2025/01/10

通信制サポート校スタッフ座談会! 合う子・合わない子のリアルは?

生徒・先生の声 

高校生の12人に1人が通信制高校に通っている今。高校進学の際、学力に不安がある生徒でも入学試験のハードルが比較的低いことや、登校に不安を感じる生徒も自分のペースで通えることなどから、年々通信制高校を選択する生徒が増えています。学校の方針やカリキュラムも多様化し、自分のやりたいことを自分のペースで学べる、魅力的な通信制高校も多数あります。

ですが、実際に通ってみると「合わなかった」というケースはないのでしょうか? 入ってから苦労する点があるとしたら、どんなことが挙げられるのでしょうか?
今回は、通信制高校に通う生徒たちの勉強や日常生活をサポートする「サポート校」に勤めている2人が匿名で座談会。生徒たちと関わる中で感じた通信制高校のリアルを聞いてみました。

連携する高校の特徴によってサポート校の雰囲気にも違いが

—— 今日はよろしくお願いします。まずお2人が勤めるサポート校について、どんな雰囲気かそれぞれ教えていただけますか。

小澤さん(仮名):私のところは大学等への進学を比較的重視した通信制高校のサポート校なので、学習支援がメインとなります。学習するスペースでマンツーマンで指導を受けたり、自習室で勉強したりして過ごす生徒が多いですね。とはいえ、自習室では友達同士でにぎやかに話している生徒たちもいますよ。

谷口さん(仮名):私が勤務しているサポート校は、学習メインというより、居場所として使っている生徒が多いです。学校生活の代わりにここで過ごしている、といった生徒が多いかもしれません。連携している通信制高校は、不登校を経験した生徒も多く、自分のペースで学びたいと考えている子が多いですね。

—— 同じサポート校でも、雰囲気が違うようですね。小澤さんのサポート校は塾に近いような気がしますし、谷口さんのところはフリースクール寄りですね。

小澤さん:どんな通信制高校と連携しているかによっても、違いが出るのかもしれませんね。当校ではイラスト部やゲーム部などの部活動も行われていて、大学のAO入試の際の「ガクチカ(学生時代、力を入れたこと)」に部活のことを書く生徒も多いです。部活のイベントがサポート校内で開かれることもあります。

谷口さん:学校生活をサポート校で体験している感じですよね。こちらは小澤さんのところよりはのんびりした雰囲気だと思います。

—— サポート校の中では、どのようなお仕事をされているんですか?

小澤さん:私は学習支援をメインに、担当している生徒のレポート提出などのスケジュール管理などもサポートしています。「この生徒がまだレポート提出をしていませんが、大丈夫ですか?」と本校からこちらに連絡があることもしばしばです。

谷口さん:レポート提出やスクーリングのスケジュール管理もありますし、授業をすることもあります。サポート校での授業は高校の単位にはなりませんが、たとえば「数Ⅰのこの単元」というように単元ごとに授業があり、受けたい生徒が受けられるようになっています。

小澤さん:通信制高校は基本的に自学自習なので、わからない単元にぶつかると、教えてくれる人がいないとわからないままになってしまうことが多いですよね。サポート校がそこをカバーしている感じです。

—— それだと、サポート校ありきになってしまいませんか?

谷口さん:学校によると思いますよ。通信制高校でも勉強のサポートに手厚い学校もあるでしょうし、今は毎日授業のある通信制高校もあります。ただ、一般的には通信制高校は自分でスケジュール管理をして、自分で勉強を進めていくところなので、自己管理に慣れていない生徒がサポート校に通うことが多いのだと思います。もちろん、サポート校に通わず自己管理できる生徒もいます。

—— 自分でどこまで管理できるかを考えて、学校を選ぶことも大切ですね。

サポート校では生徒のさまざまな困難に対応

—— お2人が見ている生徒さんの中で、重点的なサポートの必要性を感じる人はいますか?

谷口さん:レポート提出の日程管理が苦手な生徒が結構多いんです。毎日通学するわけではないので、クラスメイトと「そろそろ提出だけどやった?」といった話をすることがないのも一因かもしれません。提出期限に間に合わずに退学になってしまう生徒もいます。

小澤さん:基本的には1人で進めないといけないので、今すべきことがわからなくなってしまう生徒も多いですよね。期限に間に合わせようとしても、自力で学習するのが難しく、遅れてしまったり。

谷口さん:出題されている問題が教科書のどこに書かれているかを見つけるのも難しい、という生徒もいて、そうなると学習サポートを手厚くしなくてはいけません。

—— 学習面で困難を抱える生徒さんが多いのですね。

小澤さん:あとはメンタル面もあります。私たちのところには、全日制の進学校から通信制高校に転入した生徒もよく来るんです。転入したばかりの頃は、前の学校に通えなかったことで心に傷を負っていたり、「どうしてこんなところに来てしまったんだろう」と通信制高校に対してネガティブなイメージを持っていたりする生徒も多く、勉強の前にまずは安心して通ってもらえるように配慮しています。

谷口さん:集団で過ごす学校に馴染めず、高校卒業資格だけはほしいと、藁をもつかむような気持ちで通信制高校に来ている生徒も多いですよね。そうした生徒には、まずはここでゆっくりしていいよという雰囲気をつくってあげることが大切だと思っています。

