学校に行きたくないときこそ読みたい、手のひらから世界を広げる小説5選

本などから学ぶ

2018/03/02

クラスや先生、友達に理不尽を感じたり、なんとなく馴染めなかったり。学校に行きたくないな、と思うときは、誰にでもあることでしょう。

そんな「学校に行きたくないとき」におすすめの小説を選んでみました。

『きみの友だち』(重松清/新潮社)

あなたにとって「友だち」とはどんな存在ですか? 「きみ」という名の主人公は、足の不自由な小学5年生の恵美ちゃんです。恵美ちゃんはとある事件がきっかけで、クラスのだれとも付き合わなくなります。しかし、一人の少女・由香ちゃんが気になり、やがて二人はゆっくりと友情を育んでいきます。

その後の章からは、「きみ」は恵美ちゃんの弟のブンちゃんだったり、恵美ちゃんのクラスメイトの堀田ちゃんだったりと主人公が変わり、時間を行き来しながらそれぞれの物語が描かれています。

優等生やひねくれもの。弱虫に八方美人。いじめが原因で転校してきた子。登場するのは学校に1人くらいはいそうな人物ばかりで、思わず自分を重ね合わせてしまうこともあるのでは。この本は「友だち」の本当の意味を探す道しるべとなってくれることでしょう。

小学生から高校生まで幅広い世代に愛され続ける小説で、いつ読んでも新しい気づきや感動を得ることができます。繰り返し読めるよう手元に置いておきたい一冊です。

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『夜のピクニック』(恩田陸/新潮社)

朝8時から翌朝8時まで全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通す、北高の伝統行事「歩行祭」。二人の男女生徒、西脇融(とおる)と甲田貴子を中心に、”高校生活最後のイベント”に臨む人間模様を描いた青春小説です。

学校生活の思い出や将来の夢、「誰かを好きという気持ち」を語らいながら、ただひたすら歩く――。物語は大きな事件が起こることもなく静かに進んでいくのですが、主人公たちは自らを見つめ友人たちと気持ちを分かち合う大切な一時を過ごします。

もうすぐ歩き終えるというシーンで貴子が心の中で放つ台詞、「何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ」という言葉が印象に残ります。

太陽が沈む直後の水平線の輝き、夜の空気、身体の疲労とは裏腹に研ぎ澄まされていく心、夜明けが朝に変わる様子など、登場人物の心情だけでなく風景も、すぐ目の前にあるように感じられます。

「なぜ学校行事に参加しなければならないの?」と疑問に思う高校生にこそ読んでもらいたい小説です。

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『カラフル』(森絵都/文藝春秋)

死んだはずの”ぼく”。目の前に現れた天使のプラプラに抽選に当たったと言われた”ぼく”は、自らの命を絶って今にも臨終を迎えようとする”小林真”の体に入り込み、生前に”ぼく”が犯したあやまちを償うやり直しのチャンスを与えられます。

真の体を借りた”ぼく”は、勤める会社の不祥事で棚ぼた的な出世に浮かれる父、隠れて不倫をしていた母、嫌味ばかり言う意地悪な兄という家族関係や周りから浮いていた学校生活をやり直し、少しずつ新しい人間関係を再構築していきます。

カラフルという言葉が、きれいな色だけでなくドロドロした色も指し示していることがわかります。「この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷ってる」。真の言葉に、思わずうなずく読者も多いのでは。「人生はせいぜい数十年のホームステイ、だから気軽にいこう」という最後のプラプラの言葉に心が軽くなることでしょう。

「生きること」についていろいろ考え始める中学生にこそおすすめ。

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『さよなら、田中さん』(鈴木るりか/小学館)

主人公は小学6年生の女の子、花ちゃん。彼女は生まれた時からお父さんを知りません。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと毎日大笑い、大食らいで過ごしています。

ひとり親であることや両親の離婚、中学受験とそこにまつわる現代の複雑な親子関係などが、子どもの目線から描かれている小説です。

花ちゃんのお母さんが、花ちゃんの同級生の少年に投げかける「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ」という言葉が印象に残ります。生きることの大切さとシンプルさにはっとさせられることでしょう。

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『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ/集英社)

5人の登場人物の名前を各章のタイトルにしたオムニバス形式の小説。田舎の県立高校バレー部のキャプテン・桐島が、突然部活をやめた――。ただそれだけの事実が、周囲の同級生の心にまるでスポイトでしずく一滴を落としたかのように小さな波紋を起こします。部活も校内での立場もまったく違う5人それぞれに起こった変化とは……。

「このままではダメだ」とわかっていてもなんとなく過ごす日々、クラス内での上下を気にしたり、同級生をうらやんだり、自分のことを諦めたり。大人にとって些細なことも、17歳の彼らにとっては真剣な問題で、それらは高校を卒業するまでつきまとうものなのです。

『桐島、部活やめるってよ』というタイトルにもかかわらず、桐島が一切登場しないことも、本作のポイント。17歳の気持ちを描写した、当時19歳の著者のセンスにも驚かされます。

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小説で経験値を高め視野を広げよう

今回は、学校が舞台の小説を紹介しました。

小説は自分が歩んでいる道とはまた違う人生を経験させてくれるものです。物語の中に、自分と同じ気持ちを見つけるかもしれませんね。手元から世界の広がりを感じてみましょう。

(選書・執筆:水本このむ 編集:鬼頭佳代/ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年3月2日)に掲載されたものです。

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