日本でアメリカの高卒資格を取得できる? 独自カリキュラムで世界を目指そう

通信制高校

2022/10/20

日本にいながら、アメリカの高校卒業資格が得られる。そんな学校が存在するのをご存知でしょうか?

留学に興味があるけれど、新型コロナウイルスの流行や円安などでなかなか難しいという中高生も多いと思いますが、日本にいても通信制という形で留学経験ができるようになってきているのです。

そんな学校のひとつが『ipcインタースクール』。ここではアメリカのオンライン制ハイスクールと提携し、言語の壁を越えてアメリカの高校のカリキュラムで学び卒業することができるのだとか。

アメリカならではの多岐に渡る分野をオンラインで学べるのは、グローバルな視点を持ち海外へ夢を馳せる生徒にはもちろん、将来に役に立つ学習をしたい、自分らしさを大事にしたい生徒さんにとって、重要な機会となるかもしれません。

では、具体的にどのようなシステムでどのようなカリキュラムが組まれているのか、代表の浅井理仁さんにお話を伺っていきましょう。

●お話を伺った人

ipc合同会社代表 浅井理仁さん
学生時代にいじめ、非行、不登校を経験。社会に出て不動産業を始め、最年少役職者や取締役などを経て経営者へ。これまでに不動産業、バー、レストラン、エステ、アパレル、卸商社、オーダースーツ、コンサルティング等会社経営を経験。
これまでの挫折や失敗、成功体験をもとに、ipcインタースクールを運営。

https://www.ipc-found.com/

英語が苦手でもアメリカの高校卒業資格を得られる!?

――まず、ipcインタースクールとはどのような学校なのか、お聞かせいただきたいと思います。

私たちの提携校はアメリカのフロリダ州にある「Citizens High School」という40年の歴史を持ち、24カ国の学生が学ぶグローバルな通信制高校です。

米国教育省認定機関遠隔教育認定委員会に認められたオンラインハイスクールで、科学・技術・工学・数学など、約300のコースを含むさまざまな質の高いカリキュラムを柔軟にカスタマイズし、必要単位を取得することでアメリカの高校卒業資格を得ることができます。

――アメリカの学校というと、まず言語の壁があるかと思いますが、英語の苦手な生徒だと入校は難しいのでしょうか。

学習にはアメリカの多くの高校でも導入されている「Canvas」というオンラインシステムを使用しており、他言語を切り替える機能が付いているので、日本語で学ぶこともできます。

単位取得のための課題や提出したレポートへのフィードバックは英語で返ってきますが、こちらはメンターがしっかりフォローするので、英語が苦手でも安心して学習ができます。

――卒業後、日本の大学に進学したい場合、その条件は満たせるのでしょうか。

当校の生徒では少数派ですが、日本の大学に進学する場合は、文部科学省の定める大学入学資格に相当する条件を満たす必要があるので、カリキュラムの確認が必要です。ただしこれは各国の大学に関しても同じことです。大学進学にあたっては、入学の際に相談してもらえれば、希望する進学先への受験が可能なプランを立案しています。

――学校への入学時期は日本では4月、アメリカでは9月と異なりますが、入学時期や条件はどうなっていますか。

入学や編入、転入に関しては出願期限を設けず随時受け付けています。生徒さんにはそれぞれの事情があると思いますので、ご相談いただいたうえで時期を決めるようにしています。

条件としては、アメリカの教育課程におけるGrade8(日本では中学2年までの課程)相当を修了していれば、入学可能となります。ですが、日本国内では中学3年までが義務教育となりますので、原則的に中学卒業後の入学となります。また、当校では入学に際して試験や審査を一切行っていません。学びを始めるにあたって資格は必要ない、というのが私たちの考えです。

当校では帰国子女の受け入れも行っていますし、さまざまな事情を抱えた生徒さんも多く在籍しています。

――そうなんですね。新型コロナウイルスの流行で、入学者数などに変化はありましたか。

コロナ禍での海外生活は難しいと考えて、当校を選んだ生徒はいますね。帰国子女の場合でも、新型コロナワクチンを接種しないと公共交通機関が利用できないといった制限のある国から、ワクチンを打ちたくないという理由で転入したケースもありました。

(イメージ)