小澤さん:でも、メンタルが落ち着くと「大学進学に向けて頑張ろう」と気持ちを切り替えて、前向きに取り組んでいく生徒も多いんですよ。

—— 目標があると、勉強のスケジュールも自己管理しやすくなっていくのでしょうか。

小澤さん:自分が今すべきことに焦点が合えば、自分で進めていける生徒も多いと思います。通信制高校ではそれぞれのペースで勉強を進めますが、自分でどんどん先へ先へと進めることが可能なのもメリットだと思います。全日制の高校では多くが数Ⅰを習っている時期に、数Ⅱまで進めている生徒もいます。

谷口さん:メンタル面で不安を抱えている生徒には、私たちのところではスタッフがスクーリングに同行することもあります。生活リズムが整っていない生徒も多く、勉強の前段階の部分でのサポートが必要な生徒がまず多く、そこが整えば、自分で何とかできていくのだと思います。

—— サポート校はいろいろな役割を担っているんですね。

サポート校には、転入前の学校の制服を着てくる生徒もいると小澤さん

自己管理が得意な生徒のほうが向いている

—— では、通信制高校に向いている生徒、向いていない生徒について、考えを聞かせていただけますか。

小澤さん:今は通信制高校もいろいろなスタイルがあるので、ひとくくりには言えないんですよ。文化祭や体育祭などの行事が好きだったり、クラスメイトと学校生活を楽しみたい生徒にはあまり向いていないとも思いますが、毎日学校に通えるシステムや、さまざまな行事のある通信制高校もありますし……。

谷口さん:どんな通学スタイルがいいか、どんな高校生活を送りたいかで、通信制高校も細かく比べてみて選んだほうがいいですよね。私は、学校以外にやりたいことがあって通信制高校を選ぶ場合や、自学自習が得意な生徒には向いていると思います。自己管理が難しい生徒の場合は、一人一人を丁寧に見てくれる通信制高校か、手厚いサポート校と連携しているかを確かめておいたほうがよさそうです。

小澤さん:ただ、通信制高校の場合は学校と認定されているので、自治体などで授業料の助成を受けられることもありますが、サポート校は学校ではありません。つまり、入学金や授業料などを各ご家庭で負担することになるんです。費用の面もしっかり考えておいたほうがよいと思います。

—— 入学や転入の前に、サポート校が必要になりそうかどうかも考えておいたほうがいいということですね。

谷口さん:あとは、つい周りの子と自分を比べて落ち込んでしまうという生徒は、通信制高校だと周りと比べる機会があまりないので、よいかもしれません。サポート校の中に同級生がいて仲良くなっても、みんなほどよい距離感でマイペースに過ごしているので。ただその分、周囲から得られる情報が少なく、受験や就職に向けていつ何をしておけばいいのかわからないという生徒がいるのも事実ですが……。

小澤さん:大学進学を希望する生徒の中でも、自分の実力がどのあたりなのかピンときておらず、学力に差がありすぎる大学を志望してしまう生徒もいます。共通テストの受験方法をわかっていないケースなど、進路に関しては情報が少ない面もありますね。

谷口さん:ですから、本来は自己管理が得意な生徒や、情報収集がしっかりできる生徒が向いているんだろうなとは思います。

小澤さん:「中学では不登校だったけれど、通信制高校なら行けるのでは?」と安易に決めず、自分にできること、できないことを細かく確認して、その通信制高校が自分に合っているか、サポート校に通う必要があるかどうかも含めて考えてほしいですね。

—— 具体的に通うことをイメージしながら、各学校を比較してみることが大切ですね。

スケジューリングが苦手で退学するケースもあるため、自力で管理できるか、サポート校などを利用するかなども事前に検討を

「学校らしさ」をどこまで求めるかもよく考えて

—— 通信制高校がもっとこう変わったらいいな、と思うことはありますか?

谷口さん:私たちのところに通っている生徒は、サポート校を学校のように感じている子が多いんです。授業もするし、居場所にもなっているし、学校よりも通う頻度が高いからだと思うのですが、本来の高校に対して、もう少し帰属意識を持たせてあげたいなと思うことはあります。

小澤さん:確かに、私たちのところでも生徒にとって通信制高校は「たまにスクーリングに行く場所」で、まるでセミナーを受けに行くような感覚で通っている生徒が多いです。レポートは郵送で提出するだけですし、「学校に通っている」という感覚はないですよね。

谷口さん:大人になって高校生活を振り返ったときに、そこが学校ではなくサポート校というのは、ちょっと違和感があるなと。それでも、楽しく通ってもらえればいいのかもしれませんが……。毎日通える通信制高校だと帰属意識を持ちやすいと思いますが、通学日数が少ないところでは難しいですね。でも学校が苦手な生徒もいるので、複雑です。

—— 学校という場所が苦手な生徒にとっては、よいのかもしれないですよね。「学校らしさ」をどこまで求めるかも、通信制高校を選ぶときのポイントになりそうです。

小澤さん:通信制高校も多様になっていて、自分に合った学校が選べるようになってきたのはとてもいいことだと思います。だからこそ、安易に選択してほしくはないですし、学校側もキラキラした部分だけを伝えるのではなく、「こういう生徒には向いているけれど、こういう生徒は苦労するかも」というリアルな面も事前にしっかり説明することが重要だと思います。

谷口さん:「不登校の子でも学べますよ」「こんな資格が取れますよ」という謳い文句だけで決めてしまわないことが大事ですよね。

小澤さん:生徒によっては、人生を賭けるような気持ちで選んでいることもあるので、選ばれる側もそこは意識したほうがいいなと思います。

—— ありがとうございました。

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。
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