学校に行けなくてもあなたが悪いわけじゃない『不登校ガール』園山千尋さんインタビュー

不登校

2020/04/27

ⒸVコミ/園山千尋

ある日、学校の階段をのぼる途中に足が動かなくなってしまった……。

俳優・漫画家である園山千尋さんは中学2年生から不登校になりました。

転校先のクラスで雰囲気にどう合わせたらよいか戸惑い、日に日にストレスを抱えていってしまったという園山さん。そのつらさを最初は親にも言い出せず、一人で抱え込んでしまっていたそうです。
そして、不登校生活が始まりました。

当時を振り返り、園山さんはこう言います。

「それまでは、自分が不登校になるなんて思ってもみませんでした」

不登校を経験した子や、今現在不登校という子の多くは、きっと同じように思っていたのではないでしょうか。

そんな園山さんの不登校体験を綴った漫画『不登校ガール 学校の階段がのぼれない』(以下『不登校ガール』)が漫画サイト「Vコミ」に掲載されると、多くの中高生たちから共感の声が上がりました。

園山さんは、なぜこの漫画を描くことになったのでしょうか。
そして、不登校の間にどんなことを感じ、どのように乗り越えたのでしょうか。

今回はインターネット通話を使ってお話しを聞かせていただきました。

園山千尋さん (俳優・漫画家)

私の不登校体験が、安心材料になれば……

――『不登校ガール』は、中高生の学校生活の息苦しさがリアルに描かれていて、不登校の子どもでなくても、また性別に関わらず「わかる!」という声が多いようですね。

園山さん: 多くの子が、似たような経験をしているのではないかと思います。
ハッキリとしたイジメがあるわけでも、誰が悪いというわけでもなく、学校の人間関係の中でどう立ち回ればいいのかわからなかったり、嫌なことを嫌と言えなかったりしてストレスを抱えている子は多いのではないでしょうか。

――この漫画を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

園山さん: 当時、漫画家になりたいと夢見て、出版社にネームをいろいろ持ち込んでいたんです。そんなある日、ネームを見てもらっている担当編集さんとお酒の席で話していたときに、中学生時代のことを聞かれたんですね。それまで不登校だった過去の話は封印していたので、いつもなら適当に答えていたはずなんですが、その日はお酒が入っていることもあって、ポロッと話してしまったんです。「私、まともに学校に行けていなくて……」と。
そうしたら、担当さんが「それを漫画にしてみるのも、ありなんじゃないかな」と言ってくれたんです。

そう言われて考えてみたら、今同じ思いをしている子もいるんじゃないかな、そういう子たちに何か伝えられるんじゃないかな、と思えてきたんです。当時は孤独を感じて苦しかったですが、同じような思いをしている子どもたちに寄り添うことができるんじゃないかな、と。

――描きながら、当時を思い出して苦しくなったりはしませんでしたか?

園山さん:  うーん、振り返ってみると「さすがにこれは理不尽だった」と思うことはいろいろありましたね。前提として「誰も悪くない」としていながらも、未だに腹が立つ子も(笑)。でも、そういう子にも私の知らない事情があるのかもしれないと、今は少し思えます

――あのとき、ああすればよかった、こうすればよかったと思うことも?

園山さん:  いえ、今思い出しても、そのとき何が正解だったのかはわかりません。人間関係って、正解がないじゃないですか。こうしたらいいという答えがないから、難しいわけです。それに、『不登校ガール』は自分の主観で描いているので、私にはああいうふうに見えていたけれど、他の子から見たらどうたったのかはわかりません。
周りからは、私が変わり者に見えていたのかもしれませんし。

――確かに、答えがあるなら苦しみませんね。読者からの反響にはどんなものがありましたか。

園山さん:  Twitterのダイレクトメッセージなどでは、「自分は不登校ではないけれど、友人関係が苦しい」という子たちも連絡してきてくれました。社会人で、中学生の私と同じような状況になり会社にたどりつけず苦しんでいるという方も。

学校や会社がつらくなったとき、今はネットでいろいろな情報を得ることができます。そこで自分の状況を把握することができますが、私が中学生の頃にはネットは誰でも自由に使えるものではなく、学校に行かなければ人とつながることもできず、孤独でした。
でも、今みたいにネットを通じて同じような境遇の人とつながったり、経験者の話を聞いたりできていれば、また違ったのではないかなと思うんです。だから、漫画を読んで「自分と同じ人がいる」ということが、安心材料のひとつになればいいなと思っています。

不登校の原因はうまく言葉にできなかった

――不登校になった理由は、転校先の学校で環境になじめなかったことですよね。

園山さん:  そうですね。私は小学生のときにも2回転校経験があって、そのときは大丈夫だったんです。だから、自分が不登校になるなんて考えてもいなくて、転校が決まったときもむしろ新しい友達ができるとワクワクしていました。
でも、中学生になると、思春期特有の人間関係の複雑さがありますよね。私が転校したのは中2の夏で、そのときには学校の人間関係はすでにできあがっていました。その中で、どう立ち振る舞えばいいのかわからずに、戸惑い、孤独を感じるようになってしまったんです。

――その中でも、「これがきっかけで不登校になった」という具体的な原因はあったんですか。

園山さん:  いえ、自分でも明確に原因はわかりませんでした。最初は、クラスメイトに漫画や絵を描くのが好きと言ったら「マニアックって言われるよ」と微妙な反応をされて、そのことが少し引っかかりました。そういうみんなの反応を気にして、波を立てないように、環境に馴染もうと必死だったんです。
ればみんなと仲良くなりたいですし、変なことを言って嫌われたくない。そういう気持ちで過ごしていくうちに、精神的な負担がどんどん大きくなってしまったんだと思います。自分ではうまく折り合いをつけていたつもりだったけれど、気がついたら体が拒否反応を示していたという。

