
「通信制高校から大学進学はできるのだろうか」
「総合型選抜に興味はあるけれど、何を準備すればいいかわからない」
そんな不安を持つ方もいるのではないでしょうか。
近年、通信制高校から総合型選抜を利用して大学進学を目指す生徒も少なくありません。
大学入試では総合型選抜の実施校・合格枠が拡大しており、2025年度に四年制大学に入学した学生のうち19.5%が総合型選抜での合格者となっています。短期大学ではさらに高く、41.0%です。(参考:令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要)
総合型選抜とは、従来の学科試験をもとに学力のみで合否を決めるものではなく、面接や小論文、プレゼンテーション、グループディスカッションなどを通じて、それまでの活動実績や意欲、個性などを多角的に判断して合否を決める入試方法です。学校推薦型選抜とも異なり、学校長の推薦は不要で、高校での評定の提出が不要な大学もあります。「学校での勉強」に苦手意識を感じてきた生徒たちにもチャンスが広がる入試制度として注目されています。
それでは、総合型選抜を使って大学進学にチャレンジする場合、高校生はどのような準備をしておくべきなのでしょうか。通信制高校の生徒ならではの強みはあるのでしょうか。今回は、総合型選抜に特化した対策を実施している専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の、竹内健登(たけうち・けんと)代表にお話を伺ってきました。
総合型選抜の第一歩 自己分析と大学研究で進路を探していこう
—— 総合型選抜対策の専門塾として2020年から多くの高校生を指導していらっしゃいますが、通信制高校の生徒も多いのでしょうか。
年々増えていますね。通信制高校を選んだ背景もさまざまで、人間関係などから不登校を経験した生徒や、海外留学をしやすい環境、自分のやりたいことに打ち込める環境として通信制高校を選んだ生徒などが当塾に通っています。
—― 実際、大学への進学はうまくいくのでしょうか。
通信制高校から大学に進学した生徒では、これまで立教大学、中央大学、上智大学、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、日本大学などの実績があります。また、海外の大学に進学した生徒もいます。
—— 具体的には、どのような指導をされているのですか?
まずは自己分析と大学研究が大きな柱となります。自己分析をしながら、自分の興味や得意なことと大学で学びたいことをリンクさせていき、その分野を深掘りしていきます。自分には何も興味や得意なことがないと思い込んでいる生徒も多いのですが、しっかり自己分析をしていくと、何かしら「これなら好き」「これは日頃からやっている」といったことが出てきます。その上で、たとえばゲームが好きな生徒なら、ゲームから社会学や心理学、ゲームをビジネスととらえて経済学や経営学などにも広げていくことができます。海外のプレイヤーと交流しているなら語学の分野もいいかもしれません。自己分析で出てきた内容から、関連する本を読んでもらうなど深掘りをして、自分が携わりたい分野をまず見つけていきます。
—— 漠然と「○○大学に入りたい」と決めていくのではなく、目的意識を持って進学を目指してもらうのですね。
総合型選抜では、何に興味を持ち、それをどれだけ深掘りしてきたかがポイントになります。ですから、いかに目的意識を持って行動するかが重要なんです。
—— 自分の興味分野にリンクする志望校を見つけたとしても、一般入試と同じように倍率や評定によっては厳しい場合もありますよね。
大学や学部によって倍率も出願条件も異なりますので、自分がチャレンジできそうか、あらかじめ調べておくことも必要です。総合型選抜専用のナビサイトがいくつかあるので、まずはそれらのサイトを使って調べることをおすすめします。たとえば、「年内入試ナビ」(https://nennai-nyushi-navi.jp/)というサイトでは、「出願&入試条件」からも検索することができ、合格できそうな大学を絞り込んでいくことができます。登録すると大学からスカウトが来ることもあります。こうしたものを利用しながら、自分の興味と大学をリンクさせていき、目標を定めます。
—— 条件がわかれば、それに向けて準備もしやすくなりますね。
総合型選抜で差がつく ボランティアや資格、インターンなどの活動実績
—— 行きたい大学や学部、学科が決まったら、どのように準備を進めていくのでしょうか。
総合型選抜では、興味のある分野でどのような活動をしてきたかが重視されますので、活動実績をつくっていきます。福祉に興味がある生徒ならホームレスの人々への炊き出しボランティアに携わったり、経営に興味のある生徒なら、企業が実施する高校生インターンに参加したり、学校の授業だけではなく自発的に行動を積み上げることが大切です。
—— 資格の勉強でもよいのでしょうか。
もちろんです。英検(実用英語技能検定)は多くの大学で有利になるので、できるだけチャレンジしたほうがいいと思います。IT系の資格なども有効です。興味分野に関する本をたくさん読んで、学問を深掘りしていくのもよいと思います。総合型選抜はバランスよく何でもできる学生というよりも、何か尖ったものを持っている学生を求めている場合が多いので、何かに特化した行動や学びを進めていきましょう。
—— 通信制高校の場合は自分の時間を作りやすいので、その点では有利になりそうですね。
はい。活動実績をつくったり、専門的な学びを深掘りしたりするのにはよい環境だと思います。私が見てきた生徒たちも、通信制高校に通いながらバレエ留学をしたり、IT分野で起業したりするなど、得意分野に打ち込んで実績を作っていきました。ただし、いわゆる上位校の場合は特に、高校の出席日数も条件に入っていることが多く、注意が必要です。通信制高校は自分のペースで通えるのでそれほど欠席せずに済んでいても、たとえば高1までは全日制高校で欠席が多く、高2から通信制高校に転入した生徒の場合、高1の間の欠席が不利になることもあります。これもあらかじめ条件をしっかり見ておくとよいですね。
—— 面接や小論文も、しっかり準備しておく必要がありますよね。
面接では、「なぜ通信制高校を選んだか」を質問されるケースが非常に多いです。そのときに、「メンタルの調子を崩してしまって」「学校の先生と相性が悪くて」など、マイナスに受け取られそうな答えをしないことが大切です。「これがやりたいので通信制高校を選びました。そしてこんなことをやってきました」とポジティブに話せるように、準備をしておくことが必要ですね。他者とのコミュニケーションに苦手意識がある生徒なら、受験でグループティスカッションのある学校は避けるなども検討したほうがいいと思います。また、そういった生徒は他者との共同作業が必要な学問よりも個別に突き詰めていく学問のほうが向いているかもしれないので、文学や哲学などのセミナーに行ってみるなど、受験の条件に応じて切り口を探っていくのも手です。
—— 準備の間に、出口を考えながら自分の興味分野を探ったり、広げたりしていくと、どこかでフィットするものが見つかるかもしれませんね。
準備する過程で目標が変わっていく生徒は少なくありません。最初は経済学部を考えていたけれど、深掘りしてみたら法律のほうに興味が変わってきたというケースも多々あります。そもそも高校生は、世の中にどのような学問があるのかあまり知らず、自分が本当に向いているものは何なのかすぐにわかる人はほとんどいません。本当はすべての大学で1年目はリベラルアーツ(言語能力や論理的思考力、幅広い教養を身につけること/一般教養)にして、そこで自分の興味分野を見つけてから専攻を決めていくほうがいいと思うのですが、現状、日本の大学はそうなってはいないので、進学に向けて自分なりに学びながら、目標を調整していくとよいですね。

