勉強するとノリが悪くなる!? 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』

本などから学ぶ

2017/06/06

私たちは何のために勉強するのだろうか?

「いい高校や大学に行くため」「将来の選択肢を広げるため」と言われても、しっくりこない人もいるだろう。

そんなあなたにぜひ読んでほしい本が、哲学者の千葉雅也さんが書いた『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文芸春秋)だ。

▼『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文芸春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163905365

この本を書いたのはどんな人?

筆者の千葉さんは、立命館大学大学院の先端総合学術研究科の准教授で、フランス哲学を専門にしている。

これまで哲学者ドゥルーズを論じた『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)や、ツイッターで著者がつぶやいた内容をまとめた『別のしかたで ツイッター哲学』(同)などを出版し、話題になった。

そもそも勉強って?

「はじめに」の章には、こんなことが書かれている。

深く勉強するというのは、ノリが悪くなることである。

――『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文芸春秋)p12より

筆者によると、深く勉強するというのは、その場の流れに身をまかせずに立ち止まることなので、ノリが悪くなるという。

また、そもそも勉強とは「獲得」ではなく、勉強によって自分が変化する(ある部分は喪失してしまう)ことだという。つまり、「いまは日本語しかわからないけれど、英語も話せるようになろう」と勉強すると、これまでと同じ自分に英語のスキルがプラスされるのではなく、英語を話せるようになったことで「日本語だけを理解していた自分」を失ってしまうことなのだ。

なんだか「勉強」に対するイメージが変わってきた……という人もいるのでは?

勉強はどんな人におすすめ?

千葉さんは「いまの自分のノリを邪魔されたくない、という人は、この本のことは忘れてください」「勉強は、誰彼かまわず勧めればいいというものじゃありません」と書いている。では、勉強はどんな人におすすめなのだろうか?

単純にバカなノリ。みんなでワイワイやれる。これが、第一段階。
いったん、昔の自分がいなくなるという試練を通過する。これが、第二段階。
しかしその先で、来るべきバカに変身する。第三段階。

――『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文芸春秋)p14より

千葉さんは「勉強とは、自己破壊である」とも言っている。深く勉強することは、第一段階にいる自分を破壊し、第二段階に進めること。つまり、「いまいるノリにいたくなければ、深く勉強して、いまの自分を破壊する」という選択肢があるともいえるだろう。

あなたはいま、クラスや家で毎日を楽しく過ごしているだろうか? それとも、「居心地が悪い」「いまとは違う自分になりたい」と思っているだろうか?

社会では空気を読む能力、ノリがいい人柄は必要だ。学校生活では、なおさらグループごとの空気を読むのが必要な場面もあるだろう。けれど、もしもいまの環境から脱出したいと思ったら、勉強があなたの助けになるかもしれない。

「勉強」に興味が出てきたら……?

ノリは悪くなるかもしれないが、いまの自分を変えたい、破壊したい。もしくは、学校も家族もテレビ番組も、何もかものノリがいまの自分に合わない。もしもあなたがそう思ったら、どうすればいいか。

まずは本書を手に取り、自分はこれからどう生きていきたいのかを考えながら本を読んでみよう。この本を読むこと自体が、筆者の言う「深い勉強」になるはずだ。

P173から始まる第四章「勉強を有限化する技術」では、「読書の技術」「ノート術」「書く技術」など、より具体的な勉強の仕方を説明している。また、p182「教師は有限化の装置である」には、教師や学校の授業と向き合う上でのヒントも書かれている。

私たちは死ぬまで同じノリで生きていけるだろうか? きっと、数年ごとに環境が変わり、その時々で、自分を変化させざるを得ないだろう。そのとき、自分をどう破壊し、どう生まれ変わらせるか。「深い勉強」を通じて考えていきたい。

(松尾奈々絵/ノオト)

<記事で紹介した本>

▼『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(千葉雅也著/文藝春秋)

http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163905365

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2017年6月6日)に掲載されたものです。

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