2026/09/08

【大人の失敗から学ぼうvol.15】「ブス売り」をやめたら人生が好転(YouTuber・曽和美佑さん)

先輩に聞く 

子どもが自分の見た目に悩んでいたり、SNSで他人と比べて自信をなくしていたりするとき、大人はどんな言葉をかければよいのでしょうか。

さまざまなシーンで活躍する大人たちに、過去の失敗談を伺うこの連載。今回は、「そわんわん」の愛称で活躍するYouTuberの曽和美佑(そわ・みゆう)さんにインタビュー。

かつては自ら「ブスキャラ」を売りにして、ABEMAのバラエティ番組『ブステレビ』にも出演した曽和さん。しかし、その自虐を発信することが誰かを傷つけることになると気づき、ブスを売りにすることをやめる決断をしたそうです。
その経験をもとに書かれた著書『世の中、顔か?』(クロスメディア・パブリッシング)が7月に発売されました。「ルッキズム(外見で人を判断する価値観)が蔓延する中で、自分に自信が持てない人も、見た目にとらわれすぎずに自分の本当の良さに気づいてほしい」と話します。

自虐ネタが誰かを傷つけるかもしれない

—— 曽和さんは18歳からYouTuberとして活動を始めましたが、それ以前にも、自身の見た目を自虐ネタにするようなことがあったのですか?

自分でそうしようと思ったわけではなく、周りからブスだと思われていることは何となく感じ取っていて、それなら人に言われるよりも自分から言ってしまったほうが傷つかずにすむと思っていたのかもしれません。そうふるまうほうがラクだったということですね。

—— 自分の見た目にコンプレックスを感じていたのでしょうか。

かわいくないのはわかっていましたが、コンプレックスということでもなかったと思います。もともと自分が人から悪く言われることをあまり気にしない性格ではあるので、自虐的にふるまうことに疑問を抱くこともなく、当たり前になっていました。「イジってもいいブスキャラ」が自分だと思っていたんです。YouTubeを始めたときも、ブスがメイクする動画や、ブスがポジティブに頑張っている姿に需要があるのではないかと思っていました。ABEMAの『ブステレビ』に出演したときも、自分にぴったりだと思ってオーディションを受けたんです。

—— 番組に出演したときに、「ブス売り」に疑問を感じたのですよね。

自分がイジられることはいいのですが、他の人が自虐しているのを目の当たりにすると、「本当に傷ついていないの?」「大丈夫?」と心配になってしまうんですよね。他の出演者を見て、「自分をそんなに下げる必要があるのかな?」と疑問を感じてしまったんです。

—— ご自身のYouTubeやSNSへの投稿に対する反応でも、同じように感じることがあったそうですね。

「自分がこの人の顔なら死にたい」、「どうしてそんな見た目なのに元気でいられるのか」などと書かれることがありました。それを読んで私が傷つくことはなかったのですが、どうしてそう考えてしまうんだろうと背景を考えてみると、私と同じようにかわいいと言われない人たちが、他人の自虐ネタで傷つくこともあるのではないかと気づきました。

—— 『ブステレビ』で他の出演者の方のふるまいを曽和さんがポジティブに受け止められなかったのと同じかもしれませんね。

曽和さんの新著『世の中、顔か?』(クロスメディア・パブリッシング)
https://book.cm-marketing.jp/books/9784295412304/

うまくいかないのは、本当に外見のせい?

—— 「ブス売り」をやめようと決めてから、発信内容も意識的に変えてきたのでしょうか。

以前は自然とブスキャラとしてふるまってしまっていましたが、それで傷つく人もいると気づいて、自分のことを下げないように意識しました。その上で、美容やファッションなど、自分のチャレンジしたい分野でモデル活動をするなど、きちんと活躍して結果を出すことも大切だと考えました。

—— 世の中には、思った以上に見た目に振り回されてしまう価値観が広がっていると改めて感じたとか。

たとえば、「ダイエットしたらもっと素敵になれる」とか、「かわいくなったら彼氏ができる」という考えを助長するような広告がたくさんありますよね。それは、全体的に「太っている人やブスな人は悩んでいる」という前提があるからだと思います。そのコンプレックスを刺激して商品を売ろうしているわけですが、実際にはダイエットや整形をしても状況が何も変わらなかった人もいますよね。それは、うまくいかない理由が見た目ではないからなのかもしれません。それでも見た目が悪いからだと考えてしまうのは、自分の内面と向き合うのがこわいからなのかな、と思うんです。