柔軟かつ実学的なカリキュラムが豊富

――カリキュラムは、具体的にどのようになっているのでしょうか。

提携校での高校卒業資格を得るためのカリキュラムは、数学・英語・社会・理科のほか、ライフスキルや、子育てまたはキャリアスキルといった科目が必修となり、さらに自由選択科目を加えて計18単位で構成されています。

ipcインタースクールでのカリキュラム
ipcインタースクールでのカリキュラム

――「ライフスキル」と「子育てまたはキャリアスキル」という単位が気になります。

ライフスキルは生きるため、生活するためのスキルを学びます。広い範囲にわたりますが、たとえばフィットネスや栄養学なども含まれます。生徒の中には不登校を経験した人も多く、健康的な身体になりたい、ダイエットをしたいと願う人もいます。そこで効率の良いトレーニング方法や、食事におけるPFCバランス(タンパク質・脂質・タンパク質)などについて学ぶことで、単位を得ることもできます。また生活に必要なものとして、自動車教習所に通って運転免許を取得することなども単位として認められます。

子育ては文字どおり、育児に関しての学習を指しています。キャリアスキルでは生徒さんそれぞれが将来就きたい職業に沿って学習を行い、課題を提出してもらいます。

――課題はいわゆるレポート形式となるのでしょうか。

もちろんレポートも可能ですが、フリーのホームページ制作ツールなどを利用したブログ形式や、YouTubeなど動画形式での提出なども可能です。あくまで学校での課題なので、もちろん限定公開でもかまいません。

――提出方法も自由度が高いのですね。ただ自由だと生徒さんのモチベーション維持が難しい面もあるのではないでしょうか。

当校では生徒にじっくりメンターがヒアリングを行い、今現在の夢や目標、趣味やコンプレックス、学びたいこと、挑戦してみたいことに沿って、オーダーメイドのカリキュラムを組めることが最大の長所です。自分が学びたいことを、主体性を持って選び、それを応援する体制を大事にしているので、不登校などで学習に遅れのあった生徒も進んで学んでくれています。

――自由選択で人気の分野はどういったものですか?

「興味があって将来に役立つ」実学を中心に選ぶことができますが、最近だと投資に関心を持つ生徒が多いように思います。また私自身、これまで経営者として多岐に渡る分野に関わり、さまざまな人々との交流を持ってきました。それを活かし、生徒さんの希望があればその目標に沿った各界で活躍する人とのマッチングを行うこともあります。

(イメージ)

日本にいながらアメリカのカリキュラムで学ぶ意義

――お話を伺っていると、生徒さんとメンター、浅井代表との距離感が、一般的な学校よりも近いように感じます。気軽にコミュニケーションがとれる環境なのですね。

はい。当校では生徒やメンターともメッセンジャーアプリでグループを作っていて、みなさんの相談に応じています。私は企業のコンサルティングも行っていて、いかに課題を解決して目標を達成するか、一丸となって考えていきます。それと同じで、当校は生徒や保護者も含めてひとつのチームと考え、生徒それぞれが目指すものを具体的な形にするにはどうすればよいのかを考えていきます。そして、これを柔軟性を持って実現していくには、提携しているアメリカのスクールのカリキュラムがとても有効なのです。

――具体的に、アメリカのカリキュラムを学べることの意義はどのようなものでしょうか。

主体性を持って将来のための学びができるほか、「海外留学したいけれど、英語がまだついていけない。でも海外を視野に入れるなら日本の高校では……」といった生徒に対して、中間的なポジションで学べることに意義があると思います。実利的な面でいうと、私自身、通信制高校を経てアメリカの高校を卒業しているのですが、仕事をしていく中で「アメリカの高卒資格」というのはブランド面でのインパクトもあり、行っていてよかったなぁと思うことが多々ありました。

――たしかに国内の有名校以上に相手の印象に残るかもしれませんね。通信制高校そのものについてはいかがでしょうか。

将来なりたい自分になるための学習や、社会勉強に多く時間を割けることに、大きな意義があると思っています。興味や探究心で選んだ分野であれば、主体的に学び、自分を管理することができる。それこそが通信制高校ならではの強みであり、私自身の建学の精神でもあります。

――最後に、通信制高校を検討している生徒・保護者にメッセージをお願いします。

高校は3年間ですが、子どもにとって3年間は長い期間であり、大事な人格形成と学びの時間です。生徒は本当に自分自身のために選択できているか、保護者ならお子さんのための高校選びをできているか、じっくり考えて、納得できるまでよく話し合ってほしいです。

――ありがとうございました。

<取材・文/中島理>

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この記事を書いたのは

中島理

1981年、北海道生まれ。バーテンダー・会社員を経てライターへ転身。ムックを中心に編集や執筆に携わる。引きこもり経験を持ち、若年層の進学・就労にまつわる心の問題に関心。