1.3億人が熱狂するeスポーツ界で高校生プロが活躍! 彼らが熱中できた理由

生徒・先生の声

通信制高校

2019/10/31

今、大きな注目を浴びているeスポーツ。コンピュータゲームをスポーツ競技としてとらえ、世界各国で大小さまざまな大会が開かれるようになってきています。
eスポーツの観戦者は世界で約3億8000万人いるといわれており、高額な賞金のかかった大会も次々に開かれるなど、世界中で大盛り上がり。なんと、年収1億円を超えるプロ選手もいるのだとか。

ゲームというと、ひと昔前なら「ただの遊び」とされて、子どもが夢中になりすぎることに心配する親もいましたが(今もそうかもしれませんね)、eスポーツはもはやサッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツと同じように、極めれば将来の仕事にもつながるような夢のある「競技」になっています。

今回は、そんなeスポーツに部活でも取り組んでおり、プロも輩出する学校法人角川ドワンゴ学園運営の通信制高校「N高等学校」(以下、N高)を訪ね、部員や顧問の先生にお話を伺ってきました。

eスポーツ部で青春を実感、自信にもつながった

eスポーツが成長の糧になったという「まりも」さん

まずは、eスポーツ部に所属する「まりも」さんにインタビュー。彼は2019年8月、“eスポーツの甲子園”とも言われる「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2019」大会のLoL(リーグ・オブ・レジェンド)部門で優勝したチームの一員です。彼は最初、eスポーツ部とは別の「LoL同好会」というコミュニティでプレイしていました。

「僕は中1の終わり頃から、学校に通わなくなったんです。学校に行かなくなったらゲームしかやることがなくなって、ずっとパソコンでゲームをしていました。通学するということが面倒くさくなって、いろんな通信制高校を調べていたときに、N高はネットの学習を中心として高卒資格がもらえると書いてあったのが目につきました。入学とともにLoL同好会に入り、チームを作って大会に出場しました。

※LoL同好会は、N高eスポーツ部がサポートしているゲームタイトル「LoL」について話したり一緒にプレイするメンバーを募るLoL専門チャンネルのことを指します。

中学時代から熱中していたLoLでしたが、同好会での活動や大会出場を経て、「まりも」さんはさらに努力するようになったそうです。

「1日9時間ほどプレイしていました。LoLは1試合の時間が長くて、それで10試合ぐらい。さらに最初の大会の後には、校外のアマチュアチームに加入していろいろ教えてもらい、そこで得た知識をさらに同好会のチームにフィードバックしていきました。『勝つために何が必要か』がハッキリしたのは大きかったです」

前述の大会では、前年に敗れた岡山の高校にリベンジも果たして優勝。「立派な青春でした」と振り返ります。

「それまで青春と感じられるものがあまり身近になくて、あの大会が一番思い出に残った青春ですね。一戦目からみんな不安がっていて、僕は『勝てる勝てる』って言ってたんですけど、勝ったらみんな泣き出していました。それぐらい全力で取り組んでましたね」

大きな成績を残すまでの過程で、「まりも」さんは自分の成長を実感できたと言います。

「それまでは“ただゲームをする人”というだけの感じでしたが、今回初めてチームのリーダーになって、人をまとめることの苦労がわかりました。そういう経験を経て成長できたと思いますし、しっかり練習をして勝ったという一連の流れが自信につながりました」

また、試合に参加する中でご家族の反応も大きく変わってきたそう。

「昔は『ゲームはほどほどにね』という感じでしたが、何百という学校が出場した大会を勝ち抜いたことで、eスポーツのすごさに初めて気付いてもらえました。今は家族も応援に来てくれていて、祖母は『あんなすごいことをしてるなんて知らなかった』と言ってくれました。

今は特に父がすごく協力してくれています。父は僕の後からLoLを始めたんですが、今では他校の選手のデータをまとめてくれたりしているほどです。プロゲーマーになるために高校での実績をプロチームに持ち込もうと、親と話しています」

学校も活躍したい生徒たちをバックアップ

このように高校生たちに自信を与え、成長にもつながっているeスポーツですが、N高では学校側も活動のサポートに力を入れています。

eスポーツ部(https://nnn.ed.jp/club/esports/)を運営しているコミュニティ開発部の金堂宏昭さんによれば、eスポーツ部は2018年10月、生徒たちのニーズが高まったことで開設されたとのこと。