—— 友達ができない、恋人ができない、自分に自信が持てないといったことを、見た目のせいだと決めつけても、問題は解決しないということですね。

もちろん見た目によって判断されることも世の中にはたくさんあります。でも、それは本質的な問題なのかを考えたほうがいいと思うんです。たとえば、恋人ができないことを見た目のせいだと思っている人は多いと思いますが、外見だけを好きになってもらっても満たされないですよね。好きな人には自分の中身を受け入れてほしいものだと思うのですが、見た目だけにとらわれすぎて、幸せになれない人も多いのではないでしょうか。

—— 本当に叶えたいことは何なのか、見失わないことが大切ですね。自虐をやめてから、ご自身の環境も変わってきましたか?

いいことばかりですね。自分を大切にするとはどういうことかをしっかり考えて、当たり前にケアすることができるようになりました。同時に、本当にやりたかったこと、憧れていたことがひとつひとつ叶っていきました。見た目がどうであれ、自分の軸をしっかり持っていれば、できないことはないと改めて実感できましたね。

—— 外見に関する情報があふれている今だからこそ、惑わされずにいたいですね。

曽和さんのYouTubeチャンネル
www.youtube.com/@_wanco02m

人が決めた定義で自分を評価するのはやめよう

—— 現在、自分の見た目に悩んでいる中高生たちに、アドバイスをいただけますか。

「見た目がすべてではない」と言っても、簡単には割り切れないですよね。学校という限られた社会の中にいると、誰かの何気ないひと言や、他人の反応に敏感になってしまうのも仕方がないと思います。でも、学校が社会のすべてではありません。学校生活の中で自信を喪失したり、居心地が悪かったりするのなら、たまたまその環境が自分に合っていないだけと考えてほしいです。自分の外見のせいでうまくいかないと考えるのではなく、自分は本当はどんなことをしたいのかを考えながら、それが叶えられる環境を探していけばよいと思います。

—— 自分自身の評価を外見だけで決めつけてしまうのはもったいないですよね。

最近は「かわいい」の定義も狭くなってきている気がします。SNSでは、「人中(鼻と唇の間)の長さが何センチ以内でなければ美人ではない」といった勝手な定義が広まったりもしています。でも、誰かが決めた狭い定義に自分の顔を近づけようとみんなが考えたら、全員が同じ顔になってしまいますよね。また、たとえその定義に当てはまっている人でも、「今日の私、かわいくない」と思うことはありますし、人生の中でうまくいかないこともたくさんあるはずです。誰もがそうした揺らぎの中で生きているわけですから、常に自分に自信を持っていることがいいことだとも思いません。

—— 確かに、自分に自信がなければいけないわけではないですね。

もう少しみんな、今のありのままを楽しんで、心を休ませることを考えてもいいのではないかと思います。中高生のみなさんには、うまくいかないときも悪い方向に考えすぎず、人に頼ったり、そのときに誰かがくれた優しさに感謝したりしながら過ごしてほしいです。誰かに助けてもらった経験が、他の誰かを助ける力に変わっていったり、人との縁から新しい世界が広がったりするので、「見た目で人から愛される」ことよりも「自分から人に心を開いていく」ことに意識を向けることが大切なのではないかなと思います。

—— ありがとうございました。

編集部まとめ:曽和さんの経験から考えたいこと

自虐は自分だけでなく、同じ悩みを持つ誰かを傷つけることがある

「見た目のせい」と決めつける前に、本当に望んでいることを考える

学校やSNSの価値観だけで、自分の良さを判断しなくていい

取材協力

曽和美佑さん

1999年生まれ。和歌山県出身のYouTuberで、「そわんわん」の愛称で親しまれる。友達に話すように語りかける動画が話題になり、「お友達系 YouTuber」として20代から40代まで幅広い視聴者に支持を得ている。ポジティブで飾らない生き方が「なんか元気出る」「癒される」と人気。著書に『すべてはウチらの頭の中に』、『そしてウチらはつながっていく』(共に KADOKAWA)などがある。

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。
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