ⒸVコミ/園山千尋

――ご家族にはすぐに打ち明けられなかったのでしょうか。

園山さん:  はい。姉は楽しそうに高校生活を送っているようだったので相談できませんでしたし、母が鬱病だったこともあって、負担をかけたくないと思って親にも言えませんでした。それに、イジメを受けているわけでもなく、何がつらいとハッキリ説明がつかないので、打ち明けようにも打ち明けられなかったんです。自分でも何が起こっているのかわからず、体が動かなくなるなんてことも初めてで。ただ、学校に行けなくなったことが恥ずかしいという思いや、孤独感だけがありました。

――それは、どうやって乗り越えられたのでしょうか?

園山さん:  乗り越えたとは思っていません。中学の同級生が誰も通わない高校に進学して、環境が変わったことで、高校には登校できるようになりました。ただ、不登校になって苦しんでいるときに、クラスメイトの反応を気にしたり、嫌われないように気を遣ったりすることに対して「もう全部どうでもいい」と思ったときには、気がラクになりましたね。自分と周りを切り離し、卒業したらもう会うこともないと思って「どうでもいい」と開き直ることは、気持ちをラクにするポイントかもしれませんね。

今苦しんでいるあなた、そしてその周りの大人たちへ

――不登校中、何が一番つらかったですか。

園山さん:  私は、「学校に行けないこと=恥ずかしいこと」だと思ってしまっていて。普通の人が普通にできていることができない自分が、すごく嫌でした。勉強も遅れてしまい、進学も不安で、人より自分が劣っていると思ってしまったんです。
そんなふうに、不登校のときには自分が悪いと思ってしまう人が多いんじゃないかなと思います。でも、環境を変え、周りの人が変わると、自分の立ち位置も変わって、ラクになるんですよね。
と言っても、大人なら会社が合わなければ転職もできますが、学校はそう簡単に変えることはできません。逃げ道がふさがれているので、環境を変えることは難しいですよね。それでも、環境が変われば「自分は悪くなかった」とちゃんと思えるんだということは、今つらい思いをしている子たちに知っておいてほしいです。

――不登校のとき、親や周りの大人に言われてしんどかったのはどんな言葉ですか

園山さん:  私は「学校に行きなさい」と言われるのが一番苦しかったですね。だから、周りの大人たちは言わないであげてほしいです。つらくても学校に行けと言われると、どんどん自分が否定されたような気持ちになってしまうんです。

それから、ムリヤリ理由を聞き出そうとするのも、つらいです。大人に打ち明けるまでに、子どもは散々一人で悩んで悩んで、やっと打ち明けているんですよね。なんて説明したらいいのか、大人に言って解決することなのか、考えて話しているので、ムリヤリ聞き出して追い詰めることはしてほしくないです。
体と同じように心も弱ることがあるので、そのときにはさらに弱らせるのではなく、休ませてもらえたらいいかなと思います。

――さきほどもおっしゃっていましたが、親に負担をかけたくないという気持ちも、子どもにはありますよね。

園山さん:  そうなんです。それでも限界が来てしまって、学校に行けなくなってしまったのなら、そっとしておいてほしいですね。私の場合は、親が次第に「買い物に行く?」「今日は映画に行かない?」と、不登校を日常として受け入れてくれたときに、救われた気持ちになりました。

――今は学校に行かなくてもネットなどで勉強もできますし、いろいろな選択肢がある時代ですから、親も焦る必要はありませんよね。
園山さんご自身の経験から、今学校に行けずに苦しい思いをしている子、学校の人間関係が負担になっている子にアドバイスはありますか。

園山さん:  不登校になったとき、ムリヤリ解決しようと考える必要はありません。合わない環境、合わない人に「どうやったら合わせられるか」と無理して考えても、あまり意味はないと思うんです。人生は、今いる環境がすべてではないですから。

大人だって、会社の中に嫌いな上司がいたり、折り合いの悪い部下がいたりしますが、子どもより少し経験がある分、うまく距離感を保って、最低限の接触で立ち回っているだけ。ムリヤリ「仲良くしなくちゃ」なんて思う必要はありません。つらかったら、環境のせいにして逃げてもいいと思うんです。

もし好きなものがあるなら、不登校の間は気力があればそれに没頭するのもいいと思います。ゲームでも漫画でも音楽でも何でも。好きなことをやっているうちに、心に少し余裕が出てくることもあります。実際、私も漫画が好きで、それに救われましたし、漫画家や役者になりたいという目標も持てました。だから、好きなことがある人は、それを大事にしてください。

そして、とにかく生きていてほしいです。

今のことでいっぱいいっぱいかもしれませんが、未来がずっと今と同じ状況ということはないので。どうか、自分を悪者にせず、大切にしていてください。

園山さんが「通信制高校ナビ」読者に向けてイラストを描いてくださいました!

取材協力

園山千尋

俳優、漫画家。1990年、北海道生まれ。高校卒業後、上京して活動。俳優として福島中央テレビ『絶景探偵。』、映画『モダン・ラブ』などに出演。自身の不登校経験を描いた『不登校ガール 学校の階段がのぼれない』がコミック配信サービスアプリ「Vコミ」で連載中。

ⒸVコミ/園山千尋

<取材・文/大西桃子 >

この記事を書いたのは

大西桃子

ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。