2026/07/17

「今の学校、居心地が悪い……」中高生の転校、うまくいくポイントは?

専門家に聞く 

学校の雰囲気が合わない、クラスメイトとなじめない、勉強の進度についていけない——。今通っている学校に居心地の悪さを感じている中高生にとって、「転校」は選択肢のひとつです。
ただし、転校が合うかどうかは「何がつらいのか」によって変わります。中学生なら学校以外の居場所を広げること、高校生なら在籍を切らさず転入学を検討することが、状況を好転させるきっかけになる場合があります。

中学校と高校の転校はそれぞれ、主に次のようなパターンに分かれます。

[中学校]

  • 住民票を移して、新しい住所の学区の公立中学校に転入する
  • 同じ自治体内で学校を変える「指定校変更」と、自治体をまたいで通う「区域外就学」で、住所を変更せず公立中学校へ転入する(審査・承認が必要)
  • 欠員が出るなどで生徒募集をしている私立中学校へ出願する

[高校]

  • 今の学校に席を置いたまま別の学校に移る「転入学」
  • 一度退学してから別の学校に入り直す「編入学」
  • ※基本的には定員に空きが出るなどで生徒を募集している学校が対象となる

では、受け入れ先の学校が見つかり、手続きが可能だとして、転校するかどうかをどのように判断すればよいのでしょうか。また、うまくいくパターンとそうでないパターンには、どのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「高校は選び直せる。」をコンセプトに掲げ、全国から転校できる通信制サポート校「ユイロ高等学院」学院長で、『マンガと図解でイチからわかる! 転校の教科書』(すばる舎)を出版した松下雅征(まつした・まさゆき)さんに、転校の考え方やポイントについて教えていただきます。

中学生は学校だけでなく、学びの場を広くとらえてみよう

—— 転校といっても、中学生と高校生とでは、その手続きやハードルが異なると思いますので、それぞれ伺っていきたいと思います。まず、中学生が転校によって状況が好転するケースを教えてください。

中学生の場合は、別の学校に移籍する転校ではなく、フリースクールなど学ぶ場所を変えるという意味での転校のほうがうまくいくケースが多いと思います。学校に合わず不登校になってしまう生徒の多くは、関わる場所が学校と家庭しかないことが多いんです。学校にしんどさを感じていても、保護者に言いづらかったり、言っても「登校しなさい」と言われてしまったりなどで、家庭にも居心地の悪さを感じるようになり、居場所がなくなっていきます。そうした負担からさらに学校に行けなくなっていく悪循環も生まれやすくなります。そのため、転校よりも第三の居場所をつくるほうが好転するケースが多く見受けられます。

—— 自分がつらくない場所を見つけることが優先になるのですね。

はい。フリースクールや地域のスポーツチーム、ボランティアが運営する居場所など、居場所が複数あることで精神的な安定を感じられる生徒が多いです。ユイロ高等学院でも以前、オンラインのフリースクールとして中等部を運営していましたが、そこに来ていた中学生たちも、転校するのではなく、中等部の先生たちと話したり、進路相談をしたりしながら、次の進路を前向きに考えていけるようになっていました。現在は中等部を廃止し、小学生から大学卒業・就職までを対象に、オンラインで進路の専門家から進路選択の個別サポートが受けられる「勉強を教えない家庭教師」として運営しています。

—— 広い意味での転校として、フリースクールなど別の学びの場所を考えるときのポイントはありますか。

大人が「このフリースクールがあなたの居場所です」と用意したからと言って、生徒はすぐにそこに居心地の良さを感じられるわけではありません。「不登校の子というレッテルを貼られたくない」「自分が来る場所じゃない」などと構えてしまう生徒もいます。大切なのは、そこに自分の役割があるかどうかだと思います。私が設立した一般社団法人セタプロでは、「セタプロ部」という世田谷区に住む小中学生対象のプログラミング部を運営しているのですが、そこで以前、カレーパーティーを開催しました。そのとき、包丁を持つことが苦手だった不登校の生徒が料理を担当することになり、うまくできたことで自信がつき、他の子たちと話せるようになったんです。このように、自分の役割があることで子どもたちは居場所をつくっていきます。

