コロナで学費が… 私立高校実質無償化など支援制度を解説

教育問題

2020/04/17

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月7日、7都府県を対象に初の緊急事態宣言が発令されました。そしてその対象は16日に全国に拡大されると発表されました。

外出自粛の要請が出されたほか、幅広い業種に営業自粛要請が出されたことで、多くの人々が不安な状態に陥っています。

また、この影響を受けて失業・減収に追い込まれたというケースも生じており、学費が心配になっている家庭もあるのではないでしょうか。

今回は、学費にまつわるさまざまな制度をご紹介し、みなさんに参考にしていただきたいと思います。

この春スタート! 私立高校授業料の実質無償化とは?

2020年4月から、文部科学省では私立高校授業料の実質無償化を開始しています。

これは2014年からスタートしていた「高等学校等就学支援金制度」を改正するもので、特に私立高校(全日制・定時制・通信制とも)の生徒への支援が手厚くなることが最大の特徴です。

2020年以前からの変更点

  • 年収約590万円未満世帯の支給上限額が引き上げ

両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合、全日制私立高校なら396,000円、通信制なら297,000円が上限に。

  •  支給の判定基準が「地方税の所得割額」から「課税所得」に変更

通信制高校も支給額が大きくなりましたね。

注意!高校にかかる費用が全額無料になるわけではない?

あくまでも“実質”無償化であり、高校に通う費用が完全にタダになるわけではありません。
この支給上限額は「私立高校の平均授業料を勘案した水準」であり、それよりも高い授業料が設定されている私立高校の場合、差額は家庭で支払う必要があります。

高等学校等就学支援金 申し込み方法は?

この4月からは一部の書類がオンラインで提出できるようになりました。
在校生の場合は、収入状況の届け出を行う7月頃に学校から案内が来る予定です。

新型コロナウイルスの影響で休校となり、学校からのさまざまな連絡事項がメールなどで届いている場合もあると思いますので、お知らせにはよく注意しましょう。

高校生等奨学給付金も活用しよう

「高等学校等就学支援金制度」 の対象となるのは授業料のみ。教科書費用や教材費、修学旅行費、学校納付金などの授業料以外に必要となる費用は対象外となります。

こうした費用に関して、低所得世帯では「高校生等奨学給付金」という制度を使えば、補助を受けることができます。全額ではないとは言え、この制度の利用条件に当てはまる世帯ならば、積極的に活用しましょう。

新入生なら入学時の4月など手続きが必要な時期に、学校から案内されます。

都道府県の支援も活用しよう

2020年度からは、「高等学校等就学支援金制度」がさらに拡充されるということで、東京都も合わせて対象世帯を拡充しました。

対象となる世帯の年収を760万円未満から910万円未満に引き上げ、子どもを3人以上育てる世帯は収入の条件はなく授業料が一部軽減されます。

このように、各自治体が実施する無償化施策もありますので、使える支援を組み合わせて学費を抑えることができます。

授業料の支払いが厳しくなった大学生も要チェック

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、家計が急変した、あるいはする恐れがあるという家庭もあるでしょう。アルバイトなどで学費をまかなっていた学生が、アルバイト先の休業やシフトの減少などで窮地に立たされているケースも出てきています。

現在は、そうした世帯の大学・短大、大学院(修士課程・博士課程)、高等専門学校、専修学校専門課の学生にも、文部科学省が返済不要の給付型奨学金を支給する修学支援制度を用意しています。

認められれば月額最大75,800円が支給され、入学金や授業料減免も受けられます。

また、災害に遭うなどした場合には、3ヵ月以内に収入証明書などの書類を提出し、基準に合致していれば速やかに支給が受けられるという規定があります。

これはもともと住民税非課税世帯と準じる世帯が対象で、毎年春と秋の一定期間、学校を通じて申し込みできる制度でした。
しかし、文部科学省はこの制度を、新型コロナウイルス感染症で影響が出た家庭にも適用することを決めました。

申し込み方法は?

国や自治体の公的支援を受けたという証明書や給与明細、帳簿などを提出する必要があります。以前にこの修学支援制度に申し込んで対象外とされていた世帯でも、再度申請できます。

その他、文科省や各自治体が設けている無利子あるいは有利子の貸与型奨学金もありますので、家計急変などで困った場合には、まず学校に相談するようにしましょう。

参考)
文部科学省
「新型 コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ」

まだある!生活や教育のための緊急支援

現在は、学費だけでなく、生活そのものが苦しくなってしまった家庭も出てきています。

厚生労働省は失業や減収などで生活が困窮している世帯に対し、「生活福祉資金貸付制度」を通じて生活費などの総合支援資金を援助していますが、今回の事態を踏まえて貸付の対象世帯を拡大しています。

感染症の影響による休業や失業で生活資金が足りないなどの場合、緊急小口資金等の特例貸付を実施しています。詳しくは厚生労働省のサイトを確認してください。

参考)
厚生労働省
「生活福祉資金貸付制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html

オンライン学習への支援も

今後、支援はモノにも及んでいく予定です。
ウイルス感染防止のための休校が延長されたことで、学校によってはオンライン学習の試みを始めているところも出てきていますが、PC・ネット環境が整っていないという家庭も多くあります。

そこで、文部科学省は低所得世帯を対象にモバイルルーターの貸し出しを含めた対策を検討しています。一時、「通信費用は支給対象外」との報道もありましたが、所得による制限や通信費用の補助については、現在省内で検討中とのことです。

このオンライン学習ですが、東京都教育委員会の見解では、現在のところあくまでも課外授業や補習にあたるという認識で、正式な授業と認定されるものではないようです。

ただし休校が長引く可能性もあり、認定するかどうかを含めた検討も行っているとのことです。

現在、国全体、いえ、世界全体が想像もしなかったような事態に陥っています。そのため、国や文部科学省、自治体の方針も刻々と変化していきます。

支援制度もこれから変わっていくことが大いに予想されますが、重要な情報を見逃さない工夫も家庭で行っていかなればならないでしょう。

<文/高崎計三>

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この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。