eスポーツでプロになるにはどうしたらいいの? 現役プロとeスポーツを学べる学校に聞いてみた

生徒・先生の声

通信制高校

2022/08/03

ゲームと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。

「どっぷり浸かって依存してしまったらと思うと心配」など、マイナスな印象を持っている人もいるかもしれません。

しかし、ゲームは現在「eスポーツ」として競技化され、eスポーツ選手は、男子中学生の「将来なりたい職業」2位にもランクインしています(ソニー生命保険、2021年調べ)。トッププレイヤーでは日本国内でも億単位、世界大会では40億円以上もの賞金を得ることも。

近年はTVをはじめとしたメディアでもeスポーツが取り扱われる機会が増えており、注目の分野と言えます。

そんなeスポーツに着目し、eスポーツの部活動や専門のコースを設ける学校も出てきています。その傾向が顕著なのが通信制高校です。

そこで今回は、高校では日本で初めてeスポーツコースを開講した通信制高校・ルネサンス高校グループのルネサンス高等学校と、通信制高校在学時からプロになったSpade選手にインタビューを実施。

認知度が高まるeスポーツですが、プロ選手とはどのようなものなのかを聞いてみました。

注目が集まるeスポーツが学べる学校 ルネサンス高等学校の場合は?

●お話を伺った人

内山聖也先生

ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス eスポーツ担当

―― はじめに、ルネサンス高等学校(以降 ルネ高)でeスポーツコースを設立した経緯についてお聞かせください。

もともとは「プロのeスポーツ選手を育成する!」というよりも、ゲームを通して不登校などの事情を抱える生徒さんの生活習慣を改善するというのが目的でした。開講から年月が経過した2022年現在は、eスポーツの認知度がより向上し、プロの選手になりたいという生徒が積極的に入学してくれるようになってきています。

―― 授業では、どのようなことを教えているんですか?

うちは通学がメインなので、実際に大会で好成績を修めている各講師陣から、直接指導を受けることができます。また、eスポーツにおいて重要なコミュニケーションスキルも、生徒同士がリアルの場で育んでいけます。

また、コース内には「教養」という多種多様な教育カリキュラムを用意しているんですが、こちらもかなり人気ですね。

―― 「教養」では何を学ぶのでしょうか?

たとえばプログラミングの授業をはじめ、スポーツメンタルの授業などもあります。ここでは、オリンピック選手をサポートしているメンタルトレーナーを講師に招いて授業を行っています。また、栄養学を学ぶ授業ではeスポーツで重要となる、目をはじめとした身体の健康管理についても学ぶなど、本当にいろいろですね。

――  ゲームだけを学び続けるわけではないんですね。では、コースの卒業生の進路は、実際どのようになっていますか?

昨年卒業した生徒の95%は進学を選んでいます。プロのeスポーツ選手になるということは、一般的なスポーツ選手になるのと同様に険しい壁があるのが現状です。トッププレイヤーとなるとさらに難しい。

だからこそこのコースでは、プロ選手の育成を目的とせず、「自分のやりたいことをeスポーツを通じて見つけてもらう」ことをミッションととらえています。

―― 高校野球に打ち込んだ子が全員プロ野球選手にはならないのと同じですね。

スポーツ業界は、プロの選手だけで成り立っているわけではありませんよね。eスポーツも同じで、コーチやマネージャーなどのチーム関係者やイベント事業会社、ゲームメーカー、ゲームメディア関連など、さまざまな人がいて成立しています。だからこそ、高校入学段階ではイメージがつかみづらい多様な進路のあり方について、カリキュラムやカウンセリングを通して提示しています。

―― eスポーツをきっかけに社会を見る視野や、進路の選択肢が広がっていくわけですね。

はい。実際に生徒たちを見ていると、コースでの学びを通じて人間的な成長を遂げているのを感じます。

プロを目指す生徒さんから見た通信制高校・ルネ高の魅力は?