—— たしかに、ただ「自由に過ごしていい場所」では、ずっとお客様感覚になってしまうかもしれませんね。

ユイロ高等学院では、教育の目的を「自律」としています。ただ、世間でいう自律は「一人で何でもできること」ですが、ユイロでは「社会で役割とつながりをつくれる人」ととらえています。自律したら誰にも頼らないのではなく、自律するからこそ、何か役割を持ち、人とつながり、頼れる先をつくっていくことが必要だと考えています。最初から役割を自分で見つけるのは難しいですが、まずは与えられた役割を果たすことから始めて、人とつながりをつくっていくことで、社会の中に自分の居場所を見いだしていけるようになるはずです。

—— ということは、生徒自身が「自分の役割がありそうかどうか」という観点で第三の居場所を探っていくのもよさそうですね。

転校の手続きや考え方などが詳しくわかる『マンガと図解でイチからわかる! 転校の教科書』(すばる舎)
https://www.subarusya.jp/book/b675309.html

高校生は学校だけを見ず、自分自身を知ってから選択しよう

—— 高校生の場合は中学生と比べて、私立・公立ともに、募集があれば全日制、定時制、通信制など転校の選択肢は多いと思います。どのように考えればよいでしょうか。

まず、転校であろうと通常の進学であろうと、「ここに行けば成功します」という正解はないことを前提に考えていきましょう。多くの人は正解を求めて、転校したい学校のほうばかり見てしまいます。偏差値や卒業生の進路などに目を向けて、自分に目を向けていないんですね。自分が納得できる進路選択には、まず自分を知るための活動があり、次に自分を知り、最後に自分に合いそうな場所を選ぶという順番があります。自分が他の人とどう違うのか、どんな考え方や得意・不得意があるのかに注目して、そこにフィットする場所を選ぶようにするのがおすすめです。

—— 自分を知るための行動とは、具体的にどうしたらいいのですか。

特別なことをしなくても、日常の活動でかまいません。食事、運動、勉強、睡眠などの活動の中で、自分はすぐに物事に取りかかるほうなのか、計画を立ててから動くのか、継続する力はどうかなど、自分の特徴を理解して、いろいろな学校を見て合いそうな場所を選んでほしいと思います。そのうえで、欠員募集があり、転入試験に合格できそうな学校に絞っていくとよいでしょう。転校でうまくいかない事例の多くは、保護者が「いい大学に行けそうか」「いい就職ができそうか」「学力が伸びそうか」と学校ばかりを見て、子どもを見ずに決めてしまうケースです。保護者はまず、子ども自身がどのような場所に向いているか、よく観察してみてください。

—— 高校の場合は転入学と編入学がありますが、どちらがよいのでしょう。

できれば今の学校を休学・退学せずに次の学校に移る転入学のほうがよいです。よくあるのが、学校に行けなくなったため一度休学や退学をしてしまい、そのうえで別の学校を考えるケースです。ただ、そうすると在籍期間を引き継ぐときに、空白期間ができてしまいます。高校の転校の場合、それまでに取得した単位だけでなく、在籍期間も引き継ぎます。高校を卒業するには、原則として74単位以上を修得し、3年以上在籍することなどが必要です。通信制高校では、特別活動への参加も求められます。一度休学や退学をすると在籍期間をうまく引き継げず、次の高校で卒業が半年以上遅れてしまうことが多いです。ですから、できるなら転入学を選びたいところです。

—— 授業に出席できていなくても、まずは籍を抜かずにさまざまな選択肢を考えたほうがいいのですね。ただ、すでに学校を何日か休んでしまって、出席日数が足らず進級できなくなりそうなど、切羽詰まった状況になっている場合もあるかと思います。そうした場合も、休学してじっくり考えるなどはしないほうがよいのでしょうか。

