。彼らのニーズに目を向けた街づくりも、大切なのではないしょうか。

取材協力

NPO法人カタリバ

b-labを運営する認定NPO法人。社会に10代の居場所と出番をつくることを目指し、居場所づくりや新しい教育サービス、被災地の教育支援活動などを行う。

(文/大西桃子)

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。