2026/01/06

いよいよ受験シーズン、スマホとの失敗しない付き合い方

専門家に聞く 

今年も受験シーズン到来です。受験生のみなさんは日々、不安や希望の中で勉強を頑張っているかと思いますが、こんな悩みを持っている人もいるのではないでしょうか。

「勉強しなきゃと思っても、スマホを触るのをなかなかやめられない」
「スマホに通知が来るたびに、気になって勉強に集中できない」
「寝る前にスマホを触ってしまって、寝不足が続いてしまう」

これは大人でもよくあることですが、ついスマートフォンに時間をとられてしまって後で焦ることになってしまったり、自己嫌悪に陥ってしまったりと、受験生にとっては心の負担になってしまうこともありますよね。また、子どもを見ていて心配になる保護者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、2025年に『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)を出版した、ITジャーナリストの高橋暁子(たかはし・あきこ)さんにお話を伺い、受験勉強とスマホの上手なバランスのとり方を教えてもらいました。

スマホを使うほど、学力は低くなる?

—— ご著書の『スマホで受験に失敗する子どもたち』というタイトルを見て、ドキッとする人もいるのではないかと思います。まず、実際にスマホの使用は学力と関係があるのでしょうか?

高橋さん:そうですね。「OECD(経済協力開発機構)生徒の学習到達度調査」、文部科学省・国立教育政策研究所の「PISA2022」(令和5年12月)の結果では、相関関係が見られます。この調査では義務教育修了段階の15歳の生徒を対象にしていますが、日本は数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーのいずれも、ゲームもSNSも1日1時間未満の生徒の得点が最も高くなっています。
次いで「全くない」「1日1〜3時間」が同程度で、「1日3〜5時間」「1日5〜7時間」「1日7時間より多い」と、利用時間が長くなるにしたがって得点が低くなっています。これは日本だけでなく、世界共通の傾向です。

—— スマホを使う時間が長くなれば、当然勉強時間など他の時間が少なくなってしまうので、学力が下がることは当然かもしれませんね。

高橋さん:少し古いデータですが、総務省情報通信政策研究所が2014年に実施した「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査報告書」では、スマホを利用し始めたことで短くなった時間は、「睡眠時間」(40.7%)、「勉強の時間」(34.1%)、「テレビを見る時間」(27.8%)とのことでした。

—— 睡眠時間が減れば、日中勉強に集中できなくなってしまう懸念もありますね。

高橋さん:ただ、勉強や体調管理に必要な時間が減って学力が伸び悩むだけではなく、実は同じ時間だけ勉強していても、YouTubeなどの動画視聴時間が長い子どもと短い子どもとでは、時間が長い子どものほうが学力が低かったという調査結果もあります。長時間動画を見る子どもは、家庭学習の合間にもつい見てしまい、勉強に集中ができていないんです。

—— 勉強時間を確保するだけでなく、いかにスマホに気を取られずに集中するかも大切だということですね。

「スマホ断ち」よりコントロールの方法を工夫して

—— ただ、中高生ともなれば、自分がスマホを使いすぎていることや、それによって勉強がおろそかになっていることは、自分でもうすうすわかっていることが多いのではないでしょうか。それゆえに、「やめたいけれどつい触ってしまう」状態で悩んでいる生徒も多いと思います。どうしたらよいのでしょう?

高橋さん:まずは、先ほどお伝えした学力との関係を知っておくことや、スマホがどんなものか知って使うことが重要です。スマホは、ゲームや動画、SNSでの会話など、たくさんの刺激を与えてくれるものです。また、ゲームでは「勝った」「攻略した」、SNSでは「いいねをもらった」「褒められた」「フォロワーが増えた」など、求めれば報酬をいくらでも与えてくれます。
この刺激と報酬によって、脳内では快感ホルモンであるドーパミンが分泌されて、人はスマホ依存になっていくわけです。この仕組みを知ったうえで、どう付き合うかを考えていきましょう。

—— 刺激と報酬、まるでギャンブルのようですね。

高橋さん:はい。ただし、スマホは必ずしも悪いものというわけではなく、コントロールすることが大切なんです。10代の子どもたちにとっては、クラスや部活の仲間とはLINEで連絡を取り合うなど、学校生活や日常生活になくてはならないものですから、スマホを使うなというのはムリな話です。

—— では、どのようにコントロールすればいいのでしょう。

高橋さん:たとえば、勉強中には目に見えないところにスマホを置いてください。目に入るところではなく、別室など見えないところに置くことで、「通知が来ているかも?」などと気にすることなく、勉強に集中することができます。
それから、SNSなどでは「受験生なのでしばらく投稿が少なくなります」と宣言しておくことや、長時間使ってしまいそうなアプリはIDやパスワードだけ残しておいて一時的にスマホ上から削除するなども効果的です。気になってしまうアプリの通知設定をオフにするだけでも、変わってくると思います。

—— 自分がどのアプリで時間を費やしてしまいがちなのか、把握しておくこともポイントになりそうですね。

高橋さん:はい。自分がどのようにスマホを使っているかを客観的に見ることで、「もう少し使用を制限しよう」という気持ちが高まります。iPhoneなら「設定」から「スクリーンタイム」、Androidなら「設定」から「Digital Wellbeingと保護者による使用制限」を開けば、自分がどのアプリにどれだけ時間を費やしたかがわかります。
これを友達とお互いに確認し合うのもよいですね。人の目が入ることで、使いすぎないようにしようという意識がさらに高まると思います。

—— スマホを完全にやめるのではなく、勉強に集中できる時間を生み出すために工夫して使うことが大切なんですね。

高橋さん:そのために、自分がどのように使っているかパターンを知って、対策していってください。

スマホをコントロールする具体策

勉強中は別室に置く

通知をオフにする

SNSで受験期間を宣言する

一時的にアプリを削除する

使用時間を可視化する

自分に合った方法で効率よく学習に使おう

—— スマホを制限するのではなく、受験勉強に効果的に使う方法もあるのでしょうか?

