vol.1:通信制高校のシステムを利用した「まったく新しい高校」(前篇)

生徒・先生の声

2016/01/20

同じものに打ち込む仲間同士でレベルの高いコミュニケーションを身につける

コミュニケーションの力はどんな場面でもつけられる

コミュニケーション能力という言葉が出ましたが、「ネットで」と言うと、必ず「コミュニケーション能力はどうなるんですか?」という質問が返ってきます。もちろん対面して楽しくおしゃべりすることは素敵ですよね。それは絶対に否定しません。なのでN高等学校ではニコニコ超会議を利用した文化祭や、職業体験など、リアルな場での体験も作っていきます。

でもよく考えたら、子どもたちは小中学校で9年間もコミュニケーションをやってきているんです。だけど、コミュニケーションって具体的に数字にできたり、目に見えたりするものではないので、「今日これをやって、明日これをやればコミュニケーション能力がつく」なんてノウハウは誰も持っていないんです。

例えばN高等学校でプログラミングを学んで、その仲間とオフ会で集まる――それもコミュニケーションじゃないでしょうか? コミュニケーションの力はどんな場面でもつけようと思ったらつけられるものです。むしろ熱中するものが共通している中でやり取りするほうが、よりレベルの高いコミュニケーションを生み出せるはずです。

実際会社で働き始めたら、おのずと限られた範囲の人との付き合いになりますよね。振り返れば、昔は中学を卒業して働いていた子がいっぱいいました。本来、義務教育とはコミュニケーションも含め、社会に出ても問題ない状態まで教育をするものだったんです。義務教育の後にコミュニケーションのための3年が必要かどうかは、人それぞれだと思います。

なので、N高等学校の説明会にいらしてくださった方には、N高等学校に入る入らないではなくて、そういうことを一旦立ち止まって考えてみる機会だと思ってくださいと伝えています。

仕事を持つことについて立ち止まって考えてみませんか?

コミュニケーション能力のことだけじゃなく、「働いている自分」「働いている自分の子どもの姿」についても一旦立ち止まって考えてみてください。日本の産業構造的にも「大学を出たけれども結局どうしよう」ということが起こっている。

海外をみればドイツでは、仕事か進学かを選ぶ教育制度になっています。学業成績の善し悪しで決めるのではなく、将来について真剣に考えて選択するんです。だから、進学ではなく仕事を選んでも、待遇がしっかりとしている。本来はそうあるべきで、そうでないと日本の産業構造が維持できなくなってしまうのではないでしょうか。もちろん教育だけで変えられるものではないですが、「ここでもう一度考えてみようよ」って、教育から提言することはできると思うんです。

N高等学校の職業体験は取って付けて並べたかのように見えるかもしれませんが、「実は職業っていろいろあるよね」「実はこんなところに行くと、こんな仕事があるんだ」ということを知ってもらいたいと思ってラインナップしています。

以前に海外で英語を学んで帰ってきた教え子が「鳥羽水族館に就職します」って報告に来たことがありました。私が「せっかく海外に行って英語を学んできたのに」って驚いたら、「あそこは外国人がたくさん来るから通訳が必要なんです」って言われて、感心したんです。そういった、実際どこにどんな仕事があるのかを知らない人が多い。でも実は自分の力が思わぬところで発揮できることっていっぱいある。それを体験してもらうのが職業体験なんです。

例えばイカ釣り漁の体験をして、もちろんイカ釣りのプロを目指したいって思ってもらってもいいんですが、実際に就労体験をしてみると、もっと知ることがいっぱいあると思うんです。船が港に帰って来て、港ではあんなことをする、こんなことをやっている――いろいろなことを知ることができると思います。

学校は、門を入って塀に囲まれた中だけではないんです。N高等学校は全国が教室です。説明会でこういったお話をすると、「職業体験がいいと思いました」とおっしゃっていただくことが多いんです。提案の中でも超アナログなので、N高等学校に興味を持たれた方にはどうなのかな?と思っていたんですが、意外や保護者の方が「あれは行かせたいです」とおっしゃるんですね。

私はやっぱり、仕事を持つってことは大事だと思っています。だから働くための何かを作ってあげたい。教育の真の目標はそれ以外ないと思います。「しっかりお金を稼いで税金を払うこと」。世の中に出て、仕事をして、みんなが税金を払っているからこそ、日本は成り立っている。それって当たり前のことなんですが、教育機関側から言うとなぜか嫌がられ、相手の心に刺さらなかったんです。でもいま聞いてもらえるのは、N高等学校が企業側からの発信だからこそだと思っています。

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インタビューした学校

学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校

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