お笑い芸人の考え方から学ぶ! 人や社会との関係構築ヒント本5選

本などから学ぶ

2018/11/08

多くの人に愛される漫才。大笑いしたら気持ちがすっきりするという人も多いはず。

お笑い芸人としてテレビやネットで活躍する人たちは、一見コミュニケーションの達人のよう。しかし、そんな彼・彼女らも、最初から人を笑わすことに長けていた人ばかりではありません。

お笑いという独特の世界で培われた視点や経験。そこには人や社会との関わり方のヒントや気づきもたくさんありました。今回は、そんな彼らの考え方に触れる5冊を紹介します。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』(若林正恭/KADOKAWA)

本書は、雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載されたオードリー・若林正恭さんのエッセイをまとめた一冊。人見知りで自意識過剰な著者が、社会に出て感じた自分と社会とのギャップや苦労を面白おかしく語っています。

あまりにも自意識過剰のため、「スタバに入って『グランデ』なんて恥ずかしくて絶対言えない」「『パスタ』と言うのも恥ずかしい」など、笑えて共感できるエピソードが満載です。一方で、「ぼくらのような人間はネガティブで考え過ぎな性格のまま楽しく生きられるようにならなきゃいけない」「真っ当な社会人にならなきゃなんて焦らなくてもいい」など、心に刺さる一文がいくつも登場します。

遠回りをしながらも内面を見つめ変化に向き合い、自分らしい道を模索する著者の姿に勇気づけられる人も多いのでは。社会との折り合いの付け方や、自分らしい生き方に悩む人におすすめの作品です。

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『天才はあきらめた』(山里亮太/朝日文庫)

山ちゃんの呼び名で親しまれる、南海キャンディーズ・山里亮太さんの自叙伝。芸人を目指すきっかけから、最初に結成したコンビ「足軽エンペラー」の解散、ソロ活動、現相方・しずちゃんとの出会い、そして現在の活動にいたった経緯が書かれています。

前相方の能力不足を責める。しずちゃんの映画オファーを断ろうとする。「クズ」だけど、笑えるエピソードが満載です。そんな中でも、「褒める自分を作る」「劣等感をガソリンに換える」など、マイナスの感情をプラスに変換させる著者ならではの思考は参考にしたいポイント。

また本書を読むと、著者は努力の人であることがわかります。「努力はそのご褒美にいろいろな景色を見せてくれる」というメッセージが込められた作品です。

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『大家さんと僕』(矢部太郎/新潮社)

カラテカ・矢部太郎さんと、80代の上品な大家のおばあさんとの日常をつづったコミックエッセイ。大家さんの住む一軒家の2階に引っ越してきた著者は、家賃の手渡しをきっかけに、大家さんの部屋で毎月お茶をするようになります。以来、2人の関係は、新宿の伊勢丹でご飯を食べたり、一緒に九州旅行に行ったりと、友達のような家族のようなものへと変化していきます。

ゆっくりと交流を深めていく2人の姿が愛らしいタッチで描かれ、ほのぼのとさせられます。ただ、それだけではなく、大家さんの語る戦争中の疎開経験や昔はホタルがいた川の光景の描写も見事で、時代や価値観の変化を考えさせられる内容にもなっています。

「おかえりなさい」「ただいま」、「おめでとう」「ありがとう」といった何気ない会話から育まれるあたたかいつながりがある。忙しく過ごす日々の中、忘れかけていた感情を思い出させてくれる一冊。心癒されたいときにぜひ手にしてみては。

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『14歳』(千原ジュニア/幻冬舎)

芸人や俳優、司会者、作家など多彩な才能を発揮する、千原兄弟・千原ジュニアさん。本作は著者の自伝的小説で、自我と葛藤し続けた14歳の主人公の深い心の闇を赤裸々に描いています。

太陽を紫色で描いたり、人の家に入れなかったり、いろんなことをみんなと同じようにできずにいる主人公。やがて受験を勝ち抜き進学した中学校に行くことをやめ、パジャマで部屋に引きこもるようになります。

そして15歳になる頃、兄に強引に連れられ、お笑い芸人の養成所へ行くことに。そこで初めて「誰かを笑顔にしてみたい」とワクワクするのです。

独特の世界観で、読んでいる間も胸にヒリヒリとした痛みをもたらす小説ですが、主人公は人と違う個性を武器に今もなお活躍し続ける著者の姿に重なります。

葛藤を周りに理解されない、人と違うことしかできない、人と見えている光景が違う。そんなふうに感じるとき。人と同じやり方でなくても大丈夫、何をしたいかうまく答えられなくても大丈夫、と励ましてくれる一冊です。

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『がさつ力』(千原せいじ/小学館)

豪快な芸風が魅力の千原兄弟・千原せいじさん。アフリカをはじめ多くの国の現地の人とすぐに打ち解ける。そんな姿をテレビで見たことがある人もいるのではないでしょうか。本書では、著者のがさつな行動原理やコミュニケーション方法を紹介しています。

「がさつ」と言葉だけ聞くと大ざっぱなイメージがあります。しかし、著者の考える「がさつ」は1つのコミュニケーションスタイル。

著者は、知らないことは恥じゃない。世の中のたいていの人に嫌われても自分の人生に影響はないと話します。ただ一方で、信頼する仲間とは納得いくまで話し合うし、海外ロケの前には現地の文化や宗教などを調べておく。

「がさつ」の中には、合理性と相手に対する敬意が存在します。実践できる思考方法が多いので、人との関わり方に悩んでいる人におすすめです。

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好きな芸人の頭の中を、著書を通してのぞいてみよう

人見知りだったり、引きこもりだったり。今、自分の居場所で輝いて見える人も、その裏側ではいろいろな悩みや葛藤を抱え、自分なりに工夫をしながら、過ごしています。

さまざまな観点や感性を、文章を通して感じ取ってみましょう。思いがけない一面や参考にしたい考え方などが見つかるかもしれません。

(企画・選書・執筆:水本このむ 編集:鬼頭佳代/ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年11月8日)に掲載されたものです。

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