N高 eスポーツ部 顧問の金堂さん

「開校時からいくつか立ち上がったネット部活の中には、ウイニングイレブンをやる『サッカー部』、格闘ゲームをやる『格闘部』などがありました。その後eスポーツが盛り上がってきて、生徒へのアンケートでももっとゲームのタイトルも増やしてほしいという声が増えてきたため、前述の2つを統合してさらに拡大する形で、『eスポーツ部』が立ち上がったんです」

学校側が関わる正式な活動は、主に2つ。ひとつは週1回、オンラインで集まって行われる「部活ホームルーム」で、ここでは大会についての告知やそれに出場するチーム編成のマッチングをしたり、校内大会のルールについてみんなで話し合ったりします。ときには教職員も交えてゲーム大会をすることもあるそうです。

もうひとつは大会に関することです。学校が指定したいくつかの大きな大会については、出場者を全生徒から募り、学校側で出場申し込みを行います。そういった大会では、勝ち進むために学校がプロゲーマーなどを招いて指導をしてもらうこともあります。

それ以外では、部員たちは自分たちでゲームタイトルごとのコミュニティを作り、随時自主的に活動を行っています。N高では「Slack」というアプリケーションを使って相互連絡を管理していますが、コミュニティごとのチャンネルを自由に立ち上げることができます。顧問はこれらのコミュニティ内のコミュニケーションを促す役割も果たしているそうです。

N高eスポーツ部のホームページ

アジア大会で優勝、プロゲーマーになった高校生も

そうした活動の中で、N高はアジア競技大会eスポーツ部門で優勝してプロゲーマーになった生徒を輩出したり、高校eスポーツの全日本大会で優勝したりと、確実に実績をあげています。短期間でこうした成績を残せている理由は何なのでしょうか。

「学校側が練習の土壌を作ったとか、実力のある生徒同士がつながるようにできたというプラットフォーム面の効果もありますが、それは2割ぐらい。8割は生徒の実力によるものです。N高の特徴として、『好きなことを好きなだけできる』ということがあります。生徒たちは圧倒的に時間があるので、その中で自主的にどんどんやっていった結果ですね」(金堂さん)

大会優勝などの実績は学校の単位にはなりませんが、推薦入試などの調査書には書かれることになります。金堂さんによれば、「まだ大学側からするとピンと来ないかもしれませんが、そのプロセスを生徒が説明できれば問題ないと認識しています。『2000人が参加する大会で3位に入ったと言えれば、すごさが伝わるんだよ』という指導はしています」とのことです。

実際にN高の部活からプロのプレイヤーとして飛び出した選手の声も聞いてみましょう。レバ選手は、2018年9月に『第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ』で優勝し、現在はプロゲーマーとして活躍しています。彼はeスポーツ部の前身である「サッカー部」で活動していました。

DetonatioN Gaming所属 プロeスポーツプレーヤーのレバ選手

「もともと全日制の学校に通っていたんですが、そこが合わなくて通信制高校を探していたときに、N高にはオンラインのサッカー部があるということを親から聞かされたことがひとつのきっかけでした。
僕が入った頃のサッカー部は月に1回、特別顧問の秋田豊さん(サッカー元日本代表)にプレイを見てもらったり、サッカーの話をさせてもらうのが主な活動でしたが、なかなか体験できることじゃないので、うれしかったですね。秋田さんの指導でプレイの幅が広がり、実力も伸びました。

N高に入っていなければ、今の自分はありません。プロになるなんて想像もしていなかったし、そのきっかけとなったアジア競技大会日本代表決定戦に勝てたときも、自分の人生が変わった瞬間でした。将来はどうしようと考えていた中で結果を残せたことからこそ、今、プロとしてやれています」

eスポーツは好きなことだから頑張れた

eスポーツ部顧問の金堂さんも、こうした生徒たちの成長を間近で見て実感しています。その上で他の生徒、これから入ってくる“未来の部員”に対して、こんな言葉をくださいました。

「行動してほしいですね。行動することで気付くことは多いですから。『何かやってくれないかな』という受け身ではなく、練習でも大会を見に行くでも、何であっても行動するのは楽しいものです。それができる彼らが、うらやましいとすら思いますね」

実際に現在プロとして活躍するレバ選手、eスポーツ部の部員である「まりも」さんも、「eスポーツは熱中できる時間を作ることができたし、好きなことだから頑張れた。だから進路に悩んでいる人も好きなことをとことんやってほしい」と話します。

大切なのは、好きなことを見つけ熱中すること。自分の時間を生かせる通信制高校は、それに適した環境だということが、彼らの言葉から伝わってきます。

<取材・文/高崎計三 >

取材協力

この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。