通信制高校の強みを活かす 今から始めたい受験準備
—— 大学進学を考えている通信制高校の生徒たちが、今すぐにでもやっておくとよいことはありますか。
高校1、2年生であれば、受験までまだ時間があるので、じっくり興味のある学問を見つけてほしいです。ただ、どのような学問があるか知らない人が多いと思うので、大学のオープンキャンパスに行くことをおすすめします。少しでも興味のある分野が見つかったら、本を読んでみたり、その分野に関わる活動に足を運んだりしてみてください。「ここまでは自分で学んできたけれど、この先は大学で専門的に学びたい」と言える状態に持っていきましょう。何が得意か模索中であれば、1、2年生のうちに英検などを先に受験しておくのもおすすめです。3年生なら、小論文など提出する書類の練り込みを夏までにしっかり進めていってください。
今から始めたい総合型選抜対策
オープンキャンパスに参加する
興味のある分野の本を読む
ボランティアやインターンに挑戦する
英検などの資格取得を目指す
志望大学の出願条件を調べる
—— まだ漠然としているなら、情報収集をしっかり行うところからですね。
通信制高校には総合型選抜に向けて効率よく準備ができる環境があります。バランスよく勉強することは苦手でも、何かに特化すると力を発揮できる学生が求められているので、ぜひ希望を持って挑戦してほしいです。
—— ありがとうございました。
取材協力

ホワイトアカデミー
https://whiteacademy-ao.com/竹内健登さん(Avalon Consulting株式会社 代表取締役)
生徒の志望する進路や目標大学に合わせた特化型カリキュラムを作成、社会人のプロ講師がマンツーマンで指導を担当。オンライン受講も可能な総合型選抜に特化した専門塾。
<取材・文/大西桃子>
この記事を書いたのは

ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。