●お話を伺った人

Emaさん

ルネサンス高校 eスポーツコース 2年生

―― まず、ルネ高のeスポーツコースを選んだ理由をお聞かせください。

僕がプレイしている「VALORANT」というゲームを教えているのは、ルネ高だけだったんです。それでオープンキャンパスに参加してみて、入学を決めました。オープンキャンパスでは、パソコンがいっぱい並んでいて学校じゃないように感じましたね。

―― 実際入学してみて、学校生活はいかがですか?

入学してからは友達がたくさんできたのが嬉しかったです。共通のゲームが好きな生徒が多く、すぐに仲良くなることができました。先生たちとも一緒にランチに行くくらい仲良くしています。プレイに関するフィードバックもしっかりしていただけるので、助かっています。

―― 通信制高校を選ぶことについて不安はありませんでしたか?

最初は「1人で勉強できるのかな?」という不安や、通学が少なくなると家から出なくなって孤独に感じるんじゃないかという不安もありました。

でも実際は周りと一緒に励まし合って取り組める環境だったので、大丈夫でしたね。通学は週2回ですが、家で練習する時間も多く取れるので僕にはちょうど良い環境だと思います。

―― 学校での学びは、eスポーツ選手という夢のために役に立っていると感じますか?

そうですね。授業の中でプロ選手の方と直接お話をする機会があるんですが、経験談を生で聞けたのはとても良かったです。プロになることのメリットとデメリットについてもきちんと話してくれて、すごく参考になりました。

あとは、通信制は時間を自由に使えるので、開催地によって時間が不規則な世界大会でも、リアルタイムでチェックして勉強できるのもメリットだと思います。

通信制高校に通いながら18歳でプロ選手に!Spade選手にも直撃!

最後に、現在eスポーツのプロ選手として活躍する方にもお話を伺いました。

●お話を伺った人

Spade選手

DetonatioN Gaming PUBG MOBILE部門
「AQUOS DetonatioN Violet(ADV)」所属

通信制高校に通いながら18歳でトライアウトを経て、チーム最年少のプロ選手に。今、eスポーツ業界から最も注目を浴びている選手の1人。 ※

PUBG MOBILEとは多数のプレイヤーが、フィールド場に落ちている武器やアイテムを使って最後の1人(1チーム)になるまで殺しあうサバイバルゲームのスマートフォン版。

―― まず、プロ選手を目指すきっかけは何だったのでしょう。

もともとアマチュアとしてPUBG MOBILEをプレイしていて、良い成績を出していたんです。そこで実際にプロの世界でも結果を残してみたいな、と思ってトライアウトを受けました。自分の実力をより向上させたいと思ってプロを目指すことにしたんです。

―― Spade選手は通信制高校へ通っていたとのことですが、通信制を選んだ理由は何だったのでしょう。

最初は全日制の高校に通っていたのですが、トラブルや病気が重なって通えなくなってしまいました。でも勉強はしておきたい、このままじゃ前に進めないという思いがあり、通信制に転入する決断をしたんです。最初は自分で学校探しをして、その後親とも相談をして、一緒に情報を集めて入りたい学校を決めました。

―― eスポーツのコースのある学校については考えていませんでしたか?

当時は特に考えてはいませんでしたね。むしろ通信制高校に入ったことで、時間も心の余裕もできて、もともと得意だったゲームの能力をもっと伸ばしてみたいと考えるようになったんです。

通信制は自分でいろいろ管理しなくてはいけないのが少し大変ですが、自分のペースで勉強できるところ、やりたいことと勉強が両立できるという環境が良かったと思います。転入した頃に、ちょうどPUBG MOBILEでも大きな大会が行われるようになって、「これを期に目指そう!」と思いました。

―― 通信制高校に行くことや、プロ選手としての活動について、親御さんはどのような反応だったのでしょうか。

高校について親は、最初は将来を考えたら全日制のほうがいいと言っていました。でも僕自身が決断して「通信制高校に行きたい」と伝えると、一緒に考えたり調べたりしてくれて、味方になってくれたことが嬉しかったです。プロになる前もその後も、親は僕のやりたいことを応援してくれていますね。

