
通信制高校の在籍生徒数は2024年度で過去最高の29万人超となり、高校生の11人に1人が通信制高校に通っている現在。これから進路を考える中学3年生や、転学・編入を考えている人の中にも、通信制高校を選択肢に入れている人は多いかと思います。
ただ、通信制高校の仕組みや、必要なお金については、「よくわからない」という人が多いのも実状です。
実際、通信制高校ナビが2024年12月〜2025年2月にサイト利用者を対象に実施したアンケート調査「通信制高校に期待すること、不安、疑問点」でも、「授業料を含めて、どれくらいお金が必要なのか」「サポート校に通えば高校卒業の資格を取得できるのか」など、お金や仕組みに関する疑問が数多くコメントされていました。
そこで今回は、通信制高校の基本的な情報をまず押さえておくために、当アンケートに寄せられた疑問点を中心にわかりやすく解説してみたいと思います!
高い?安い?通信制高校のお金の疑問
私立の通信制高校は他の学校と比べて高いの? どんな費用が発生するの? 現実的に考えると、お金のギモンは一番に解消しておきたいですよね。よくある質問をまとめてみました。
Q. 授業料などの費用は一般的な私立高校と比べて高くなりますか?
A. 一般的には、全日制の私立高校と比べると通信制高校にかかる費用は低い傾向にありますが、学校によって異なります。
また、週に何日通学するか、どんなコースを選ぶかによっても変わりますので、学校から資料を取り寄せてよく確認してください。
ちなみに、文部科学省が公表している「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」によると、私立の全日制高校で初年度にかかった納付金の平均額は、授業料が約45万7331円、入学金が16万5898円、施設整備費等で15万7232円。合計すると約78万460円となっています。
ただし、サポート校を利用する場合には、別途お金がかかるので注意が必要です。
サポート校とは、通信制高校に通う生徒の学習サポートやメンタル面でのサポートをしてくれる民間の教育機関のことで、学校ではありません。
サポート校にかかる費用は、初年度で30万〜100万円が目安と言われています。
通信制高校は、サポート校とセットで入学することになっているケースも多いので、事前に確認しておきましょう。
Q. 自治体などが実施している授業料の無償化には対応していますか?
A. はい、通信制高校の授業料は、就学支援金によって実質無償になる可能性があります。
2025年4月現在では、国公私立問わず、年収が約910万円未満の世帯で高校に通う生徒には、授業料に充てるための高等学校等就学支援金が国から支給されます。
ただし、就学支援金の対象となるのは通信制高校の授業料であり、サポート校の授業料は対象外となりますので、注意してください。
Q. 専用パソコン、タブレットなどを買わなくてはいけませんか?
A. 私立の通信制高校では、学校内のインターネット環境を利用して授業を受けたり、レポートを提出したりするケースが大半となっています。
パソコンやタブレットは、学校が指定したものを使う場合もあれば、自分で使いやすいものを選んで購入する場合もあります。また学校によって、購入費用が学費に含まれているケースもあります。学校のパンフレットや学校説明会などで、よく確認しておきましょう。
Q. 制服は必ず買わなくてはいけませんか?
A. 制服の有無は、学校によって異なります。制服がある場合は、制服代が必要となります。
ちなみに、制服があっても、通学時の着用は任意で、私服での通学がOKの学校もあります。
当サイトでも、トップページの学校検索で、「制服あり」の学校を検索することができますので、チェックしてみてください!
仕組みを確認!高卒資格は絶対とれる?
通信制高校に行けば、必ず高校卒業の資格はもらえるの? 卒業するための条件は全日制高校とは違うの? まずは基本的な仕組みを理解したうえで、進学を検討しましょう!
Q. 全日制高校と同じ高校卒業資格が取れますか?
A. はい、通信制高校は、全日制高校など他の高校と同じ、「高等学校」です。
最低3年間在籍し、必須科目を含む74単位以上と、ホームルームや学校行事などの特別活動30単位を修得すれば、通信制高校を卒業することができ、全日制高校と同じ高校卒業資格が取得できます。
Q. サポート校でも高校の単位はもらえるんですか?
A. いいえ、サポート校は学校ではありませんので、サポート校に通っているだけでは単位取得はできません。
提携する通信制高校のレポートを締め切りまでに提出し、決められた時間数のスクーリングに出席し、単位認定試験を受けて合格することで、通信制高校の単位を修得することができます。サポート校では単位修得のための学習面やスケジュール管理をサポートしてもらえます。
