自習のコツってなんだろう? YouTube、SNS、アプリを味方にする方法

専門家に聞く

2020/06/09

多くの学生が自習せざるを得ない状況を経験した2020年。しかし、「自宅だと気が散って、集中できない」「一人だと勉強が進まない」と感じた方もいたのではないでしょうか。

しかし、「自習ができる力」は、この先どのような環境の変化があったとしても、必ず強みになります。

どうすれば効果的に自習できるのか。自習のコーチングを行う「センセイプレイス」学習責任者の馬場祐平さんと、学習管理アプリ「Studyplus」のプロダクト責任者・島田豊さんに、中高生でも実践できる金銭的な負担を抑えた自習のコツについて伺いました。

学習プランはネットに、苦手克服のヒントはYouTubeに

高校中退後、自習で早稲田大学政治経済学部に合格した経験を持つ馬場祐平さん。「自分のものにできれば、自習はすごく効果的。でも、とても難しい」と語ります。

自習のコーチングを行う「センセイプレイス」学習責任者の馬場祐平さん

「学校はみんなで同じ授業を受けるため、自分の学力や勉強したい範囲と合わないことがあります。でも、自習なら、自分に最適化されたカリキュラムで勉強できる。これが自習の最大のメリットです。目指すゴールはどこか、そのために今の自分に足りないのは何かを考え、自分を“主人公”として勉強を進めていくのが自習なのです」

やりがいがある一方、自分でカリキュラムを決めたり、苦手な分野を克服したりするのは、なかなか難易度が高そうです。

「まず自習を成功させた人がどのような道を辿ったのか、どのようなステップを踏む必要があるかをインターネットで調べるといいですよ。たとえば受験生なら、『高校3年生5月 やるべきこと』などで検索すれば、その時点でやるべきことや志望校合格の道のり全体像なども把握できます。学習プランもたくさん公開されているので、参考にするといいでしょう。ただし、その際、自分に100%合ったプランを求めないこと。人によってスタート地点の学力も違うし、完璧なものは存在しない。なので、まずは仮の目標を決めてやってみることが大切です」

自習には、もう一つの注意点は、勉強でつまずいた時に、自分で立ち上がらなければならないこと。

「わからないところが出てきた時に、自習だと解決できずに挫折してしまうことがよくあります。そんな時は、YouTubeの勉強動画がおすすめです。私もYouTuberとして教育系の動画をアップしていますが、動画は情報量が多くてわかりやすいし、受験のプロたちが、ほとんどの悩みや疑問に答えてくれています。ただ、関連動画が次々に出てくるので、夢中になって夜更かししないように注意してください」

勉強のプランも、わからないところの解説も、インターネットでほとんど解決できる。とても便利ですが、誰かに相談したい時はどうしたらいいのでしょうか。

「おすすめの相談相手は先輩ですね。受験生なら、志望校に進学した先輩に相談するといいですよ。部活の先輩や友達の知り合いなど、何かしらつながりのある人なら、SNSですぐ連絡が取れると思います。同じ学校の卒業生なら、学校の状況もわかっているので、いいアドバイスをしてくれるのではないでしょうか」

自習のコツは、学力の把握と成功体験の積み重ね

実際に、勉強を進めていく上で、必ずやっておくべきことはあるのでしょうか。

「まずは目指すゴールに対してどの程度できているか、自分の立ち位置を知ること。そのために、その教科で明らかにやっておくべき参考書や教材を1冊しっかり終わらせてみてください。全体を解いてみることで、何がわかっていないかが明確になります。その上で、できていないところを自習プランに落とし込んでいけばいいのです」

ゴールに対して、自分がどの位置にいるか把握し、勉強を進めていく。ただし、その方法にもポイントがあるそう。

「まず、得意科目から始めましょう。苦手なものから手をつけると、すぐに心が折れてしまいますから。取り掛かりやすいものから始めて、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。もし受験生なら、苦手であっても英語、なかでも英単語帳から始めていただきたいですね。英語は重要な科目ですし、得意な人でも2000語ぐらいの単語帳には、覚えていないワードがたくさんあるはず。単語力がつけば、どんな英語の参考書も仕上げられるようになるし、暗記力がつくと、他の科目にも応用できます」

今日はここまでできた。そんな小さな成功体験を積み重ねるためには、「毎日の振り返りが大事」と馬場さんは語ります。

「模試で自分の成長をはかろうとすると、3カ月後ぐらいにしか結果が出ません。それだとモチベーションが続かないんですね。それよりも、今日の自分が昨日よりも少しでも成長しているところを見つけましょう。『覚えた英単語が、昨日より5個多い』とか、『数学の正答率が昨日より上がった』とか、そういったことでいいんです。振り返るためは、毎日どのくらい勉強したかを記録しておくことも大事。いきなりゴールにたどり着こうとするのではなく、壁にぶつかりながらも日々成長していく自分を楽しんでほしいなと思います」

自分のゴールに向けて、1歩ずつ成長していく自分を褒めてあげる。そうすることで自己肯定感が上がるし、その結果、勉強が楽しくなって成績も伸びるのだそうです。

「今年は、自習せざるを得ない期間がありました。でも、これは『自習って、やってみると効果的だし、楽しい』と知る、いい機会になったのではないかと思います。受験に限らず、勉強は一生続きます。大人になると、どんなことも自分で決めて学んでいかなければなりません。ですから、学生のうちに自習の面白さと効率の良さを体験していただきたいですね」

