登校しなくてもいいの? 通信制高校とほかの高校の違い

通信制高校

2016/08/03

いわゆる「普通高校」とされる全日制高校や、働きながら通うイメージのある定時制高校はなんとなく知っていても「通信制高校」はどんな学校かよく知らない、という方も多いのではないだろうか。

通信制高校といっても学校ごとに特色が違うが、今回は基本的な通信制高校の仕組みを紹介する。

通信制高校とは?

通信制高校とは、言葉の通り“通信による教育を行う高等教育課程”のこと。卒業時に得られる資格は全日制高校・定時制高校と同じ「高校卒業資格」。ちなみに、卒業証書などに「通信制」といった表記がされることはない。

通信制高校は普通の高校と何が違う?

通信制高校は、ほかの高校に比べて違う点が大きく3つある。

(1)進級、卒業の条件

全日制・定時制高校は「学年制」、通信制高校は「単位制」だ。

学年制では、その学年で取るべき単位が1つでも足りていないと「留年」となり、また同じ学年で1年間学び直す必要がある。しかし、通信制高校では3年以上の期間の間に必要な単位を取得すればよいため、留年のような仕組みはない。

また、学習方法も大きく異なる。全日制では決められたクラスで学校が設定したカリキュラムで授業を受け、学期末にテストを受ける。通信制高校では、教科書を見ながら自分でレポートを作成し、決まった回数のスクーリングと呼ばれる授業を受け、最終的にテストを受けるといった方法をとる。

(2)登校頻度

全日制は毎日登校するスタイルが一般的だが、通信制高校は学校やコースによってまちまちだ。基本的には週1~2回のところが多いようだが、中には1年に1回、数日間の合宿に参加するスタイルの学校もあれば、週5回登校する学校も存在する。

通信制高校でほとんど登校がないスタイルの場合は、インターネットを使ったレポート提出や遠隔授業で普段の勉強を行う。一方、毎日登校型の通信制高校の場合は、部活動や資格取得の勉強・職業体験など、通常の勉強とは違ったことが学べる学校が多い。

(3)サポート校の存在

「サポート校」とは、通信制高校での卒業をサポートしてくれる塾のような存在だ。サポート校に入るだけで高校卒業単位がもらえるわけではなく、サポート校を利用する場合は、提携している通信制高校に同時入学することになる。なお、サポート校を利用しなくても単位さえ取得できれば通信制高校を卒業することは可能だが、通信制高校の勉強は自学自習が基本になるため、自分だけでは勉強ができずに卒業までに長期間かかってしまう人も少なくない。

不登校やいじめによって通信制高校に転編入する人も多いため、心のケアや勉強の遅れについてもサポートしてくれるほか、音楽や美容などの専門的な授業や、難関大学への受験勉強サポートなど、サポート校にもさまざまな特徴があるため、サポート校を決めてから通信制高校を選ぶ人もいる。

どんな人が通信制高校に行くの?

通信制は、一人ひとりに合ったペースで学習を進めることができるので、すでに働いている人や、高校を中退した人、出席日数の不足や学業不振で現在の学校では留年となってしまう人など、さまざまな人が通っている。

近年では、いじめや不登校により環境を変えたい人が転入する場合も多く、そのためのケア・サポートが充実している学校も多くなっている。また、芸能活動やアスリート活動と学業を両立させるために通信制高校を選択する生徒もいる。

公立と私立の違い

通信制高校にも、公立と私立がある。

<公立の通信制高校>
・登校日が明確に決められている
・動画学習や個別指導などを行っているところは少なく自学自習の比重が大きい
・費用が比較的安く抑えられる(高等学校等就学支援金により、公立の通信制高校では授業料がすべて無料)

<私立の通信制高校>
・登校日に融通が効くところが多い
・心のケアや勉強のサポートが充実している
・公立に比べてかかる費用が高い(高等学校等就学支援金により、私立の通信制高校では年間約12万円が授業料から減額されるが、登校頻度によって施設使用料や教材費などが必要)

通信制高校とは違うの? 高卒認定試験について

昔は「大検」と呼ばれていた「高卒認定」。通信制高校と混同している人もいるようだが、違うものだ。

高卒認定試験は年2回行われており、8~10の科目に合格すると取得できる。合格科目は次回に持ち越すことが可能なので、1回の試験で全ての科目に合格できなくても、次の試験で残りの科目が合格となれば高卒認定を取得できる。

高卒認定を取得すると、18歳以上であれば大学や専門学校への入学、中卒では受けられない資格試験を受けることが可能に。ただし、「高卒認定」は「高校卒業と同等の学力があると認める」ものであるため、厳密には「高卒資格」とは異なり、高卒認定を取得後に進学しなかった場合の最終学歴は「中卒」となる。ただし、経歴として履歴書などに記載することは可能だ。

まとめ

通信制高校について特に押さえておきたいポイントは、以下の4つ。

  • 通信制高校の卒業資格は全日制高校や定時制高校と変わらない
  • 単位制なので、転入や編入が比較的簡単で留年制度がない
  • 登校頻度は学校やコースによって違い、さまざまな人が通っている
  • 「高卒認定」でも大学などへ進学は可能だが、進学しない場合の最終学歴は「中卒」となる

一口に「通信制高校」といっても学校によって登校日数や勉強のサポート体制は違うため、通信制高校を選ぶ際にはいくつかの学校を自分の目で見て、比較して自分に合った学校を選びたい。

(北澤愛子/クリスク+ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年8月3日)に掲載されたものです。

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