Q. 高校卒業資格は、必ず取得できますか?
A. 通信制高校に.ただ在籍しているだけでは、必ずしも卒業資格が取得できるとは限りません。
前述のとおり、学校に決められた数のレポートを出し、スクーリングに出席し、単位認定試験に合格すれば、単位を取得することができ、卒業資格を得られます。
必要な単位が修得ができるように、学習やスケジュール管理をしっかり行いましょう。
Q. 受験勉強をしないと入学するのは難しいですか?
A. 通信制高校の入学試験は、面接・作文・書類審査が一般的です。中には筆記試験を実施する学校もありますが、その場合も国語・数学・英語の3科目となることがほとんどです。
学力よりも、学習意欲や姿勢が重視されることが多いので、志望理由や高校で何を頑張りたいかなどをしっかり伝えられるようにしておくとよいでしょう。
Q. 入学試験の作文はどのようなテーマで、どれくらい書くのですか?
A. 学校によって異なりますが、志望動機や、これまでの学校生活について問われることが多いです。
また、試験会場で制限時間を設けられて書くこともあれば、出願時に必要な書類のひとつとして作文を提出する場合もあります。
文字数は一般的には400〜800字となります。どんな高校生活を送りたいか、何を学びたいかなど、具体的にイメージして書けるとよいですね。
通学、勉強、イベント……どんな学校生活になるの?
不登校やメンタル不調でも通い続けられるのか、進学はどうなるのか……。学校生活が不安な人も多いと思います。学校によってサポート内容もさまざまなので、事前に調べてみるのがオススメです。
Q. 週2日の通学を希望していますが、可能でしょうか?
A. 学校によって、通学する日数は異なります。それぞれの生徒の状況によって個別に通学日数を選べる場合もあります。
週1回の学校もありますし、全日制高校のように週5回通う学校もあります。年に数回しか通学しない学校もあります。
年に数回の場合には、普段の学習はオンラインで行い、学校には面接やガイダンスなどのために通うケースがほとんどです。ぜひ、ご自身のペースに合った学校を探してみてください!
Q. 不登校の不安がありますが、メンタル面でのサポートはありますか?
A. サポートは学校によってさまざまです。スクールカウンセラーや臨床心理士などの専門家によるサポートが受けられる学校もありますし、メンタルケアの資格を持っている教員がサポートする学校もあります。また、保護者もカウンセリングなどのサポートを受けられる学校もあります。
Q. 大学進学を考えていますが、受験勉強はサポートしてもらえますか?
A. 大学進学へのサポートは、学校によりさまざまな特徴があります。
個別指導で受験に向けて勉強を教えてくれる学校、進学コースのある学校、また提携するサポート校で受験に向けた指導を受けられることもあります。
それぞれの通信制高校の大学進学実績なども調べつつ、自分の目標やペースに合いそうなところを探してみましょう。
Q. 体育祭や文化祭、修学旅行などのイベントはありますか?
A. 学校によりますが、全日制高校と同じように学校行事のある通信制高校もあります。
規模や雰囲気も学校によってさまざまで、参加は自由という学校もあります。資料や学校説明会などで確認してみましょう。
全日制高校からの転学・編入もできるの?
現在在籍している高校から転学したい人、一度別の高校を退学してから通信制高校に入り直したい人は、単位の引き継ぎなどをしっかり確認しておきましょう!
Q. 転学を考えていますが、今通っている全日制高校の単位や出席日数は引き継ぎできますか?
A. 学校によりますが、ほとんどの通信制高校で単位の引き継ぎが可能です。
ただし、全日制高校では年度末に単位が認定されるため、年度の途中に転学する場合、その年度に修得した単位は引き継がれない場合もあります。
いずれにしても、転学する前に、入りたい学校によく確認しておいてください。
Q. 全日制高校から2年生で転学する場合、そこから通信制高校に3年間通わなくてはいけませんか?
A. 全日制高校から転学した場合には、前に通っていた高校の在籍期間も加算されますので、通信制高校は在籍2年で卒業することも可能です。
ただし、前の学校から引き継いだ単位も含めて、74単位を修得しなければ卒業できないので、必要な単位はしっかり修得しましょう。
Q. 転学や編入ができる時期は決まっていますか?
A. 通信制高校の場合、年間を通して転学や編入が可能なケースが多いですが、学校によっては4月と10月の年2回のみの募集となることもあります。
気になる学校があれば、入学できる時期を問い合わせたり、資料で確認したりしてみてください。
以上、今回は通信制高校に関する基本的な疑問に答えてみました。
ひと言で通信制高校といっても、今は多様な通学スタイルやコースがあり、「通信制高校ならこうです」とひとつの答えが出せない場合がほとんとです。まずは学校の資料を取り寄せたり、学校説明会に参加したりして、お金のこと、通学のシステムなどの基本項目はしっかり押さえておきましょう。
自分のペースで安心して通える学校、やりたいことができる学校を探すために、ぜひいくつかの学校を比較してみてくださいね!
この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部