学歴をハンディにしない生き方 “中卒社長”LIG吉原ゴウさんインタビュー

先輩に聞く

2016/07/20

中卒や高校中退、高卒、大学中退など、学歴にコンプレックスを持つ人は少なくない。「就職が難しいのだろうか」「給料が低いのでは」と、不安を感じることもあるだろう。

しかし、学歴に関係なく社会で活躍し、成功をおさめる人がいるのも事実だ。今回は、ウェブ制作会社・株式会社LIGの代表取締役である吉原ゴウ氏に話を伺った。

――吉原さんは“中卒社長”だそうですね。

「高校には進学せずに農業の世界に進みました。勉強は好きなんですが、教室に閉じ込められて、決められたルールを守れと言われ続け、みんなと同じ時間を過ごすというスタイルが僕には向いてないと思ったんです。そもそも、どうして高校に行かないといけないのかが分からなくて。中学までは義務教育だから行くしかないけど、高校は『行かない』という選択もあるわけですよね。人生の中で初めて自分で進路を選べるのに、みんなどうして同じように進学するのか疑問でした」

――進学は一度も考えなかったのですか?

「実は、行こうかなと思った時期もあったんです。天文学に興味があって、勉強したいなと思っていて。担任の教師に『高校で天文学を学べるところはありますか?』と聞いたら、『大学まで行かないとない』と言われたんです。大学に行くためには、高校に3年間通わないといけなくて、天文学を学びたいのに、それまで3年間辛抱しないといけないというのは無理だと思って。じゃあ進学という進路はないなと」

――通信制高校など、働きながら学ぶ、という選択もしなかったんですね。「高校には行かない」という中学生のゴウさんの決定について、ご家族の反応はどうでしたか?

「親父は自由人なので反対されなかったのですが、母親には『就職が難しくなるから高校だけは行け』と言われましたね。でも、自分としては不安は感じませんでした。その頃は、将来は歌を歌って生きていけるんじゃないかなと思ってたので(笑)」

(出典:高知県・柏島の海がメチャクチャ綺麗だというので行ってきました。/LIG
歌を歌って生きてはいないが、仕事で高知県の海へ行ったり、ドバイの砂漠に行ったりして生きている吉原氏
(出典:冬を先取り!灼熱砂漠の中東ドバイでスキーをやってきました。/LIG

――現在、吉原さんといえばウェブの世界の有名人で活躍されている印象が強いですが、これまで“中卒”という学歴でハンディを感じたことはありますか?

「ハンディを感じたことはないですね。というか、“中卒”という経歴を逆にうまく使っちゃえばいいんですよ。例えば、僕が慶応大学卒の外資コンサル出身の社長とかだと、こういうインタビューを申し込んでいただくこともなかったかもしれませんよね。『あいつ、中卒なのにすごい』って言われればいいんです。自分の過去や学歴にコンプレックスがあるのであれば、それをうまく利用する。“中卒”ってキャッチーですよ(笑)」

――“自分のコンプレックスを利用する”。それって、自分の過去を肯定する作業になりそうですね。

「過去を肯定できるかどうかは、今の自分を肯定できるかどうかに掛かっています。今の自分が輝いているなら、『あのときあの選択をした自分は正解だったんだ』と思えますよね。中卒が良いことなのか悪いことなのかは、中学を卒業した時点では、誰も判断できないんですよ。大事なのは、その後。今が輝いていないと過去を肯定できない。そして、それは中卒だろうが東大卒だろうが、一緒なんです」

――学歴って、あってもなくても一緒なんでしょうか?

「うーん、何をやりたいかによりますけど、一番勝率が高いのはやっぱり、いい高校、いい大学に行くことだと思いますよ。学生時代にみんなと同じことをやらされるのは、勝率をあげるためにはそのプロセスが必要だからなんです。そこから外れるには勇気がいるし、どんな人生になっても自分の責任。周りから何を言われても泣き言は言うなよって。僕は、高校に行かないと決めた時、茨の道だとは分かってたけど、自分で今後の人生なんとかするって決めたんです」

――“勝率”を上げるために、吉原さんが意識してきたことはありますか?

「やっぱり勉強、学びですね。進学しようが、高校に行かずに社会に出ようが、勉強という行為はずっと続きます。学校に行かなかったら勉強しなくていいなんて、大間違い。むしろ、社会に出たからこそどんどん勉強しないと、何にも勝てなくなりますよ。だから、物事に興味を持って学んだほうがいい。もし、学生時代に何に対しても興味を持てない、好きなこと、やりたいことがわからないという人は割り切って、いい高校、いい大学、有名企業への就職、という王道にチャレンジしてみたらどうでしょう? それだってすごく大変なことですよね。そして、そこでいろんな経験をすることで見えてくることもあると思います」

――物事に興味を持って学び、最終的には好きなことを仕事にできたらいいですよね。

「僕の場合、好きなことを仕事にしたいとはずっと思っていたんです。ただ、興味があることが多すぎて、どれを仕事にしたらいいのかずっと試していた感じですね。そして、最終的に『会社経営』というところにたどり着きました。会社経営って、しがらみもあって、やりたいことが全部できるわけじゃないけど、それでも続けているのは、毎日が楽しいから。飽き性の僕が会社経営は続けていられてる。それはたぶん、“飽き性だからこそ”続けていられるのだと思います。いくつものプロジェクトを走らせて、毎日いろいろなことが起きて、いろんな人に会える仕事だから。『何をするか』で職業を選ぶのではなく、『自分の性分にはどんな仕事が向いているか』を考えてみてほしい。そして、それを考えるには結局、社会の仕組みとかいろんなことを学ばないとできないんです。結局、勉強ですよ」

――最後に、過去の学歴や将来の進路に悩む人にメッセージをお願いします。

「周りの評価なんて、今の行動次第で未来にいくらでも変わるんです。真摯に努力して、周りを納得させる結果を出しましょう。そしたら、何年後かの未来に、『あのとき頑張ってよかった』って思えますよ」

(黒宮丈治+ノオト)

取材協力

吉原ゴウ

株式会社LIGの代表取締役社長。中学校を卒業後、農家、カヤックインストラクター、雀荘、アダルトショップ店員を経て、ウェブデザイナーに。その後独立し、2007年に株式会社アストロデオを設立。2012年に株式会社LIGと合併し現職。LIGブログの仕掛け人であり、総合プロデューサー。

株式会社LIG:http://liginc.co.jp/

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年7月20日)に掲載されたものです。

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