自習を習慣化させるには、可視化がポイント

馬場さんの話に出てきた「勉強記録」。そのために使えるスマホアプリが数多くあります。その1つが勉強時間と内容を記録し、同じ目標に向かって頑張る仲間とつながり、学習習慣をつけられるアプリ「Studyplus(スタディプラス)」。このアプリは、運営会社の代表が受験生時代に勉強量を記録することで、継続する習慣がつき、成績が上がった経験から開発されました。

プロダクト責任者の島田豊さんの分析では、「とくに最初の7日間、毎日学習記録を付けられると、大体その後も勉強を継続しているというデータが出ている」とのこと。最初は1、2時間でもいいので、勉強することが重要なのだそうです。

勉強管理アプリ「Studyplus」のプロダクト責任者を務める島田豊さん

「Studyplusが提供しているのは、勉強の継続と習慣化。そのためには“可視化”、つまり自分がどの程度頑張っているかをわかるようにすることが必要です。Studyplusは、勉強時間を記録するとグラフになるので、『これだけ頑張れたんだ』という自己肯定感につながります。逆にサボってしまった場合も明確にわかりますが、『明日からはちゃんと頑張ろう』とやる気を出すきっかけにもなるでしょう」

勉強SNSは、モチベーションアップのために使う

もともとは学習記録用に開発されたStudyplus。その後、利用者が飛躍的に増加したきっかけはSNS機能を設けたことでした。

「SNS機能では、他の学生が今この瞬間に、どのくらい勉強しているかわかります。とくに受験生にとっては、ライバルでもあり、仲間でもある他の受験生の様子を知ることが、『あの子が頑張っているから、私も頑張ろう』というモチベーションになっているようです。たとえるなら、予備校の自習室で、周りの人が勉強しているのを見ているようなもの。参考にもなるし、張り合いにもなります」

自習室との違いは、知り合いでなくても、周りの人の学力レベルや使っている教材、勉強している時間などがわかること。SNS機能は、「同じ目標に向かって頑張る仲間がいる」という実感にもつながります。

「学校の友達にガリ勉と思われたくない、同じ大学を目指す子が周りにいなくてモチベーションが続かない、といった悩みを抱える利用者もいます。でも、Studyplusには頑張っている子がたくさん集まっているし、勉強すること自体を『いいね』と肯定してくれる。だから、やる気が続くんです。自習は、よっぽど自立心がないと続きませんから」

とはいえ、StudyplusもSNS。はまりすぎてしまうと、勉強が手につかなくなるなどの心配はないでしょうか。

「Studyplusは、フォローし合っていても特にコメントするわけでもなく、たまに『いいね』をするぐらいのゆるいつながりのSNSなんです。みんなが頑張っている環境に身を置く、といった意識で使っている人が多いですね。もちろん、ダイレクトメールを送ったり、コミュニティーを作ったりすることもできるのですが、のめり込んでしまうと本末転倒です。それは、TwitterやInstagramなど、他のSNSを使った勉強アカウントでも同じことですね」

もちろん『いいね』をつけてもらえることは励みにもなりますから、SNSの使い方は自分次第です。勉強SNSでうまくモチベーションを上げるポイントは、「フォローする相手」だそう。

「自分よりも学力が高すぎる人や、勉強量が多すぎる人をフォローしていると、かえって落ち込んでしまうこともあるようです。反対に、『全然勉強していない人の様子がタイムラインで流れてくるとやる気をなくす』という声も聞きます。だから、志望校や勉強量が近い人をフォローするのがいいでしょう」

そのため、Studyplusのアプリ内では、志望校や目標の一致率や、勉強頻度が高い子から検索結果に表示されるよう設定されています。

「日本中の学生が『学校に行けない』『外に出られない』といった今までにない経験をしました。しかし今回のことに限らず、親の転勤や大きな災害などで、環境が突然変わってしまうことはいつでもありえます。特に、社会人になると、急な環境の変化はたくさん起きるでしょう。どのような時にも、自分にできることをするのが大切です。自習をそんな時にも役に立つトレーニングだと思って、頑張ってください」

意志の力に頼らない、勉強できる環境づくりを

インターネットであらゆる情報が無料で見ることができる現在。ネットにあるさまざまなツールは、活用の仕方次第で、自習の強い味方になってくれることがよくわかりました。

一方で、馬場さんも島田さんも、「便利な反面、うっかりするとハマってしまい、時間を費やすことになりかねない」と注意を促します。

スマホは最強のツールであり、もっとも人をダメにするものでもあります。だからこそ、「使わない」という意志の力には頼らず、勉強中は物理的に自分から離すなど、あえて使えない環境を作ること。例えば、iPhoneのスクリーンタイム機能でスマホを使える時間を制限したり、一定時間が経たないと取り出せない箱に入れておいたりといった工夫もおすすめだそうです。

自分でやることを決めて勉強を進めていく自習は、難しくもありますが、コツをつかめばきっと大きな成果につながります。ご自身にあった自習のやり方を探してみましょう。

(企画・取材・執筆:神代裕子  編集:鬼頭佳代/ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2020年6月9日)に掲載されたものです。

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