親だからこそ子どもの将来が不安というのは当たり前だと思うし、その気持ちは子どもにとって嬉しいことでもありますが、中には押し付け気味になってしまう人もいるのではないかと思うんです。

だけど、提案やアドバイスはありがたいですが、子ども本人にしか分からないこともたくさんあるはずです。本心をよく聞いて、将来の選択を決める手伝いをしてくれたらいいなと思います。そういう意味で、僕は親には本当に感謝しています。

―― どのような道に進むにしても、保護者の応援があるかないかでは、困難さが異なってきますよね。ところで、Spade選手がプロになることができたポイントは何だったのでしょうか。

トライアウトに関しては、アマチュア時代にもプロで活動している人たちと渡り合える実力があったので、自信はありました。まだ大会も少ない時期だったので、運も良かったと思っています。あとSNSが荒れていなかったこととか……(笑)。

―― SNSも関係あるんですか?

そうだと思います。僕は所属前からSNSやゲーム配信でプレイ動画を配信していたんですが、現在の所属チームメンバーから存在を知ってもらっていたようですね。その投稿を見ていたので、所属の推薦につながったと後々メンバーから聞きました。

―― プロになってから、eスポーツに対しての考え方に変化はありましたか?

単に「ゲームが好き」、という感覚とは変わりました。あくまで仕事なので、「楽しい!」よりも「勝ちたい!」という気持ちが上回るようになったんです。技術面だけではプロの世界ではやっていけないので、アマチュア時代よりもプレイ自体の時間は減って、戦略面での座学の時間も増えましたね。

また、今は少しでも大きなタイトルを狙って、ゲームの知名度を上げることもプロの役目だと考えています。

―― プロは厳しい世界だと思いますが、チームメイトとの関係はいかがでしょうか?

想像よりも殺伐としていなくて安心しました(笑)。遊びではないので、当然締めるところは締めなくてはいけませんが、メンバーとはオフのときに一緒に遊ぶこともあります。仕事だけど仲の良い友達同士という関係性でいられるのは、当初のイメージと違っていました。

―― もともと人間関係が得意でなかったとのことですが、プロになってからはいかがですか?

最初は大変でした。伝えるべきことが言えず、チームに迷惑をかけることもありました。ただ日が経つごとに段々と自分の思っていることを言えるようになってきたので、その面では大きく成長できたなと実感しています。

―― eスポーツ選手を目指している中高生に、メッセージをお願いできますか。

日本ではまだeスポーツは発展途上なので、選手を目指すのなら今はチャンスだと思います。ただ、人一倍の努力や覚悟は必要なのには違いありません。苦しい状況も多く、自由な時間も当然減りますし、大会前は生活習慣にも気をつけなくてはなりません。

好きだからこそ頑張れるけれど、人によっては好きなゲームを「もうやりたくない」と思うこともあり得ると思います。そこを踏まえて、保護者や周囲の人に相談して、プロの世界について調べてみることが必要だと思います。

―― eスポーツ選手に興味を持ち、通信制高校を検討する生徒も増えていますが、アドバイスはありますか。

もし夢があるのなら、「やりたいことをやるためにどうしたらいいか」を考えてみて、今後の行動を選ぶことが大事なのではないでしょうか。通信制高校は自由な時間ができる分、自分のペースで行動することができます。夢を叶えるために何が必要かを逆算して考えた上で、保護者にも相談してみてください。

伝えること、言語化することは親子間でもとても大切なことだと思います。

―― ありがとうございました!

<取材・文/中島理>

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この記事を書いたのは

中島理

1981年、北海道生まれ。バーテンダー・会社員を経てライターへ転身。ムックを中心に編集や執筆に携わる。引きこもり経験を持ち、若年層の進学・就労にまつわる心の問題に関心。