vol.1:通信制高校のシステムを利用した「まったく新しい高校」(前篇)

生徒・先生の声

2016/01/20

進学のその先にある「さらに必要なこと」が提案できる学校

時代によって変わっていった「通信制高校が求められること」

私が初めて通信制高校に携わった17年くらい前というのは、「高卒資格が取れる」ということで通信制高校が次の時代に移り変わる時でした。それまでの通信制高校は、集団就職で地方からやってきた中卒生をターゲットにしていて、技能連携校や高等専修と組んだ「職工教育」の役割を果たしていたんですね。

そこから、全日制高校に通学することが難しい、不登校問題を抱えた人や高校中退者に対しての受け皿にもなろうという変革が起きたんです。この変革は多くの人から支持を得ました。「高卒資格を金で売る学校」という辛辣な言われ方もしましたが、それまで再チャレンジの場を与えられていなかった当時の高卒資格のない人にとって大きな選択肢となったことは事実です。

しかし、しばらくの間、通信制高校は高卒資格を与えるという機能で終わっていた気がします。ここ数年で大学受験にAO入試や推薦入試といったものが導入されて、幸いにして通信制高校からの大学進学も容易になってきました。これは非常に良いことだと思うんですよ。

今まで不登校で通学も困難だった子どもたちが「大学に行けるよ!」とワッと喜ぶ。学校に行けなかった子どもたちが、ちょっと元気になって、大学にも行けるようになった――その伸び幅はすごく大きいですよね。

ただし「ほんまもん勝負」の就職にはなかなか結びつかない。通信制高校に対する要求水準が上がってきて、今はまた変わっていく時なんじゃないかな、と思います。

好きなことを思いっきりできるのは高校の3年間

N高等学校の就職率を他校よりも高くしたいという話ではなくて、「高校生の時にこれだなということに挑戦してみて、自分の向いていることを見つけてみませんか?」ということなんです。好きなことを思いっきりできるのは、高校のこの3年間なんだから、自由にやりましょうよ、と。

それを話すと「こんな学校を待っていました!」と言う子が多いですよ。他の科目は全然ダメなのに理科だけはずば抜けているというような子、いますよね。漫画を描かせたらすごい、とか。しかし、子どもの時に「それだけはできる」というのは、なぜか眉間にしわを寄せられてしまう。いつから歓迎されるのかなって思うと、高校卒業後なんですよね。

例えば専門学校に通って美容師になりますって言っても、「え、髪のことだけやってるの!?」と非難されたりはしない。誰も悪いことだとは思いませんよね。だったら、義務教育と専門分野に進む間にある高校の3年間は、体験や経験をし、それを通して考え、選択する準備期間でなければおかしい。だから、高校生の期間は、過ごし方にもっと多様性があってもいいと思うんです。

元をたどれば通信制高校は、専門的な勉強をしながら高校卒業資格取得を目指すことのできる「技能連携校」のために作られた学校だったんですね。働きながらとか、職業について学びながらというスタイルだった。それが時代の要求に合わせて「通信」というものだけが独り歩きをしいったんです。それはそれでいいんですが、今は「さらに必要なことがあるよね」という風になってきている。

つまりN高等学校の魅力って、その「必要なこと」、つまり進学をはじめ、様々な分野を本格的に学べるコンテンツをKADOKAWA、ドワンゴという企業が母体だからこそ提供できるということなんですよね。

N高等学校の魅力は「大学受験から職業・農業体験まで」

通信制高校から難関大学を受験する子は、ダブルスクールで予備校に通っています。N高等学校ではそういった部分もまとめて提供したい。

学習参考書の出版社として約30年の歴史を持つKADOKAWA中経出版によるオリジナルの教材や、実力派講師によるコンテンツで、ダブルスクールをしなくてもレベルの高い受験指導を受けることができます。

目玉のコンテンツにプログラミング授業というものがありますが、これも実際に母体のドワンゴがプログラマーを必要としているから立ち上げているものなのでリアリティがある。この講座もどこかが出している教材をやらせたりという方法ではなく、一線で活躍をしているドワンゴのプログラマーが講義をします。

一般的な通信制高校では何かをしたい生徒に対して、外部の窓口を紹介するだけで終わってしまうことがあると思うんですが、そういった姿勢ではなくて自ら何かを提供していきたい。

バンタンはファッションやフード、美容、エンターテインメントなどのプロフェッショナルを育てる学校ですが、そのバンタンが昨年KADOKAWAのグループに入りました。そのことからも様々な講座をオリジナルでご提供できる力があることがおわかりになると思います。

オリジナルということに必ずしもこだわらずに、外の良いものはどんどん取り入れるつもりですが、生徒に丸投げすることはせずに、N高等学校のスタッフが絶対に何らかの形で関わるようにしていきます。

N高等学校は「大学受験から職業体験・農業体験まで」という両極端のことを言っていますが、その間を埋めるコンテンツには際限がない、そこに私はとても魅力を感じます。

時代に合わせた教育を提供していきたい

N高等学校がこのようなことを言って、説明会で理解を示してくれる方が多いのは、KADOKAWAに実業があり、会社としても世の中に合わせた新しいサービスを提供し続けているからです。もしN高等学校の母体が普通の学校法人だったら、ここまで理解いただけなかったのかもしれません。理念だけでなく実の部分をきちんと提示できる。「思いっきりプログラミングをやってみない? ここにいる人はそれで身を立てている人もいるよ」って言えるのは大きいんですよ。

「リアルで対面しなくても、ネットを活用して勉強できるんですよ」ということについても同じです。これは一般的な通信制高校が言うと、説得力に欠けてしまいがちなんですがN高等学校が言うと説得力があるのは、実社会でネットを活用してKADOKAWAという企業体が「こういう学び方でも大丈夫ですよ」と言っていることになるからです。

グループ会社のドワンゴではニコニコ動画やニコニコ超会議などを通して「ネットとリアルをどうつなぐか」ということをすでに企業として実践していますよね。その企業が「ネットは現実社会で必要なコミュニケーション能力のひとつなんですよ。それを高校教育に組み込むことは必要なんじゃないでしょうか」ということをお話すると、納得される親御さんが多いんです。

そういった期待に応えられるように、N高等学校も、KADOKAWAが長い社歴の中で時代に合わせてイメージを変えコンテンツを提供してきたように、時代に合わせた教育を提供していきたいですね。

次のページ
同じものに打ち込む仲間同士でレベルの高いコミュニケーションを身につける

この記事をシェアする

インタビューした学校

学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校

詳細情報を見る