高橋さん:もちろん、有効に使う方法はたくさんあります。授業や参考書ではわかりづらかったところを勉強系YouTuberの動画で復習したり、クイズやゲームのように問題を解いていく学習アプリを使ったり、学習コンテンツをいろいろ試してみるのはよいと思います。

—— YouTubeを開いてしまうと、つい他の面白そうなオススメ動画に目が行ってしまいそうですが……。

高橋さん:そういう人は、たとえば勉強系YouTuberの配信ならコメント欄を見てみてください。同じように勉強を頑張っている生徒たちのコメントを見れば、モチベーションが上がるかもしれません。また、学習系のコンテンツの検索、閲覧頻度が上がっていけば、オススメとして出てくるコンテンツも学習系が中心になっていきます。

—— SNSはどうでしょうか。スマホで他の受験生とつながることで、やる気が高まることもあると思います。

高橋さん:大学受験の勉強をしている高校生の場合、SNSで「勉強アカウント」をつくっている人も多いですよね。自分の目標や日々の勉強記録を投稿したり、同じような目標を持つ人とつながってモチベーションを上げたりするのもよいと思います。
また、学習に特化したプラットフォームとしては、「Studyplus(スタディプラス)」などもおすすめです。毎日の勉強時間や勉強量を記録して進捗を可視化したり、目指す学校や1週間の目標を設定したり、入試までの日数をカウントダウンしたりできる学習管理アプリです。この中で、他の人の参考書レビューを読んだり、コミュニティ機能で同じような目標の人と交流したりすることもできます。

—— 勉強のために使っているアプリであれば、他の人との交流もいい意味で刺激になりそうですね。

高橋さん:同じようなアプリとして「StudyCast(スタキャス)」もあります。こちらには、目標や学年が近い生徒と一緒に勉強できるオンライン自習室の機能もあります。他にも、ZoomやLINEビデオ通話などを使って、友達とオンライン勉強会をするのもよいですね。人の目があることで、他のことに気を取られずに集中しようという意識が高まります。

—— そのように効果的に使っていければよいですが、それでもスマホを見てしまうことで、ついゲームや勉強以外の動画などに手が伸びてしまう人もいるのではないでしょうか。

高橋さん:それなら「タイムラプス勉強法」はどうでしょうか。タイムラプスとは、一定間隔で写真を連続撮影し、それを繋ぎ合わせてコマ送りのようなショート動画にする撮影法です。勉強中には自分が勉強している手元やノートなどと時計を撮影して、後でそのショート動画を勉強アカウントで投稿します。
スマホで撮影しているので、その間はスマホを触れませんし、こちらも人に見られる前提ですから集中できる効果があります。ただし、自分の顔や個人情報がわかるものは写らないように気をつけてください。

—— 大人でも、仕事や家での時間、イラストや手芸の制作などをタイムラプス投稿しているのをときどき見かけますね。最近はAIの技術も進化していますが、これも勉強に効果的に使えますか?

高橋さん:はい。AIに英作文の添削をしてもらったり、教科書や参考書を読み込ませて問題を作ってもらったりなど、いろいろな使い方ができます。

—— スマホを学習に使うといってもいろいろなやり方があるので、自分がわくわくできたり、使いやすかったりする方法を探してみるとよさそうですね。

学習に活かせるスマホ活用法

勉強系YouTube

学習管理アプリ(Studyplusなど)

勉強アカウント

オンライン自習室

タイムラプス勉強法

AI活用

親は「取り上げる」ではなく「一緒に考える」

—— 最後に、「わが子のスマホの使いすぎが気になる」という保護者のみなさんは、どうしたらよいでしょうか。

高橋さん:まずはご自身のスマホの使い方を見直すところからですね。親が長時間スマホを使っていると、子どもの使用時間も長くなります。子どもにだけうるさく言っても、子どもは納得がいきませんよね。

—— 今は大人も、ヒマさえあればついスマホを触ってしまったり、子どもとの会話中にもスマホを操作していたりすることがありますよね。確かにそれでは説得力がありません。

高橋さん:子どもだけに押しつけるのではなく、「食事中や集中する時間はみんなで触るのをやめようね」など、家族で相談してルールをつくれるとよいですね。

—— 子どもからスマホを取り上げる、使えなくするなどはやはり逆効果ですよね?

高橋さん:「制限する」という考え方よりも、「親の同意のもとでうまく使ってもらう」ようにするほうが、うまくいきます。取り上げたり使用制限をかけたりしても、子どもは何とかして取り戻そう、制限をすり抜けよう、と逆にスマホに意識を集中させてしまうことのほうが多いです。
そして次第に、保護者は「使いたいのに使わせてくれない、自分を邪魔する存在」となってしまいます。そうではなく、親は一緒に使い方を考えたり、目標を立てたりして「手助けする存在」でいることが大切です。

—— スマホ依存は子どもだけの問題ではありません。大人も子どもも、うまく付き合えるとよいですね。ありがとうございました。

取材協力

高橋暁子さん

ITジャーナリスト。成蹊大学客員教授。
SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナー、講義、委員などを手がける。
公式ホームページ:https://www.akiakatsuki.com/
近著『スマホで受験に失敗する子どもたち:
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000420084

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子

ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。

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