子どもの「朝起きられない」は怠けじゃない! 起立性調節障害や生活習慣が原因かも?

専門家に聞く

2019/10/07

朝が苦手で、学校に遅刻してしまう。出かけるのがギリギリになってしまい、午前中の授業もウトウト……。親や先生に「怠けずにちゃんとしなさい!」と言われても、どうしても朝には不調を感じてしまう、そんな子どもは少なくありません。

親もそんな様子を見て、「うちの子はどうして起きられないんだろう」「自分の育て方が悪いのかな」と悩んでしまうこと、ありますよね。

でも中には、朝の不調のせいで「自分は怠け者なのかな」「これっておかしいのかな」と不安になったり、自己肯定感が低くなったりして、不登校や引きこもりがちになってしまう子も。

でも実は「朝起きられない」は、怠けぐせが理由ではないんです。

今回は、そんな「朝起きられない」理由や、不調を和らげる方法を医師の神三矢先生に伺いました。

朝の不調の原因は「睡眠の質」悪化

子どもだけでなく大人にも当てはまることですが、朝なかなか起きられなかったり、起床時に不調を感じたりするのは、「睡眠の質が悪い」ということが最大の原因だと神先生は話します。

「深い睡眠をしっかりとって、心身の疲れを癒し、体をきちんとリセットできていれば、朝はすっきり目覚めることができます。でも、現代の生活ではその睡眠の質を落としてしまうような要素が多い。これを一度見直す必要があります」

子供の睡眠の質悪化につながる要因とは?

神先生によれば、たとえばこんなことが睡眠の質を落としてしまう要因になっているようです。

夕食をとる時間が遅い

最近では共働きやひとり親の家庭も多く、食事の時間がどうしても遅くなってしまうことも。
人が食べ物を消化するには3時間かかりますが、眠るまでに消化し終わっていないと、寝ている間にも胃腸が消化活動のために動くことになり、快眠を妨げてしまいます。

朝食をとらない

人は毎日、起きてから朝日を浴び、食事をとることで体内時計をリセットします。でも、朝食をしっかりとらないとこの体内時計がリセットできず、体のリズムが崩れてしまいます。
ここから自律神経の調整がうまくいかなくなり、夜の寝付きが悪くなったり、朝に眠気がとれなかったりということが起こります。

寝る前にスマホやPCを見てしまう

質のよい睡眠をとるには、体をリラックスさせる「副交感神経」が働いていることが大切です。しかし、スマホやPC、ゲーム画面などから出されるブルーライトは、体をアクティブにするための「交感神経」を刺激してしまいます。

この交感神経と副交感神経をあわせて自律神経と言いますが、人は毎日、活動する時間には交感神経が、休む時間や眠る時間には副交感神経が働くというように、自律神経のバランスをとって生活しています。

でも、眠る時間に交感神経が優位になっていると、快眠が妨げられてしまうのです。

SNSによるコミュニケーションのプレッシャー

今の子どもたちは、SNSによって学校の外でも、いつどこにいても友達とつながりを持つことができます。
そのことが逆に「早く返事をしないと嫌われてしまう」「友達から連絡が来ているかも」とプレッシャーになってしまい、夜いつまでもスマホを見たり、連絡が来るのではないかとそわそわしたりして、交感神経を活発にさせてしまうことも。

他にも、受験や試験でいい点をとらなければいけないというプレッシャーのもと、遅くまで勉強していることにより睡眠の質が悪くなってしまうこともあるそうです。

不調が強い場合は、医師の診察も必要

朝の不調は、生活習慣が原因ではなく診察が必要な疾患である場合もあります。それが「起立性調節障害」です。

「今は、小学生の5%、中学生の10%が罹患していると言われています。少しずつ知られてきている病気ですが、起立性調節障害は、主に血圧のコントロールがうまくいかなくなることにより、朝、頭痛や立ちくらみがしたり、気分が悪くなってしまったりする症状が起こります。
このように、生活に支障をきたすような状態であれば、医師に診察してもらうことをおすすめします」

起立性調節障害は、決して本人が夜更かししたり、怠けていたりすることが原因ではなく、きちんと治療をすれば治るとのこと。専門の医師にチェックしてもらうことは大切ですね。

疾患に気付くためには、親子のコミュニケーションも大切

親から自立していこうと考える思春期の子どもたちは、言葉できちんと親に不調を伝えることを特に避けてしまいがちです。

「言葉での表現力が不得意な子もいるので、どういうふうにつらいのかを子どもが話しやすいように、親子間で普段からしっかりコミュニケーションをとっておくことは重要です」と神先生は言います。

スッキリ目覚めるためには何をすればいい?

どんなことに気を付ければ睡眠の質を上げ、朝の不調を和らげられるのでしょうか。改善ポイントをいくつか聞いてみました。

朝:起きたらカーテンを開けて朝日を浴び、朝食をとる

朝、日光を浴びることと、朝食をとることは、体内時計をリセットするのにとても重要です。

昼:体を動かす

激しい運動でなくても、昼間に体を動かすことは血流よくするために大切です。
寝る前にはストレッチなどゆっくりした動きで心身をリラックスさせ、副交感神経を優位にすることも眠りにつきやすくなるポイントです。

夜:ぬるめのお風呂に入る

夜の入浴は、熱いお湯につかってしまうと交感神経が刺激されてしまうので、お風呂はぬるめにして心身をリラックスさせましょう。
人は脳の温度が下がってくるときに眠りに入りやすくなるため、入浴であたたまった体がクールダウンするタイミングで布団に入るのがベストです。

また、温浴により血流をよくすることも、質のよい睡眠につながります。

夜: 寝る1時間前から照明を暗めにする

夜になって目に入る光の量が減ってくると、人の体では眠りを促すメラトニンが分泌されます。メラトニンは、よい睡眠をとるためのホルモンなので、この分泌を促すために就寝1時間前くらいから照明を落とすのがおすすめです。

その他:スマホやPCを使う時間を決める

夜眠る前にブルーライトによって交感神経を刺激してしまわないためにも、いつまでもSNSが気になって夜更かししてしまうのを防ぐためにも、スマホやPCなどは「何時まで」と家庭の中でルールを決めておくとよいでしょう。

そして親御さんにぜひやって頂きたいのは、「起きられない子どもを叱るばかりではなく、家庭全体で生活を見直すこと」だと神先生。ぜひ親子で今の生活をチェックして、改善できる部分から少しずつ実践していきましょう。

取材協力

神 三矢(芦屋JINクリニック院長)

奈良県立医科大学卒、精神保健指定医師。美容皮膚科・美容内科を中心に、心療内科、精神科も専門として携わる。医師、文化人としてさまざまなメディアでも活躍。

(取材・文/大西桃子)

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。