その場合は、まず転校を先に判断してしまったほうがよいと思います。「行かなくてはいけないのに休んでしまう」「このままでは進級できない」などネガティブなことで頭がいっぱいになった状態では、何も冷静に考えられないからです。自分が何をしたいか、自分はどんな考え方をするのかなど、自分を知る行為は、ストレスのない環境でなければできません。まずはストレスを取り除くことが先決なので、どうしてもその高校にいなければいけない理由がない限り、まず転校を考えてみるのがよいと思います。

—— 高校は中学校までと比べて選び直しのハードルが低いので、選択肢はたくさんあると考えて、まずは不安な状況から脱出することを優先したいですね。

転校判断のカギは「自分と周囲」か「自分の中でのギャップ」か

—— では、転校したほうがいいのかどうか自体は、どのように判断すればよいのでしょうか。

学校に対してモヤモヤした気持ちを抱えている場合、まずはそのモヤモヤの正体を考えてみましょう。大きくは2パターンあると思います。

  1. 自分と周りとの違い……「みんなはこうしているけれど自分はこうしたい」「みんなと同じようにするのが難しい」
  2. 自分自身のずれ……「自分はこうありたいけれどできていない」

①は、たとえばみんなは毎朝同じ時間に授業を受けることが苦ではないけれど自分は苦痛、決められた時間割どおりに学ぶことに違和感がある、周りと同じスピードで進めるのではなく自分のペースで学びたい、などです。この場合は、環境を変えることでモヤモヤが解決される可能性があります。しかし②のように自分自身の理想と現実にギャップを感じている場合には、環境を変えることが必ずしもモヤモヤの解消につながるとは限りません。

—— まず、環境が変われば解消するものなのかどうかを見極めることが必要なんですね。

保護者がそこを観察できずに「転校すればやり直せる」と思い込んで判断してしまい、転校しても同じ状況になってしまうケースもよくありますので、注意が必要です。いずれにしても、生徒自身がモヤモヤの正体を理解して、転校するかどうかを決めることが大切です。保護者など周囲の大人の役割は、そのモヤモヤを言葉にできるようサポートすることです。

—— 最後に、現在転校を考えている中高生にメッセージをお願いします。

学校に対してモヤモヤを感じている場合、そのモヤモヤにむりやりフタをしても、いずれまたどこかで出てきてしまいます。まずはその正体を探ってみてください。それが自分と周りとの違いであれば、今後進路を選ぶ場面で大きな武器になりますので、プラスにとらえていきましょう。違いは、人から選ばれる理由になるからです。学校だけでなく社会に出てからも、人にはいろいろな道があっていつでも選び直せます。そして、自分にあった進路を選ぶために、自分を知ること。自分を知るために、毎日を大切にすること。進路選びは答えのない、難しい問題。すぐに解決はできないけど、選択肢はいつも複数ある。いまの学校だけじゃない。そう思えるだけで、毎日が少しラクになるはずです。

—— ありがとうございました。

転校を考えるときの見極めポイント

周囲との違いがつらい場合は、環境を変えることで楽になる可能性がある

自分の理想と現実のギャップが原因の場合は、転校だけで解決しないこともある

保護者は結論を急がず、子どものモヤモヤを言葉にするサポートをする

転校を考えるときは、学校ごとの通学日数、学習サポート、転入できる時期などを比べてみることも大切です。まずは情報収集として、自分に合いそうな通信制高校・サポート校を確認してみましょう。

取材協力

松下雅征さん

株式会社ユイロ 代表取締役/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡市在住、一児の父。早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。教育系上場企業、コンサルティング会社を経て独立。「ちがいを、描け。」をミッションに掲げ、2022年に株式会社ユイロを創業。同年、ユイロ高等学院を創立。「選び直せる学校」や「勉強を教えない家庭教師」を通じて、一人ひとりのちがいを起点に進路を描く新しい教育の文化づくりに取り組む。著書『13歳からの進路相談』シリーズは全国の学校や図書館で多数採用。
株式会社ユイロURL: https://yuiro.org/

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。
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